闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの   作:大豆万歳

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スキル説明と、(1000年ぶりの)ダンジョン探索です。

お気に入り100突破、ありがとうございます!


第3話

「【呪いの証(ダークリング)】、【ソウルの秘術】、【残り火】……これが俺のスキルか」

「グレイくん。いきなり魔法が3つも発現しているのも異常だけど、なんだい?この奇妙なスキルは」

「そうですね。まず【ソウルの秘術】というのは……」

 

俺は右手に『熔鉄鎚』を出現させる。すると、2人の目が見開かれた。

 

「なっ、なんですか!?その巨大な鉄塊は!?」

「いや、そもそもそれはどこにあったんだい!?いきなり手元に現れ──今度は消えた!?」

「えええっ!?」

 

それを霧散させると、2人は俺の周囲に目線を配る。

 

「い、いったいどこに……」

「ありますよ。ホラ、ここに」

「ふぁっ!?」

 

再び手元に出現させる。それを視認した2人は、鎚に手で触れる。

 

「これが【ソウルの秘術】の効果です。見ての通り、物質をソウルに変換させて収納できるんです」

「ということはアレかい?キミの体内には、その『ソウル』とやらに変換された色々な物が入っているってことかい?」

「ええ」

「凄い……」

「次に【呪いの証(ダークリング)】。このスキルの効果は、印を持つ者が呪われた不死にする。さて、この呪われた(・・・・)というのが重要なんですけど……ベルくん」

「は、はいっ!」

 

俺に名前を呼ばれ、ベルくんは跳ねる。

 

「これが、【呪いの証(ダークリング)】だ」

 

俺はそう言って、胸の辺り──心臓のある部分を撫でる。すると、そこに黒い渦のようなものが現れる。

 

「さて、キミにもこの印が現れたと仮定しよう。まず、キミの肉体の成長はその段階で止まる」

「……え?」

「更に、この印が現れた者は復活の度に代償を支払わなければならない。最初に記憶を失う。その次に感情、最後に理性を失う。そして何もかもを失った者は亡者と呼ばれる化物になり……人を襲う」

「……そんな……そんなことが……」

「残念だが、これは事実だ。俺はそうなった人間を何人も見てきたし、その度にそいつを殺してきた。そして、この呪いを解く方法を求めて俺はオラリオ(ここ)に来た」

「……そう……だったんだ……」

「そして最後の【残り火】なんですが……これは俺にもよくわかりません」

「「えぇ?」」

 

先程の重い空気から一転して、俺の一言に1人と1柱は揃って首を傾げる。

 

「いえ、この篝火というのは呪われた不死にとって唯一の拠り所なんです。それの作成と篝火にあたると回復するという文章通りの効果なんですけどね?この『王の力』というのが具体的にどのような力なのか書かれていないから自分でもわからないんですよ」

「王か……何処かの国の王族の血筋ってことは?」

「いえ、自分は特に特別な血筋というのは一切ないはずです」

「そうか……まあ、明日ダンジョンに潜って使って──いや、それを上手く扱えなくて自爆でもしたら本末転倒だね。それに関しては今は置いておこうか」

「そうですね」

 

よし!とヘスティアさまが手を叩く。

 

「そろそろ夕飯にしようか」

「そうですね。今日は新しい団員──グレイさんが加入したことですし、ささやかなパーティーでもしましょうか」

「それじゃあ、俺も何か手伝おうか?ベルくん」

「じゃあ、お願いします。あと、僕のことは呼び捨てでいいですよ」

 

 

 

 

男2人がキッチンに入った頃。

 

「残り"火"……"王"の力……」

 

先程見た【ステイタス】の用紙を手に取り、小さな声で呟く。そして、青年の後ろ姿を見る。

 

「……まさか、ね。うん、気のせいだよ……きっと……」

 

自分のよく知るとある人物(・・・・・)と青年の後ろ姿が重なるが、そんなことはあり得ない、或いは気のせいだと直ぐに否定して首を横に振る。

 

 

 

 

【ファミリア】加入から一夜明けて。

 

「はっ!」

『ギャウッ!?』

「フンッ!」

『グェッ!?』

 

俺とベルはダンジョン1階層でコボルトの群れと戦っていた。

ギルドで俺の冒険者登録の手続きを済ませてダンジョンに潜り、順調にモンスターを狩っていた俺たちはコボルトの群れに遭遇した。

最初は8匹いた群れを囲まれる前に俺とベルで分担して半分まで減らした。のだが……。

 

「畜生!増援まで来るなんて、今日は厄日か!?僕なにか悪いことしましたか!?神様ぁ!?」

 

ベルの言う通り、半分まで減っていたコボルトの群れは何処からともなく現れた個体が加わって10匹ほどまで増えて今に至る。

背中合わせの状態でコボルトの群れに囲まれ、ベルが愚痴をこぼす。おそらく涙目になっているだろう。

そもそもコボルトというのは大抵1、2匹でダンジョン内を徘徊しているそうだ。それが群れになっているのだからベルの気持ちもわからないこともない。

俺は『バスタードソード』を霧散させて『ブルーフレイム』を取り出し、逆の手に『呪術の火』を灯す。

 

「ベル!伏せろ!」

「え?ちょ、グレイさ──」

「『ソウルの大剣』!」

「わぁぁぁ!?」

 

フォン!

 

『ソウルの大剣』で前方のコボルトの群れを薙ぎ払い──

 

「『舞踏の火』!」

 

ボオゥッ!

 

振り向きざまに『舞踏の火』で背後のコボルトたちを焼き払う。

 

「ふー」

「ふー、じゃないですよ!もー……」

 

やれやれ、といった表情でベルはコボルトの死体に足を運ぶ。灰になったコボルトに手を突っ込み、紫紺の欠片を取り出す。

これは『魔石』。これを基盤にモンスターたちは活動し、これを失うと灰になって消滅する。

俺もコボルトの魔石を取り出していく。

 

「お……?ベル、ドロップアイテムがあったぞ」

 

俺は灰の中に埋もれた小さな爪をかざす。

 

「グレイさんもですか?僕のところもあったんですよ」

 

ほら、とベルもこちらにかざしてきた。

 

「さっきは厄日とか言っていたけど、案外ラッキーデイなんじゃないか?」

「んー……そうですね」

 

そう会話しながら魔石を回収する俺とベルの中指には『貪欲な金の蛇の指輪』がキラリと光っている。こいつの恩恵で先程からドロップアイテムが集まるのだ。

俺は魔石の欠片とドロップアイテムを木箱に入れ、ソウルに変換して体内に収納する。ベルのほうも腰巾着とバックパックに魔石の欠片とアイテムを入れていく。

 

「さて、この調子で慎重にジャンジャン稼ぎましょう!」

「おう!」

 

 

 

 

「……おかしいね」

「ですよね!?やっぱりおかしいですよね!?」

 

夕刻。

本日のダンジョン探索を終え、ホームに帰ってきた俺たちは自分の目を疑った。

神様から受け取った更新【ステイタス】の用紙、その中に記されているベルの熟練度の成長幅が半端ではなかったのだ。

ちなみに俺は

 

グレイ・モナーク

Lv.1

力:I0→I13

耐久:I0→I11

器用:I0→I13

敏捷:I0→I12

魔力:I0→I18

《魔法》

【魔術】【奇跡】【呪術】

《スキル》

呪いの証(ダークリング)

【ソウルの秘術】

【残り火】

 

対するベルはというと──

 

ベル・クラネル

Lv.1

力:I82→H120

耐久:I13→I42

器用:I96→H139

敏捷:H172→G225

魔力:I0

《魔法》

【】

《スキル》

【】

 

「か、神様、これ、書き写すの間違ったりしてませんか……?」

「……君たちはボクが簡単な読み書きもできないなんて、そう思っているのかい?」

「いえいえ、そういうことではなくてですね……ただ……」

 

ちょっとありえない数字が並んではいないだろうか。

 

「か、神様っ、でもやっぱりおかしいですよ!?特にここ、ほら、『耐久』の項目!僕、今日は敵の攻撃を1回しかくらっていないのに!」

 

ベルがくらったダメージは、ゴブリンの不意打ちによる一撃のみだ。後は危なげなく往なし、時には俺が盾になって防いだ。だというのにこの上昇量は……。

 

「ですからやっぱり何かが……あの……」

「か、神様……?」

「……」

 

おかしい。

ベルの異常な熟練度上昇もさることながら、神様の機嫌がすごく悪い。そしてちょっと怖い。なんというか、真綿で首を絞められているような……。

幼い顔つきがむすっとしていて、半眼でベルのことを睨んでいる。いかにも不機嫌です(・・・・・)という感じの表情だ。

な、何で?ベルが何かやらかしたのか?それとも俺がか?

神様はそっぽを向くと、無言で部屋の奥にあるクローゼットへ向かった。うねうね動くツインテールがこちらを威嚇している。

扉を開け、椅子の上に乗って外套(コート)(神様用に採寸された特注サイズ)を取り出した。それを羽織り、立ち尽くす俺たちの目の前を通り過ぎていく。

 

「……ボクはバイトの打ち上げがあるから、それに行ってくるよ。キミたちは野郎2人(・・・・)で豪華な食事でもして、親睦を深めてくればいいさっ」

 

バタンッ!と音を立ててドアが閉められた。

……何だったんだ、一体。

ベルに落ち度はない……はず。それは俺も同じ。

 

「……とりあえず、行く前に少し落ち着こうか」

「そう……ですね」

 

 

 

 

日が既に西の空へ沈み、蒼い宵闇とうっすら輝く満月が現れた頃。

 

「ええと……今朝シルさんとお会いしたのは……」

 

カフェテラスの店頭に来たところで足を止める俺とベル。

他の商店と同じ石造り。2階建てでやけに奥行きのある建物は、周りにある酒場の中でも1番大きいかもしれない。

『豊穣の女主人』と書かれた看板を仰ぎながら、周囲を見渡す。

 

「ここで合ってるんじゃないか?」

「そうみたいですね。けど……」

「けど?」

「この雰囲気は……ちょっと僕には難易度が高いな……」

「もしかして、こういう場所に免疫がないのかい?」

「……」

 

無言で頷き、顔を赤らめるベル。

 

「こういうのは慣れだ。慣れればどうということはないさ。それに……」

 

俺はベルの肩を叩いて隣を見るように促す。

 

「もう来ているよ?」

 

覚悟を決めたのか、深呼吸をして笑みを無理やり浮かべる。

 

「……やってきました。シルさん」

「はい、いらっしゃいませ」

 

ベルの隣に何時の間にか現れた少女──シル・フローヴァは今朝と同じ服装で俺たちを出迎えた。

開きっぱなしになっている入り口をくぐり、澄んだ声を張り上げる。

 

「お客様2名はいりまーす!」

 

びくびくしながら体を縮こませるベル。どこまで小心者なんだキミは。もっと胸をはって堂々としたまえよ。

 

「では、こちらにどうぞ」

「は、はい……」

「ありがとうございます」

 

案内されたのはカウンター席だった。すぐ後ろには壁があって、酒場の隅にあたる。カウンターの内側にいる女将さんと向き合う感じだ。

入店初めての俺たちに気をつかってくれたのだろうか、ありがたい。奥に俺が座り、その隣にベルが座る。

 

「アンタたちがシルのお客さんかい?ははっ、2人共なかなかいい男じゃないか!」

「いえいえ、女将さんも美人ですよ」

「あらあら、嬉しいことを言ってくれるじゃないの!」

 

カウンターから身を乗り出してくる女将さんに俺が代理で答える。ほら、ベルも縮こまってないで何か──

 

「何でもアタシ達に悲鳴を上げさせるほどの大食漢なんだそうじゃないか!じゃんじゃん料理を出すから、じゃんじゃん金を使ってくれよ!」

「「!?」」

 

その一言に度肝を抜かれる。

ばっと背後を振り返ると、側に控えていたシルさんが横に目を逸らした。

 

「ちょっとシルさん!僕ら何時から大食漢になったんですか!?僕自身初耳ですよ!?」

「えっと、そのー……てへ」

「てへ、じゃないですよ!?」

 

ここは女将さんの一言で復活したベルに任せよう。断じて押し付けているわけではない。断じてだ。

 

「その、ミアお母さんに知り合った方々をお呼びしたいから、たくさん振る舞ってあげて、と伝えたら……尾鰭がついてあんな話になってしまいまして」

「絶対わざとですよね!?」

「私、応援してますからっ」

「応援より先に誤解を解いてくださいよ!?」

 

なんだこの娘は、町娘の皮を被った悪女か?俺もベルも女運が悪いな。……まあ、俺が今まで会った女性に比べれば幾分かまともな部類だな。

 

「僕ら絶対大食いなんてしませんよ!?ただでさえうちの【ファミリア】は貧乏なんですから!?」

「……オナカガスイテチカラガデナイ……アサゴハンヲタベラレナカッタセイダー」

「棒読み止めてください!ていうか、汚いですよ!?」

「ふふっ、冗談ですよ。ちょっと奮発してくれるだけでいいので、ごゆっくりしていってください」

「……ちょっと、ですか」

 

ちゃっかりしてらっしゃる……。

ベルがカウンターに向き直ると、用意されているメニューを手に取り、値段に重きを置いて選ぶ。

今日俺とベルの換金したお金はそれぞれ6000ヴァリス。モンスターを沢山撃破したのと、大量のドロップアイテムのおかげで、普段の倍の収入を得たとベルが喜んでいた。普段は2000ヴァリス前後ぐらいだそうだ。

とりあえず、無難にパスタを頼んだ。

「酒は?」と女将さんに尋ねられ、俺はいただくことにした。流石にベルは年齢的にまだ早いと遠慮していた。

 

「楽しんでいますか?」

「ええ」

「……圧倒されてます」

 

パスタを半分食べたところでシルさんがやってきた。

彼女はエプロンを外すと壁際に置いてあった丸椅子を持って、ベルの隣に陣取った。

 

「お仕事のほうはいいのかい?」

「キッチンは忙しいですけど、給仕の方は十分に間に合ってますので。今は余裕もありますし」

 

いいですよね?とシルさんが目線で女将さんに尋ねると、口を吊り上げながらくいっと顎を上げて許しを出した。

 

「えっと、とりあえず、今朝はありがとうございます。パン、美味しかったです」

「いえいえ。頑張って渡した甲斐がありました」

「……頑張って売り込んだの間違いでは?」

 

シルさんは苦笑して「すいません」と謝った。その言葉が本物であってほしい。

それから彼女と、ここのお店のことについて少し話をした。

すると、突如、どっと十数人規模の団体が酒場に入店してきた。その団体は俺たちの位置とちょうど対角線上の、ぽっかりと席の空いた一角に案内される。どうりで空いていると思ったら、予約が入っていたのか。

一団は種族は統一されていないが、見るからに、全員がそれなりの実力者であることはわかった。

 

「……ベルさーん?もしも~し?」

 

ふと隣のベルに視線をやると、顔が赤くなったり紅潮したり放熱している。

 

「すまない、シルさん。あちらの団体さんは?」

「グレイさん、【ロキ・ファミリア】さんのことをご存知ないんですか?」

「いや、名前を聞いたことはあるんだが、目にするのは初めてでね。そうか、彼らが【ロキ・ファミリア】か」

 

それじゃあ、とシルさんはぽつぽつと説明を始めた。オラリオの最強ファミリアの一角であること。女好きな女神ロキの方針故に、女性冒険者の割合が多いこと。誰が、どの席に座っているのかを教えてくれた。

何やら獣人の青年──ベート・ローガが斜向いに座っている金髪の少女──アイズ・ヴァレンシュタインにミノタウロスがどうのこうのと話をふっていたが……それと同時にベルの様子もおかしくなったな。まさか、ベート・ローガのいうトマト野郎ってもしや──

 

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」

 

それを聞いた瞬間、ベルが椅子を蹴飛ばして、立ち上がった。

 

「ベル、ちょっと待って」

 

そのまま飛び出そうとするベルの肩を掴んで声をかけるが、聞こえていないようだ。……しかたない。

 

「フンッ!」

「い゛っ!?」

 

肩を掴む手に少し力をこめると、ベルが表情を歪ませる。

 

「……グレイさん。一体何を……」

「それはこっちの台詞だと言いたいところだけど……とりあえず座ってくれ」

「でも……」

「いいから。早く、座って」

 

俺が手を離すと、ベルは渋々ながら椅子に座る。

 

「キミの反応から察するに、あの金髪金眼の少女と釣り合う強い男になろうと思っている。そうだね?」

「……はい」

「なら、焦りは禁物だ」

 

俺はそう言い、ベルに左手を向ける。

 

「ベル。君が強くなりたいのなら、今から言う3つを守らねばならない」

「……それは?」

「まずは『明確な目標』、次に『鍛錬』、そして、『十分な休息と食事』だ」

「……そうすれば、僕は強くなれますか?」

「ああ。と言っても、直ぐに強くなるというわけでもない。何事も積み重ねだよ」

 

これは事実だ。実際、俺はこれで強くなった。始まりの火(大王グウィン)を継ぐために。玉座に到達する(最初の火の炉に戻る)ために。そして、始まりの火を奪う(古い時代を終わらせる)ために、敵を狩って己と装備を鍛え、敵を狩っては鍛えてを繰り返した。時には篝火で休息を挟んだ。まあ、その結果、俺は闇の王(バケモノ)になってしまったわけだが。

 

「……わかりました」

「それじゃあ、明日から頑張ろうか」

「はい、グレイさん」




次回、神の宴にあの方々が来場します。
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