闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの   作:大豆万歳

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第1話

あら?今日も来るなんて、あなたも物好きな人ね。

……いいわ、物語を聞かせてあげましょう。

太古の時代、その更に昔のお話を。

 

 

 

 

世界は霧に覆われ、あるのは灰色の大樹と岩と朽ちぬ古竜ばかり。

だけど、何時しか始まりの火が熾り、火と共に差異がもたらされた。

温かさと冷たさ、生と死、そして──光と闇。

そして、闇より生まれた幾匹かが。火に惹かれ、王のソウルを見出した。

最初の死者、ニト。

イザリスの魔女と、混沌の娘たち。

太陽の光の王グウィンと、彼の騎士たち。

──そして、誰も知らぬ小人。

それらは王の力を得、古竜に戦いを挑んだ。

グウィンの雷が、岩の鱗を貫き。

魔女の炎は嵐となり。

死の瘴気がニトによって解き放たれた。

そして、鱗のない白竜シース。同胞の裏切りにより、遂に古竜は敗れた。

火の時代の始まりよ。

けれど、火とは陰るもの。『薪』がなければ、何時か消えてしまうわ。

そして火が消えかけた時、人に呪いの証(ダークリング)は現れる。

それは呪われた不死の証。その印が現れた者は全て捕らえられ、北の不死院の牢に入れられる。……世界が終わるまでね。

なぜ牢に入れるのか、ですって?……そうね、人という生き物は死を恐れ、不死を欲してしまうものね。

でも、考えてみなさい。呪われた不死というのは、復活する度に何かを失うのよ?

印が現れた者は過去と未来を失う。そして、死して復活する度に記憶を失い、感情を失い、そして理性を失う。何もかもを失った者は亡者になり、人を襲うのよ。

それでも、あなたは不死を欲するのかしら?

……話を戻すわね。でも、その印には違う意味もあったのよ。その意味は……使命。

 

『その印、現れし者は。不死院から古き王たちの地に至り。目覚ましの鐘を鳴らし、不死の使命を知れ』

 

けど困ったことに、その使命を伝える者によって答えが違ったのよ。

ある者曰く、

 

『不死の使命とは大王グウィンを継ぐこと。かの王を継ぎ、再び火を熾し、闇をはらい、不死の徴をはらうこと』

 

又ある者曰く、

 

『火が消え、闇ばかりが残れば人が支配する闇の時代となる。王グウィンはそれを恐れ、貴公ら人を縛った。不死の真の使命は理に反して火を継ぎ、王グウィンを殺すこと。そして4人目の王になり、闇の時代をもたらすのだ』

 

どっちが正しいか困惑しているようね?『彼』もそうだったわ。

でも、『彼』はグウィンの後を継ぐことを選んだわ。

『終わりがあるからこそ生命(いのち)は美しい。そのために薪になれと言うのなら、喜んでこの身を始まりの火に焚べよう』とね。

そして『彼』は見事グウィンのいる最初の火の炉にたどり着き、火を継いだわ。

 

 

 

 

めでたしめでたし──とはならなかったわ。

『彼』の行いは一時的な延命措置でしかなかった。

そして何時しか火は陰り、再び不死の呪いが人に現れ始めた。

その時、『彼』は見知らぬ洞にいたわ。

『彼』は洞を抜け、ある場所に出た。

そこはドラングレイグ。かつて偉大な王、ヴァンクラッドの名のもとに築かれた古の国。

『彼』は自分のいた最初の火の炉に戻るため、歩き始めたわ。

その道程の途中で、1人の男に出会った。

男の名はアン・ディール。かつて因果に挑み、全てを失い、ただ答えを待つ者。

アン・ディールとの出会いは、『彼』の中で何かを変えたわ。

そして『彼』は最初の火の炉──玉座にたどり着いた。……けど、邪魔者が現れたの。

その名はデュナシャンドラ。ドラングレイグの王妃──というのは表向きの顔。彼女の正体は、『深淵の主』マヌスの落とし仔、『渇望』の使徒。そして、ドラングレイグ滅亡の元凶よ。

彼女の目的は、『彼』を利用して玉座の道を開き、自らが始まりの火を継ぎ、その偉大なるソウルを手に入れることだった。

でも、『彼』を利用したのが運の尽きだったわ。かつて火を継いだ『彼』に彼女は破れ去ったわ。あっけないほどにね。

そして玉座は彼を受け入れようとしたのだけど……彼は背を向けて立ち去ったわ。

自分が火を継げば確かに呪いははらわれる。でも、それは一時的なものにすぎない。何時かまた、不死の呪いは現れる。かといって、火を継がず理に背けば闇の時代がもたらされる。

──ならば、火継ぎというシステムそのものを変える必要がある。

幸い、彼は呪われた不死。そのための時間は幾らでもあったわ。

かくして、『彼』は探究の旅に出たの。

 

 

 

 

ここから物語は終わりに向かっていくのだけれど……ちょっとお水を飲ませてちょうだい。あなたも、お手洗いなり行ってらっしゃい。

────それじゃあ、続きを話すわ。

 

 

 

 

『彼』が探究の旅を終えた頃、突如として鐘の音が響いたの。

それは継ぎ火が絶えたことを告げる鐘。その音が響き渡る時、古き王たちが棺より呼び起こされる。

彼はその音に導かれ、遥か北の地ロスリックにたどり着いた。

そこは薪の王たちの故郷が流れ着く場所。

そして彼は最初の火の炉に至るため、玉座を捨て去った王たちを連れ戻すため、3度目の旅に向かった。

『深みの聖者』エルドリッチ。

『ファランの不死隊』深淵の監視者たち。

『罪の都の孤独な王』巨人ヨーム。

『双王子』ローリアンとロスリック。

古き王たちとの戦いの途中で、『彼』は協力者に出会った。

その名はユリア。亡者の国、ロンドールにある黒教会、三姉妹の指導者の1人。

彼女の目的は火を奪い、闇の王によって神の時代から人の時代へと時代を変えること。

火を奪い、時代を変えるという意味では、『彼』と彼女の目的は一致していた。

けど、『彼』は人の時代に変えることは闇の時代にする必要はないと言ったわ。

王グウィンの作り出した火継ぎというシステムが駄目なら、新しいシステムを作り出せばいい。

そして、そのために『彼』は火を奪うとも言った。

当然ながら2人の意見は対立し、説得するのは文字通り命がけだったそうよ。

火の時代は神々が支配した時代。あなたも神々(やつら)のように人を縛るつもりか!?と彼女は怒髪天だったわ。

けど、『彼』も自分の信念にかけて真摯に説得を続けたわ。『終わりがあるからこそ、生命(いのち)は美しい』とね。

何百回……いえ、何千回かしら。数え切れないほど『彼』と彼女はぶつかり合い、最後に折れたのはユリアのほうだったわ。

そして『彼』は火を奪い、火継ぎというシステムの作り変えにとりかかったわ。

長い探究の果てに『彼』が導き出した新しい火継ぎのシステム。それは誰かを薪に焚べる(・・・・・・・・)のではなく、器となる肉体を失ったソウル、即ち死んだ生物のソウルを焚べる(・・・・・・・・・・・・・)ことよ。ソウルとは万物に宿るもの。野に咲く草花、草原を駆ける獣、水底を泳ぐ魚、そして彼ら人間。命あるもの全てが持つソウルが1箇所に集まれば、十分に薪としての役目を果たせるだろう、とね。

結果がどうなったか、ですって?

火に向かう蛾のように、器を失ったソウルは始まりの火に吸い寄せられたわ。それらは薪になり、始まりの火は世界を照らし続けた。

100年、1000年経っても人の間に呪いの証(ダークリング)は現れなかった。つまり、彼の生み出した新しい火継ぎのシステムは成功したというわけ。

だけど……この物語に救いはないわ。

『彼』の体から、呪いの証(ダークリング)は消えなかった。

新しい火継ぎのシステムを作り出すために始まりの火に触れたせいか、それとも始まりの火を奪うために暗い穴を開けたせいか。……もしかしたら、「新たな時代を生み出したお前には、世界(それ)を見守る権利と義務がある」という始まりの火の意志なのかもしれないわね。

 

 

 

 

『彼』とは誰なのか?

『彼』は主人公よ。

古い時代を終わらせ、新たな時代を切り開いた、闇の王。

世界(時代)から置き去りにされて、それなのに世界(時代)を見守る義務を背負った。元は何処にでもいる……優しい人間よ。

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