初心者向け3Dプリンター、中国製が9割超えーーZ世代がハマる“自作フィギュア”の裏
生成AIがモデリングの壁を崩す
さらに、AIによる3Dモデル生成の進歩が、3Dプリンターの裾野を一気に広げた。生成AIがトレンドとなった2023年以降、ハードルが急激に下がったわけだ。今や3Dプリンターでは音声やテキスト入力だけで立体モデルを自動生成する「生成AI For 3D」が登場し、モデリングスキルのない初心者でも簡単に作品を制作できるようになったのだ。 テンセント、極視科技(VAST)、Meshyなど複数の中国企業が次々と参入しており、中でも、極視科技の3Dモデル作成生成AI「Tripo」は、初期から品質の高さで国際的な評価を得ている。 一方で、AI生成機能はあくまで“入門者向け”だ。熟練ユーザーからは「AIモデルの調整が煩雑」との声もあり、プロの現場では補助的なツールとして扱われている。
政府の後押しと悪質業者の流入も
「既製のモデルをダウンロードして新しいものをプリントしたいという衝動を抑えられない」「3Dプリンターが一日中ノンストップで稼働し、フィギュアやモデルガン、カップまで作っている」といった声が中国のSNS上にあふれる。 この動きを後押しするのが中国政府の政策だ。9月には、商務部など8部門が「3Dプリンターはデジタル製品消費の重点分野に含まれる」と明記した文書を発表し、デジタル製品購入時の補助金支給対象となった。これにより一部製品は1000元余り(約2万円)で購入できるほどに安くなり、消費者の購入意欲を煽っている。ただし、新しいデジタル製品にありがちな“熱しやすく冷めやすい”側面もあり、ブーム後の市場定着には課題が残る。 紙に印刷するプリンターと同様に、3Dプリンターもまたメーカーの利益の源泉は製品本体ではなく、純正品のPLAフィラメントなどの材料である。そしてプリンターがそうであるように3Dプリンターもメーカー非公認の格安な互換品や汎用材料が流通する。純正品の半額かそれ以下で入手できる互換品や汎用材料の市場浸透率が年々高まった結果、純正品の材料を大きく上回っているという報告も出ている。 純正品ではない材料は安くて使えるのでいいかというと、品質と互換性にばらつきがあるため、プリントヘッドや機械部品が損傷することがあり、ひいては消耗品の目詰まり、融点の不安定化、印刷不良といった問題を引き起こす。 その先にはフィラメント出力の不安定化や造形精度の低下といった不具合ならいいほうで、売れればいいという悪質な業者もこの業界に入り込み、品質の悪い素材を使った結果、有害物質が発生するリスクもある。そのリスクから利用者が3Dプリンターの導入を嫌がる動きも今の中国社会ではありえそうな話だ。 (文:山谷剛史)