闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの   作:大豆万歳

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第2巻、始まります。
そういえば、ダークソウルのリマスター版が発売されるそうですね。自分はSteam版を既に持っているので買う予定は今のところないですが……どうしようかな


第7話

「フンッ!」

 

ザンッ!

 

『ゲブォア!?』

 

棍棒を振りかぶるオーク、その胴体を刃が大きく反り曲がった刀『弓張り刀』で一刀両断にする。

怪物祭(モンスターフィリア)でのモンスター脱走事件から数日経った今日。俺ことグレイ・モナークはダンジョンに単独(ソロ)で潜っていた。

あの事件が収まった翌朝、俺とベルが別々にダンジョンに潜る許可が主神ヘスティアからおりた。なんでも、俺が入団するまではベルが無事に帰って来てくれるかヘスティア様は不安だったらしい。それを聞いた本人は自分の腕が信用されていなかったのか、とショックを受けていた。まぁ、「初めて【ファミリア】に入ってくれた子に万が一の事があったらどうしよう!?」という心配性によるものだというのはベルも分かっているだろう。だが、ベルがシルバーバックを倒すのを見て余程のアクシデントがない限り大丈夫だろうと安心したそうだ。

 

「ふぅ……」

 

俺は『弓張り刀』を振って刀身に付着したオークの体液を落とし、周囲を見渡す。

 

「モンスターは……もういないな。魔石を回収したら地上に戻るか」

 

俺は灰と化したモンスターの死体から魔石を回収すると、『底の無い木箱』に入れてソウルに変換して体内に収納する。そして回れ右をして入り口に向かって歩き始める。途中、後から来るかもしれない冒険者のことを考えて10階層内の樹木を全てバッサリと伐採しておいた。

 

 

 

 

「10階層、ですか……」

「そうだが……それがどうかしたかい?」

 

俺の報告を聞いてなんとも言えない表情をとるエイナさん。

地上に戻ってきた俺はダンジョン内で回収した魔石の換金と到達階層の報告を担当のアドバイザーであるエイナ・チュールにするためギルドに来ていた。

 

「いえ、グレイさんがかなりの実力の持ち主であることは、先日の一件の目撃者ですから知っているんですよ?ですから、10階層に到達できたのは余り驚かないんです。むしろ、もっと下の層まで行くものかと。しかし……先ほどベル君が7階層まで降りたことに対して危機感が足りないと少し指導をした手前、どんな反応を示せば良いやら……」

 

ああ、エイナさんのスパルタ指導を受けたのか。道理ですれ違った時に妙にぐったりしていたわけだ。今日の晩飯は俺が奢ってやろう。腹一杯飯を食って、ぐっすり眠れば少しは気持ちが晴れるだろう。

 

「それじゃあ、そうだな……無茶をしないように釘を刺す程度でお願いしてもいいかな?」

「……わかりました。では──」

 

エイナさんは「こほん」と咳払いをする。と、こちらに鋭い目線を送ってくる。

 

「グレイさんの実力は知っています……ですが、Lv.1の冒険者が潜れるのは12階層までですので、それ以上は行かないでください。いいですね?」

「ああ」

「そして、『冒険者は冒険してはいけない』これを忘れないでください」

「わかった。では、また明日」

「はい。お疲れ様でした」

「さぁ、ベル!今日は飲んで食ってたっぷり寝よう!」

「……はい。グレイさん」

 

俺は入り口で待たせていたベルの肩を叩くと、『豊穣の女主人』に向かって足を進めた。

 

 

 

 

「いやはや、まさかベルとエイナさんがデートに出かけるとは思わなんだ」

「ち、違いますよ!あ、あれは僕の装備を新調するための買い物であって。デ、デートじゃありません!」

「いいかいベル。世間一般では年頃の男女が出かけるのをデートと言うのだよ」

「やめてくださいよぉ。エイナさんと出かけている間、すれ違った男性の冒険者さん達に凄く睨まれて怖かったんですからぁ……」

 

翌日の夕暮れ。ギルドからホームに向かう途中でベルと合流した俺は、今日1日あった出来事を話しながら歩いていた。

 

「大体、そう言うグレイさんはどうなんですか?今まで女性とお付き合いとかあったんですか」

「俺か?ふむ……」

 

ベルにそう尋ねられ、俺は今まで交流のあった女性に関する記憶を手繰り寄せる。

 

「……うぅっ」

「ど、どうしたんですか!?急に泣き出して?」

 

何故だろう、目から汗が止まらない。

 

「すまない。今まで交流の会った女性で記憶に残っているのが自称人見知りの鉄拳聖女さまとか、騎士とは名ばかりの狂戦士とか、たった1人で100人の騎士を屠る剣士といった武闘派ばかりだったものだから、つい。いや、他の女性との出会いはあったんだが、如何せん彼女たちの印象が強すぎてね……」

「だ、大丈夫ですよ。これから!これからそれを払拭する出会いがきっとありますって!」

「……ああ。そう、だな……」

 

などと男2人で他愛のない話をしながら路地裏を歩いていると、奥のほうから俺達以外の何かが駆けてくる音が響いている。この音は……2人か。しかも、大きさの違いから子供と大人であることがわかる。

 

「どこからだ……?」

「こっち……ですかね?」

 

ベルが普段曲がる道を覗き込もうとする。

 

「あうっ!」

「む?」

「えっ?」

 

出し抜けに、1つの影が目の前を勢い良く転がった。どうやら、曲がり角から身を乗り出したベルの足に引っかかってしまったようだ。

か細い悲鳴に慌てながら近寄ってみると……

 

「……パルゥム?」

 

神様よりも更に低い身長、触れれば折れてしまいそうな細い手足。1つ1つのパーツがとても小さいその外見は、食べたり踊ったり、騒いだりするのが大好きな亜人(デミ・ヒューマン)だ。

 

「大丈夫かい?」

「ぅ……っ」

 

もぞりと動いてその小さな体が起き上る。

幼い女の子だ。栗色のまとまりのない髪がうなじを隠し、何もかも小振りな顔立ちの中で、大きくつぶらな瞳が強い印象を与えてきた。

 

「追いついたぞ、この糞パルゥムが!」

 

ベルが手を貸そうとしたその時、道の奥から1人のヒューマンの男が現れる。

冒険者だろうか、ギラギラと輝く瞳はさながら悪鬼のような表情でパルゥムの少女を睨んでいる。

相手の表情や言動から、俺とベルは少女を隠すように立ち塞がる。

 

「……おい。邪魔なんだよ、そこをどきやがれ」

 

男の目には今の今まで少女しか映っていなかったのか、ここで初めて俺達のことに気づいたようだ。

対人戦に慣れていないのか、あるいは男の迫力に押されているのか、ベルの頬がひくついてる。逆に俺はいつも通り冷静だ。対人戦は今回が初めてではないし、この程度の迫力なぞ屁でもない。

 

「すまないが、こちらのお嬢さんに今から何をするつもりなのかな?」

「五月蝿え!そこのガキ共々さっさと消え失せろ!後ろのそいつごと叩っ斬るぞ!」

 

……困ったな。

事情は知らないが、こいつは間違いなく後ろの少女に酷いことをするだろう。しかも頭に血が上っているのか、説得も難しそうだ。

 

「テメェら……マジで殺されてえのか……!?」。

「まあまあ、一旦落ち着いたほうが……」

「黙れっ、何なんだよテメェらは!?そのチビの仲間か!?」

「いや、初対面だが?」

「そ、そうですっ」

「じゃあ何でそいつを庇う?」

「「女の子(紳士)だから」」

「巫山戯たことぬかしてんじゃねぇ!」

 

男は後ろに手をやると抜剣し、構える。

……仕方ない、死なない程度に痛めつけて黙らせよう。そう思った俺は『メイス』と『ガーディアンシールド』を装備して構える。反射的にベルもナイフを構えるが、緊張しているのか汗が吹き出ている。一歩間合いを詰めてきた男が次の瞬間、飛びかかってくる。

 

「止めなさい」

 

が、男の剣が振り下ろされることはなかった。

この場に割って入ってきた鋭い声、芯のこもったそれに振り向いた俺達の目に映ったのは、大きな紙袋を構えたエルフの少女だった。

エイナさんと似た整っている目鼻立ち。ハーフの彼女と違うところは、突き出ているその耳がより鋭角的な線を描いているという点。

確か、『豊穣の女主人』の店員のリューさん……だったかな?

 

「次から次へと……!?今度は何だァ!?」

「貴方が危害を加えようとしているその人達……彼らは、『豊穣の女主人(私達)』のお得意様です。手を出すのは許しません」

「どいつもこいつも、訳の分からねえことをっ……!ブッ殺──」

「黙れ」

 

──しんっ、と空気が凍る。

大声で散らしていた男は言葉を飲み込み、腰を抜かしたのか地面にへたり込む。股間のあたりに染みができ、徐々に大きくなっている。

 

「……っ、……!?」

()れるものなら()ってみろ、小僧。但し……相応の(殺される)覚悟がお前にあるならな」

 

俺は装備を『メイス』から『グレートメイス』に変え、最後通告を告げる。

 

「ひ、ひいいいいいいぃっ!?」

 

男は顔を青く染め、おぼつかない足取りで何度も転びながら退散していった。

 

「……やれやれ。大丈夫かい?ベル」

「だ、大丈夫じゃない……です」

 

ベルのほうを振り向くと、彼も同じように腰を抜かしていた。リューさんが素早く駆け寄り、手を差し出す。

 

「……グレイさん。貴方は本当にLv.1なのですか?」

「本当だ、何ならあとで背中の【ステイタス】を見せようか?それとも、俺がレベルを偽っているとでも?」

「いえ、先程の気はLv.1の冒険者が出せるようなものではなかったので……」

 

俺達の近くに来たリューさんが怪訝そうな表情で俺にそう尋ねる。

 

「まぁ、あれだ。女子供に手を挙げるのは許せない性分でね。つい、あんな気を発してしまっただけだ」

「そうですか……それで、その女子供というのは私とクラネルさんのことですか?」

「いや?もう1人いるんだが……ベル、さっきの女の子は?」

「あっ!そうでした。ねえキミ、大丈……あれ?いない」

「なに?」

 

周囲を見渡すが、先程までいたパルゥムの女の子は姿を消していた。

 

「誰かいたのですか?」

「ああ。その筈なんだが……」

 

もしかして、さっきので逃げてしまったのかな?

 

「では、私はこれで。今夜も、お待ちしてますよ」

「ああ」

「それじゃあ」

 

俺達とリューさんはお互いにお辞儀を交わし合い、その場で別れた。

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