【プレイバック’04】「首切り映像」の衝撃…イラク日本人青年殺害で被害者遺族を追い詰めたもの

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Aさん家族を追い詰めた「自己責任論」

この「誘拐された人間の自業自得」という「自己責任論」が盛んに口にされるようになったのは、記事にもあるように’04年4月にイラクで起きた日本人3名の人質事件がきっかけだった。

このときも犯人の武装集団は自衛隊の撤退を要求したが、小泉首相が「テロには屈しない」と拒否。被害者家族や支援者らの自衛隊撤退要求の声に対して、「自己責任」という言葉がよく使われるようになったのだった。「自己責任」の御旗のもとに3人とその家族は日本中からバッシングを浴びることとなった。

ただ、このときの「自己責任論」にはまだ賛否があった。それは誘拐された人たちがジャーナリストやボランティアなど「目的」をもって危険な地域に入っていったことと関係していたのかもしれない。

だが、記事からもうかがえるように、バックパッカーであるAさんの事件において「自己責任論」が世論の多くを占めていたように感じられた。

フリーターとして働いていたAさんはニュージーランドでのワーキングホリデーを’04年1月に終えた後、イスラエルやヨルダンなどを旅行していたという。映画監督の四ノ宮浩氏はヨルダン・アンマンでAさんに出会い、「イラクへ行く」という彼を一度は引き留めたという。そしてAさんについて当時毎日新聞の取材に答えてつぎのように語っていた。

「彼はただ観光旅行に行ったように言われているが、全く違う。『どうしたら世界は平和になるんでしょうか』などと語る純粋な若者だった。戦争というものを肌で感じて、そこから平和について考えようとしたのだと思う。行動は無謀だったが、真実を知りたいという姿勢を僕は評価したい」

コロナ禍や貧困問題など「自己責任」というワードが使われる機会は20年前よりもさらに増えたのではないだろうか。それは、SNSという、当時は存在しなかった他者を攻撃するツールを多くの人が手にするようになったことだけが理由ではなさそうだ。