アリウスの象徴は今日も死んだ顔で仕事をしている   作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ

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続きを考えていなかったヤツの次回予告なんてアテにする方が間違えているんだ。
前回はダイジェストで駆け足だったので、今回は取り敢えずゆっくり平和に行きましょう。こういう平和パートが大事ってじいちゃん言ってた。


まさに一期一会

「駄目だ、彼女には勝てない。真正面から戦わずに最奥まで辿り着く必要がある」

 

"彼女……?それって……"

 

「いや、『彼女』(ベアトリーチェ)ではない。もう一人の……私達の、かつての仲間だ」

 

そう語るサオリの表情は沈んでおり、その少し後ろにいるヒヨリとミサキも表情に影を落としていた。あぁ、これは、恐らくアズサの言っていた……

 

「私達は一度も彼女に勝ったことがない。ダメージを負った今、いくら先生の指揮があろうと勝てるビジョンが見えない。正直な話、戦わずに済むのならそれがいい」

 

サオリがここまで言う「彼女」とは、どれほどの強さを持っているのだろうか。言葉通りに受け取るのならば、たった一人でスクワッドに勝てるほどの強さであるということ。そんな相手がここまで出てこなかったのは、最終兵器のような扱いだからなのだろうか。もしくは、出る必要もないと思われているだけなのかもしれないが……。

 

「……わ、私は……私は、あの人に銃を向けるなんて、む、無理……です……」

 

「ヒヨリ……」

 

ヒヨリは背負っている荷物の肩紐をぎゅっと強く握りしめ、肩を震わせている。基本的に弱気な発言の多いヒヨリだが、今回に限ってはそれこそ思い詰めているかのような重々しさすら感じる。サオリもミサキも、そんなヒヨリに対して何かを言うこともできず見守ることしかできないようだった。

 

事情を知らない私ではそんなヒヨリに何を言うこともできず、サオリに視線を向けた。

 

"その子は、一体どんな子なんだい?"

 

「……彼女は私達の代ではトップの実力者だった。その上マダムに忠実で、表情は動くこと無く、滅多に喋らない。まるで人形のように訓練や任務をこなしていた」

 

「そのせいでかなり怖がられてたけどね」

 

「あぁ、本人は然程気にしていないようだったが」

 

「で、でも!本当はすごく優しくて、こんな私のために少ないご飯も分けてくれて!簡単な治療ならやってくれましたし、私達のために、いっぱい……私達の、ために……うぁ、う……」

 

「……誰よりも強く忠実な彼女がマダムに気に入られるまで、時間はかからなかった。そして、彼女がマダムの()()()になるのも、時間はかからなかった」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

はぁ、マダムがやられちまったせいで俺の未来が真っ暗だよぉん。ど、どぼじで……!!俺はただ毎日真面目に業務をこなしていただけだというのに!!こんな真面目な一般社員の人生がこうも簡単に狂ってしまうなんておかしい!!

 

そう考えたらマダムのとこで働いてたやつ全員一斉リストラじゃ……?これから先は就職氷河期……あば、あばばばばば!!アレルギーが、出る!!

 

 

 

と、とりあえず飯にありつかなくては。マダムの居ない今、俺の足で仕事を得て金を得る必要がある。今の手持ちの金は最低限の、数日いけるかなーってくらいしかない。ヤバい。食う飯も慎重に選ばないといけないな。どこかにワンコインで定食食わせてくれるところない?

 

今はどこにいるのかって?知らん。適当にアリウスとトリニティから離れればええやろって考えで歩き続けてるでござる。確かスクワッドのちょっかいかけてたのトリニティでしょ?多分。あとゲヘナだっけ?とりあえずその辺には近づかないでおこう。触らぬ神に祟りなしって言うからな。俺は無宗教だけど。

 

まあ、万の神がいるって噂だし……ん?じゃあ仕事の神様もいるってコトかい!?おい!!神様!!俺の働きっぷり見てたろ!?なんでこんなことになるんですか!!酷いよ!!あんまりだよ!!ちくせう……。やっぱり神なんていねぇじゃん。俺がこんな目に遭ってるのがもう神なんていないことの証明だろ。

 

んでまあ、マダムぶっ倒したってことはスクワッドのアイツらはもう過去に区切りをつけただろうし、昔のよしみで俺のことを助けてくれるとも限らない。なんなら直前まで戦ってたからね。

 

姫ちゃん救出を優先しただけでマダムの次はお前だオラァッ!してくる可能性も無くはないからね。俺を生き埋めにしてくるやつらだぞ。全然あり得る。よよよ……同期が俺を殺しに来るぅ。

 

あのバケモン状態のマダムを倒したやつらと戦うとかお断りです。逃げます。ゲームと違って勝っても金貰えないんだわ。くっ、マダムの依頼ならマダムから直接貰えたのに!他の奴がもらえてたのかって……?知らん!俺が優秀で優遇されてたからな!

 

もち怪しまれないように速攻で一般人っぽい服と帽子を買って身につけてる。一般人に「普段から戦闘してそう」って思われるのは普通に勿体ないのでね。困ってる姿を見られたときに厄ネタだと思われちゃうし、一般人の姿なら誰か助けてくれるかもしれん。

 

そのせいで金が減ったんだけどね。しゃーないしゃーない。必要経費と割り切るぜ。昔の方がひもじかったんだ、問題ない。人間数日は食わずに生きれる。

 

でも、割とマジでここどこ?道くらい聞いとけばよかったか?あー、捕まえた姫ちゃんと話す機会あったんだしそこで聞いとけばよかった。姫ちゃん優しいから教えてくれそう。

 

くっ、判断ミスだと!?幸先不安!誰か俺を雇ってくれぇ!毎日フルタイムで働けるぞぉ!手先も結構器用だぞぉ!戦闘もできるぞぉ!誰かぁ!

 

 

 

 

 

あれから何度か目にしているが……なんでロボットが普通に人間のいる街を歩いてんだ?あとあの獣人も。逆人面犬みたいなのやめてね。骨格とかどうなってんの?その異様に短い脚で移動するの大変じゃない?生物としてかなり重大な欠陥を抱えてそう。

 

でも街中に犬とかが歩いてるのかわいいね。戦闘力も無さそう。多分簡単に殺せる。少し観察してみたが、結構友好的な存在らしい。つまり敵ではない。

 

そして道行くロボット、アイツらも俺の知っているロボットと違う。弱そう。多分簡単に壊せる。横長で丸っこい頭に貧弱なボディ、それに日常会話とかもしてるし友好的だろう。俺の戦ってきたロボットは明らかに戦闘向きのボディだったし、一式で装備も持ってた。別枠かな?

 

俺たち人間、獣人、見るからに戦えないロボットと戦闘向きのロボット……段々とこの世界のことが分かってきたぞ。

 

まず、俺のいるこの世界は明らかに文明が進んでいる。ところどころ古い部分も感じられるが、どう考えても科学が進みすぎている。理解できん。最低でも元の世界から何十、何百年先のレベルの文明を持った世界であることは確定でいいはずだ。

 

そして、この世界でもAIが開発され、ロボット達が意思を持つようになった。だが、それはいいことばかりではなく、人間に反抗する勢力が生まれた。ロボットの中でも二分化されているんだ。こうして街中を歩き普通の生活をしている中立派と、武装して俺たち人間への反逆を行おうとしている反乱軍。

 

……クソがよ。SFくさいが、これが一番しっくりくる。そうじゃないと説明がつかない。

 

人間VSロボットの勢力図の中で、獣人や一部のロボットが中立として存在している、という感じだろう。マダムが人間の子どもをわざわざ鍛えさせてたわけだ。少し外に出れば戦争じゃんかよ。俺たちが普段から銃を持っているのが当たり前という常識は、こういう背景があるからなのでは……?

 

それなのになんで人間が人間同士で争ってんだよ。バカかよ。バケモンだったマダムの方がまだまともだろ。

 

 

って、そんなことはどうだっていいんだよ!!俺はそんなことよりも仕事が欲しいの!!これからを生きていくためのお金が欲しいんですぅ!!ハロ〇ワークとか無いんですか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

な、なぜだ……なぜこんな所に砂が……?おかしくない?さっきのところはまだ普通に都市だったじゃん。なんでちょっと歩いた先に砂があるのよ。その先とかもう地面が砂に埋もれ始めてんじゃん。

 

もしかして、この世界バケモンとかクソロボットとかが闊歩してるだけじゃなくて砂漠化まで進んでんの?脅威が多すぎィ!!人間に優しくない。なんだこれマジで。

 

はぁ、砂漠とか無いわー、流石に無いわー。なんの準備も無しに砂漠に足を踏み入れる勇気は無い。というかそれは自殺志願者だろ。俺は生きるために仕事を探してんの!砂漠に来たかったわけじゃないの!

 

はい、回れ右ですね。ここまで歩いてきたときに消費した俺の体力返して。

 

む?なんだこれ、屋台……?屋台とかこっちの世界で初めて見たかもしれん。珍しいな。なに、ラーメンとな?

 

……。

 

……飯、食うか?

 

いや、待て。少ない金をこんな屋台で消費するなんて勿体ない。数回しか食事できないその一回を屋台で使うなんて……屋台のメニューとかいうて安くないし。メニュー表も出てないから中で座ったら想像以上に高かった、なんてこともあり得る。

 

ここはスルーが安牌。そう、麺類は消化も早いからな。これが正解だ。踵を返してここから……

 

「よう、嬢ちゃん。食ってくかい?」

 

「……」

 

大 将 出 て き ち ゃ っ た 。

 

待て、なんだそのもふもふボディは。それで飲食店だと?舐めてんの?衛生面とかどうなってんの?

 

「……大丈夫です」

 

「なんだ、それにしてはやけに立ち止まってただろう?」

 

「……」

 

な、なんだコイツ……!大丈夫だって言ってんだろ!辺鄙な土地だからって大将自らキャッチしてくるのか!?ならなんでココで屋台やってんだよ!もっと都市部行けよ!

 

くっ、こんな所で金の無駄遣いをしている場合じゃない。わざわざ大将がキャッチしてくるくらいだ、収入が無くてさぞお高いラーメンなんだろう。俺は帰らせてもらう!

 

ふっ、店のキャッチで働くやつへの特効ワードを食らえ!

 

「……すみません、お金が無いので」

 

ブハハハハ!金が無い、つまりその店で何かを買うことはできない!無理にキャッチをしても意味は無いぜ!さぁ!俺は帰らせてもr

 

「そうかそうか……嬢ちゃん、荷物はそれだけか?」

 

「……」

 

んん……?所持品の確認……?なんで?追い剥ぎ?金が無い言うたよね?なぜ?

 

「……よし、分かった。嬢ちゃん、一杯食べていきな」

 

「……え?」

 

「金も無しにその軽装、結構大変な思いしてるんだろう?」

 

え、なにこのイケメン……筋肉質でシュッとした肉体とアイドルのように爽やかな笑みを浮かべているように見えてきた!!こ、これが人情経営!?そんなものが本当にこの世に存在していたなんて!!人情だろとか言いながらサビ残を強要する人間なんてこの屋台には居なかったんだね……!!

 

「どうだ、食ってくかい?」

 

「……お願いします」

 

 

 

 

 

 

「……ご馳走様でした」

 

「おう、いい食いっぷりだったぜ」

 

う、ウマかった。衛生面とか気にならないくらいウマかった。まあ、頼んだのは醤油ラーメンなのにほぼ二郎系ラーメンが出てきたけどな。なんでもやしがタワーになってたの?麺も多かったし……そもそも器もデカかったわ。ラーメンの器の大きさは心の器の大きさに比例するんだな!

 

やかましいわ。

 

「……すみません、ありがとうございました」

 

「気にすんな。もし気にしちまうなら、いつかまた食べに来てくれよ」

 

くぅ〜!いい人だぁ!俺もこんなこと言ってみたい!余裕のあるカッコいい大人になりてぇ〜!そのためにも、まずは金だな。余裕を持つためには金が無くちゃ話にならん。

 

いざ、仕事探しへ!

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

"ど、どこを探しても居ない……痕跡も、何も……"

 

「マダムも居なくなったのに、ど、どうして……」

 

「……チッ」

 

「……」

 

「どこに、どこに行ったんだ……」




そいつ無料でラーメン食ってるよ。






先のことなど考えず気分転換で1話のみポイっと投稿した本小説ですが、想像以上に見られていたので連載していこうかなぁと思います。チマチマですが。本当にチマチマですが。感想は基本返せません。作風が作風ですからね。ネタバレというか、先の話に影響してしまうので。

それに伴い、匿名解除しました。報告等ありましたら活動報告にて報告します。あとXで投稿告知も行います。
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