先生の会話は「」ではなく‘‘ ‘‘で表現することにしました。
こっちの方が何となくブルアカっぽいかなと。
急いで書いたものなので誤字脱字あるかもです。
思うに先生──君はやっぱり、甘すぎると思うんだ。
生徒に対して? いいや違う。
仕事に対して? それも違う。
違う、違う、違う。
僕が甘いと言ってるのは、君に対する危機感についてだよ。
君はあまりにも自分の命を軽んじている。圧倒的な利他主義、生徒の為であれば死地であろうと飛び込んでしまう。
安心院さん風に言うなら──そう、主人公気質なんだよ。めだかちゃんと同じくね。
違う点と言えば、彼女は超人でその前に一人の恋する女の子だった。
だから最後には王子様がやってきて、その仮面を剥がすことが出来た。
……まあもっとも、めだかちゃんの場合は『人を幸せにする為に生まれた』という理由があったけど、少なくとも君の場合はまだ僕は教えられていないな。
それにめだかちゃんはその超人性あってこそ、出張っていたけれど、君の場合は違うだろう?
生徒よりもこの最弱を冠する僕よりも非力でひ弱だ。
それでも君は生徒の前に立って、他の悪意や責任を一身に受け止めようとする。
ねえ先生、どうして君は、大人としての責務を先生としての責任を全うしようと思うんだい?
君には関係のない話であろうと、出会った事すらない生徒の為であっても、君はいつだって大人という仮面を被って立ち上がる。
だけどもうそれは許されない。だって君は愚かな子供じゃないんだから。
君の命はここでは紙切れのように容易く散ってしまう。銃弾一発でも危機的な状況下で、君はまだその態度を貫こうとしているのかい?
‘‘武器を持ってしまったら生徒に信頼されなくなる‘‘
ふーんあっそう。それじゃ先生、君は生徒に裏切られるとはこれっぽっちも考えないんだ?
そんな事はないはずだよ、だってもう散々傷つけられて来たからね。
そう──傷つけられてきた。君は君が愛するはずだった生徒に一度手を挙げられたことがある。
それで死にかけたはずだ。
‘‘でも、最終的には和解出来た‘‘
結果論に過ぎない。もしもあの時死んでしまったらどうしたのさ?
ちくしょーとか、悔しいとか、生徒を信じなければ良かったとか、思わないわけ?
‘‘思わないよ。ミソギがいるからね‘‘
またそうやって僕を頼ってさ。僕の裏切りとか考えないわけ?
ほら僕ってば改心したけど前の世界じゃ悪党でさ。
混沌より這い寄る過負荷とはよく言ったもんだぜ。
‘‘確かにミソギは性格が悪いけど‘‘
‘‘生徒達のことをちゃんと見ているし‘‘
‘‘やってはいけない事の線引きをちゃんとしている‘‘
‘‘君は、君が思っている以上に素敵だよ‘‘
…………。
…………。
……。
これはとんだ人たらしだね。予言するよ、君は一生裏切りで死ぬことはない。
まあ多分後ろからナイフでぐさりが一番あり得そうだな。
‘‘後ろからぐさり!? ‘‘
そりゃそうだろう。ミスター人たらし君。
まあ安心してよ、もしも僕が近くにいれば蘇生してあげるからさ。
ああそうだ。
その傷、まだ治さないのかい?
……ふぅん、ま、そう言うと思ったよ。仮に君が懇願した所で僕は断っていたけどね。
それは君の甘さの代償で。
傷つかれても生徒を守ろうとする君の勲章なんだからさ。
◆
まさか本当に五分で一億を稼いだとは誰も思わなかったらしくて、シロコちゃんの鞄の中から一億ほどの分厚い札束が現れた時は本当にビックリした。シロコちゃん、あどけない表情しながらちゃっかりやることやってるじゃんか……と思ったら、当の本人もビックリしていた。どうやら銀行員の人が勝手に詰めてしまったらしい。
さて、問題はこの後。主張が三つに割れてしまって僕達は本来ならば直ぐに逃げ出さなければならない所、立ち止まる事になってしまった。
セリカちゃんとノノミちゃんは学校の借金返済にあてるという意見をし、ホシノちゃんとシロコちゃんは手を着けないと意志表示をした。え? 最後は誰だって? 僕に決まってるじゃんか。誰だって一億円は欲しいでしょ?
これに関して先生は何も口を挟まなかった。いつもの静観かと思ったけど、ちょっと違う。
彼女たちならば大丈夫だろうという信頼がその目には映っていた。
おいおいちょっとその信頼は早すぎやしねぇか? 確かに教師たるもの生徒を信頼すべしとは良く言うけどさ、それは力関係が教師の方に比重が傾いているからこそだろう?
もしも彼女たちが誤った選択をするのなら、どう教え諭すんだい?
ということで、僕は先生の傍まで寄って、その事を訪ねる。
その小さなタブレットで何とかするのだろうか、しかし先生は静かに首を横に振って。
"そんな事はしないよ。あの子達は"
『……おいおい』
『そんな調子で大丈夫なのかい?』
『もしも裏切られたとか、考えたりしないの?』
‘‘裏切りとか考えたらキリが無いよ‘‘
先生は少しだけ微笑んでいった。
‘‘誰だって最初は信じるしか無いんだ。裏切りを前提に物事は考えられないよ‘‘
‘‘だから‘‘
‘‘その最初は私がやりたいんだ‘‘
‘‘私が信じれば、生徒達もいずれ心を開いてくれる‘‘
『……ふぅん』
『ひねくれものの僕には分からない感性だね』
『ま、せいぜい気を付けると良いよ』
『その甘さの責任は自分以外取れないんだからさ』
先生は困った様に笑ってから、そうだねと静かに呟いた。
「球磨川先輩、やっぱりこの一億円は置いておくことにしたよ~」
ホシノちゃんがこちらに声を掛ける。
どうやら論争はホシノちゃん側の勝利という結果に落ち着いたそうだ。
『勿体ないなぁ』
『僕は欲しいと思うんだけどね』
『ところでみんな、そろそろ覆面を被った方が良いよ』
『敵対反応は無いと思うけれど、追手が来ているからね』
僕の呼びかけに、最初から覆面を外していないシロコちゃんを除く全員が素早く覆面を被りなおして(ヒフミちゃんはちょっと失敗して所々破れてしまった)、僕の後ろを凝視した。
微かに聞こえる足音がやがて大きくなって、それは迷いなくこちらに進んでいく。
「や、やっと追いついた……ちょっと待って! 敵じゃないわ!」
へえ追い付いてこれるんだ。ちょっと撹乱とかしていたというのに、やっぱり実力だけはあるね。
アルちゃんの後ろから続々と便利屋68のメンバーが集まっていく。
「あ、あの……大したことじゃないんだけど」
そう前置きをしてから、アルちゃんは額から流れる汗をハンカチで拭う。
「銀行の襲撃、見せて貰ったわ……ブラックマーケットの銀行をものの五分で襲撃し終えて、貴方たち、稀に見るアウトローっぷりだったわ」
「!?」
「凄く衝撃的だったというか、このご時世にあんな大胆な行動が出来るなんて……わ、私も頑張るわ! 法律や規律に縛られない、本当の意味での自由な魂! そんなアウトローになりたいから!」
熱弁に語るアルちゃんを前に、セリカちゃんが僕にこっそりと耳打ちする。
「一体なんの話?」
『さあ?』
『とにかく分からないけど──』
僕は一歩前に出てからアルちゃんに言った。
『僕達は「覆面水着団」。ただし今回は水着無しバージョン』
「や、やばい……! カッコ良いわ! その限定バージョンみたいなものも、超クール!」
「うへ~本来スクール水着に覆面が正装なんだけどね。ちょっと緊急だったもんで、今日は覆面だけなんだー」
「そうなんです! 普段はアイドルとして活躍してて、夜になると悪人を倒す正義の怪盗に変身するんです! ……そして私はクリスティーナだお♧」
「凄い! キャラも立ってるわ!」
この子本当に扱いやすいな。ちょっと僕も心配になってくる。
でも後ろに控えるメンバーの皆は気づいていそうだし……あ、またカヨコちゃんがため息を吐いてる。君も苦労人なんだねぇ。
「そ、それで……あの! 啖呵切った手前申し憎いんだけど──どうやったらあなた達みたいにカッコ良い
「え、ええ……っとぉ」
これが初犯で私達もアウトローの極意なんてものは分かりません……とは言えない雰囲気だ。
みんなが目配せをしあって、最終的に僕へと集中する。
やれやれ、ま、ここは嘘吐きの僕の領分って事か。
『まず、人に聞くこと自体がアウトだよね』
『本質なんてそんなもの、他人から教えられて理解出来るはずが無いし』
「うぐぐ……確かにメフィスト、貴方の言う通りだわ」
『だけどまあ、そうだね……近道くらいは教えてあげよう』
ごくりと生唾を呑み込むアルちゃんに、僕は覆面越しに笑う。
『受け入れることだよ』
「え……?」
『受け入れることだよ』
『不条理を』『理不尽を』
『嘘泣きを』『言い訳を』
『いかがわしさを』『インチキを』
『堕落を』『混雑を』
『偽善を』『偽悪を』
『不幸せを』『不都合を』
『冤罪を』『流れ弾を』
『見苦しさを』『みっともなさを』
『風評を』『密告を』
『嫉妬を』『格差を』
『裏切りを』『虐待を』
『巻き添えを』『二次被害を』
『それでも尚、その意志を貫くというならば』
『無慈悲に孤高に、我が道の如く魔境を往くのであれば』
『そうすればきっと』
『僕達みたいになれるよ』
『……そうだよね? ファウストさん』
「え、ええっ!!? ここで私に振るんですか!?」
『ほらファウストさんもそう言っている』
「い、言ってないですよぅ……うぅ」
良し全ての責任はヒフミちゃんが預かることになった。
これで僕は悪くない。
「さっ、さぁ~て私達はそろそろ退散することにします!」
「ん。夕日に向かってレッツゴー」
『ええっ!』
『この鞄本当においていくのかい!?』
『い、嫌だ……僕は欲しいぞう』
『みんながいらないんだったら僕が──』
「ノノミちゃ~ん?」
「はい☆ それじゃあ失礼しますねメフィストさんっ」
鞄にしがみつく僕の頭上に影が落とされる。
ノノミちゃんのマシンガンの銃口で頭を叩かれてしまった。
崩れ落ちる僕の身体──ああそんな、僕の一億円が……。
「あ、あれ? 少し小突く程度の力加減だったのですが……」
「うへ。まあ球磨……メフィストなら大丈夫だよ。それじゃあそう言うことで!」
緩やかに気絶へと向かう僕の身体をノノミちゃんが担いで、そそくさと退散する。
くそう……どうして僕がお姫様抱っこなんかされる羽目になるんだ。
◆
どこか冷えた風に吹かれて僕は目を覚ました。
「うへ~。起きた? 球磨川先輩。おはよー」
悲鳴を上げる関節を無理やり叩き起こすかのように、僕はその場からゆっくりと立ち上がる。
どうやら眠っている間に気づけば戻って来た様で、僕は満点の星空の下、寝かされていた。
「みんなや先生には先に帰って貰ったんだ。少し話したいことがあったから」
ここアビドス高校の屋上に──そして、目の前にはホシノちゃんが背の低いフェンスに腰かけていた。ぶらぶらと地に着かない足をぶらつかせて。
「それにしても寒いね~。やっぱり何年過ごしていても慣れないや」
時折流れる寒風に髪を揺らめかせて、ホシノちゃんは白い息を吐く。
アビドスの昼と夜での気温の差は僕も骨身に染みている。
『そんな寒い屋上に放置して……僕が風邪引いちゃったらどうするつもりさ』
僕はホシノちゃんに近づく。ホシノちゃんはフェンスから飛び降りて、屋上に着地した。
「風邪なんか引いても大丈夫でしょ? ──球磨川先輩なら」
『ふぅん……』
少しだけ雰囲気が違う。話したい内容も決して明るい話では無さそうだ。
ホシノちゃんは僕の真正面までやってきて、呟く。
「
ホシノちゃんのその左右違う色の瞳が、少し翳った様な気がした。
暗雲立ち込めて来ましたね……次話はやりたかったことがやっと出来る回なので興奮しています。
コメント等もよろしくお願いします。