会社員から見て天国のような数日の盆休みはあっという間に過ぎ去り、学生は夏休み終盤に突入した今日この頃―未だ猛暑と悪天候が続いておりますが、私は元気です。
休日は相変わらず自宅でゼンゼロをやり込んでいますが、未だにアリスが引けておりません…必死でポリクロームをかき集めておりますが大爆死する未来が見え、次バージョンのオルペウス&鬼火の確実引きを目指して貯蓄するか迷っております。
夏の終わりが近いですが、良きサーマライフを最後まで送りたいと思います。
駄文失礼致しました。それではどうぞ
3日後
予定の日を迎えた鄙は、目的地であるヴィジョン・コーポレーションの工事現場へと愛車の黒塗りセダンを走らせていた。現場に近付くにつれ、建設途中の建造物や一般車両に混じって道路を行き来する工事車両の姿をよく見かけるようになる。
鄙「(しばらく来ないうちに、この辺りの風景もだいぶ様変わりしたな)」
開けっ放しの窓から入ってくる気持ち良い風に打たれながら、大きく変化した町の様子を見つめる。
一昔前までは辺りにゴミが散乱しバラック小屋や古びた民家が建ち並ぶ貧困街だったが、今や高層住宅やモールが所狭しと建てられ、道路も清潔に保たれている。周辺地区の開発事業はTOPSや名の知れた大企業が担当しており、短期間でここまで発展させる技術力には感嘆せざるを得ない。
だがしかし、開発前までは様々な事情で貧しい生活を余儀なくされた住民が多く住んでいた。それを邪魔と感じた企業が全住民を半ば強制的に他所へ移住させ、妨害なく地区から住民達を一掃した。
それは目先の利益しか考えないTOPSや大手企業の常套手段であり、人の生活・思い出を簡単に破壊する企業は信用に値しない。
鄙「っと…ここか」
心内で企業に対する愚痴や批判を喋っていると、目的の場所へと到着した。その辺りにあった適当な駐車場へ車を停めると、助手席に置いてあった骸狩りを手に取り車から降り立つ。
ガコォォンッ
ガシャァァン!!
ガンッ!! ガンッ!! ガンッ!!
鄙「(ッ…これだから工事現場は苦手だ…)」
断続的に鳴り響く大きな工事音が狐耳の鼓膜を震わせ、その不快感から思わず両手で畳み込む。
基本的に一部を除いた大半のシリオンは大きな音が苦手である。それは狐のシリオンである鄙も例外ではなく、犬や猫のシリオンよりも聴覚に優れているため騒音が与える影響は他種族よりも大きい。
一度車内に戻ると鞄の中から耳栓を取り出し、狐耳に装着する。
鄙「…よし、これで幾分かマシにはなった」
まだ少し不快感が残るが無いよりマシである。協会から持ってきていた他の荷物の整理を行っていると、近くの事務所らしき建物から1人の男が現れこちらに向かって歩いてくる。
「失礼。もしや君が派遣されてきた調査員かね?」
鄙「あっ、はいそうです。調査協会戦闘救難室3課の藤木です」
「おぉ待っていたぞ!これでやっと中断していた工事が進められる!」
小学生にすら負けてそうな低身長に、驚くほど寸胴であるアンバランスな体型のダルマ似の壮年男性は大きな声を出して歓喜する。
パールマン「おっと、紹介が遅れてしまった。ヴィジョンコーポレーション代表取締役のチャールズ・パールマンだ」
差し出してきた手を握り、軽い握手を交わした。
鄙「早速ですが、今回の任務内容について教えて頂いてもよろしいでしょうか?事前に知らされていないもので」
パールマン「あぁもちろんだとも!ゴホンッ、我々ヴィジョンコーポレーションは旧都地下鉄の開発事業を請け負い、その工事に使う資材を列車で運んでいたのだが、その列車が通る新エリー都とカンバス通りを結ぶトンネル内の線路の一部がエーテリアスによって壊され、列車の運行を一時ストップせざるを得なくなってしまったのだ…まったくとんだ迷惑だよ」
言葉の節々にエーテリアスに対する怒りが感じられるが……そもそも民間企業がホロウ内で治安局や調査協会の支援なく工事作業をすること自体イカれている。まぁ当然の結果と言えよう。
パールマン「修復のため作業員を送ろうにも、未だにエーテリアスが徘徊していて手が出せんのだよ。始めは治安局に人員の派遣を要請したのだが、市政選挙が迫っているから対応できないと言われて断られてしまった。そんな時に調査協会が要請を引き受けると聞いた時は、すこぶる安堵したよ」
鄙「そうですか…とりあえず内容は理解できました。現場のエーテリアスを全て討伐し、線路を修復する作業員達を護衛するのが今回の自分の任務ということですね」
パールマン「うむ、話が早くて助かる。ところで今回は君だけなのか?1人では負担が大きいと思うのだが…」
鄙「心配ご無用です。単独での護衛任務は慣れていますので安心して下さい」
まぁ多少の不安があることには変わりないのだが。結局、頼みの協力者は得られず一人で行う羽目になってしまったからな…おのれ許さんぞ調査協会…!
その後もパールマンの口から今回の任務に関する詳細が言い伝えられる。その内容は、普段行っている任務と変わらないエーテリアス討伐と対象者の護衛―
聞けば工事には早く見積もっても半日程度かかるらしいが、目的場所のトンネルがホロウ外縁部にあるため中心部を徘徊していると思われる要警戒エーテリアスのデッドエンドブッチャーを気にしなくて良くなり、多少楽にできると思うと気が軽くなる。
鄙「一先ず自分は現場に向かうとします」
パールマン「おぉそうか!そうとなれば、近くの駅に移動用の列車がある。現場まではそれに乗って―」
鄙「いえ、走っていきますから大丈夫です」
パールマン「????」
その言葉にパールマンは酷く困惑した。そうなるのも無理も無い。ここから目的地のホロウ入り口まで数キロメートルは離れているのに、それを走っていくなどと理解が及ばない。
通常の者なら確かに走りでは無理だが、星見家の人間(特例)である鄙は数キロメートルを走り切ることなど朝飯前である。本気を出せばスポーツカー並みの速度である時速100kmで走ることができる。さらに上には上がおり、妹の雅は瞬間走力時速200kmと人間―いやシリオンをきっと辞めている。
鄙「それではこれで失礼します」
未だ困惑するパールマンを余所に、鄙は前屈みの姿勢になるとロケットエンジンの如く走り出し、姿はあっという間に見えなくなった。
パールマン「…変わった若者だったな…おっといかん!?取材のことを忘れておった!!」
車両、建物、資材、大型クレーンと周囲にあるあらゆる物を活用しながら駆け、登り、跳躍し最短ルートでホロウまでの道を行き、そして僅か数分で数キロメートルの距離を踏破しデッドエンドホロウの外縁部に到着した。
鄙「場所はこの辺りのはずなんだが…」
周囲を観察し示された合流場所を探していると、黄色の安全帽に作業服の上から蛍光ベストを着用した作業員達の姿を見つける。同じタイミングであちらも自分の存在に気づき、大きく手を振っていた。
鄙「戦闘救難室3課の藤木です。そちらはトンネル内線路の修復を行う作業員の方々でよろしいでしょうか?」
「そうです。修復作業中はエーテリアスから我々を守って下さるとのことで、本日はよろしくお願いします」
礼儀正しいリーダー格らしき男性と握手を交わしながら、後ろに控える他の作業員達に目を遣る。護衛対象の規模は男女6人。工具箱や線路に使う修復材を所持しており、今のところ懸念事項は見当たらない。
「ねぇ戦闘救難室だって!あたし初めて見るわ!」
「戦闘救難室の人が居れば、エーテリアスなんて怖くないな」
ふと作業員らがヒソヒソと小言を呟いているのが耳に入る。
れっきとした武装機関であるH.A.N.Dの対ホロウ行動部と戦闘能力を比べると、資源調査機関である協会の戦闘救難室は少々劣っていると認めざるを得ない。しかし、市民からすればどちらも自分達のために戦ってくれている存在であり、戦闘救難室は対ホロウ行動部と同じように敬われ慕われている。
「既に準備はできていますので、あとはホロウの中に入るだけですね」
鄙「分かりました。もう一度確認しますが、皆さん抗侵蝕薬の服用はしましたでしょうか?」
全員から問題なしとの返答が返る。
鄙「…現在時刻、9時50分12秒。これより作戦を開始する」
作業員達より先導してデッドエンドホロウへと入る。
相変わらず慣れないホロウの感触を肌身に感じながら、一歩また一歩と足を進めていくと、しばらくして放置された車両基地と思わしき場所に出た。
ふと上空を見上げてみるが、空模様はあいにく悪いようで、いつ雨がポツリポツリと降り出してもおかしくない。
鄙「エーテル濃度、活性共に規定値内。周囲にエーテリアスは確認できず、現状作戦進行には支障なし」
周辺環境の安全を確かめていると、背後の裂け目から作業員達が続々と現れてくる。
「よっと…大丈夫そうですか?」
鄙「エーテルの濃度と活性は安全値で周囲にエーテリアスは確認できませんでした。少なくとも今は大丈夫ですね」
「なるほど分かりました。ここから目的のトンネルまではすぐそこです。私が案内しますので着いてきて下さい」
リーダーを先頭に作業達は移動を始め、鄙もその後ろを着いていく形で線路に沿いながら歩き始める。
鄙「(やけに静かだな…とはいえエーテリアスが何処に潜んでいるか分からない。気を引き締めていかないとな)」
単独での護衛任務であるため普段よりも周囲の警戒を心がける。静寂な時間が流れている時、ふとリーダーが自身に尋ねてきた。
「そういえば、藤木さんの雰囲気はどことなく対ホロウ6課の星見 雅さんに似ていますね」
その言葉に鄙の足取りがほんの一瞬乱れた。
「私には姉が居るのですが、以前一緒に対ホロウ6課との交流会へ行った時に一度、雅さんと直接的ではないですがお会いしたことがあって、鋭い眼差しや落ち着いた振る舞いがよく似ているなと思いまして」
鄙「それは幸甚です。彼女を目標に常日頃から鍛錬を重ねていますので、そう言って頂けると嬉しいです」
「そうだったんですね。ということは剣術も雅さんに影響を受けて?」
鄙「まぁ、そうですね」
最近よく雅に似ていると同僚や友人に言われるが…気のせいか?
そんな雑談を交わしつつ歩いていると、目的地のトンネルが見えてきた。しかし、出口を除いたトンネル内は深淵のように暗く中の様子が全く分からない。
「む、何故か電気が切れていますね…少し待っていて下さい、今確認してきます」
リーダーが近くにあった設備に駆け寄ると何かを弄る様子を見せ、しばらくして戻ってくるが…どうやら結果は良くなかったらしい。
「駄目でした…配電盤には問題が無かったので、恐らくエーテリアスが照明を破壊したのかもしれません。これは困りましたね…」
Graaaー!!Graaaー!! Graaaaー!!Graaaaー!!
問題に直面した自分達を嘲笑うかのように、トンネルの奥からエーテリアスの咆哮が聞こえてくる。
鄙「皆さんは近くの安全な所に隠れていて下さい。すぐに片付けてきます」
そう彼らに告げると刀を抜き、深くゆっくりと息を吸い呼吸を整え、感覚の一つである聴覚を最大まで研ぎ澄ます。
鄙「スゥゥ…ハァァ…」
天井の亀裂から水滴が滴る音、こぼれ落ちるコンクリート片の音、トンネル内に入り込んでくる風の音などの環境音に混じって、人型をした生き物が数体歩いている音が鮮明に聞こえてくる。
鄙「(……52mにティルヴィング5体、55mにアルペカ3体とティルヴィング2体。そして75mにタナトス2体――計12体か)」
シリオン―いわゆる獣人はその見た目のみならず動物の遺伝子を身体内に秘めており、鼠のシリオンは回復力が高く、狼のシリオンなら腕力に優れるといった各々が固有の能力を持つ。
狐のシリオンの場合、人間はもとより他シリオンを凌駕する非常に高い聴力を有しており、上空や地下の物音を正確に捉えることができる立体聴力に優れている。その能力を駆使して数と配置、そして対象がエーテリアスに限られるものの種類を把握することができるのが鄙の能力である。
鄙「…ざっと1分40秒と言ったところか」
討伐に掛かる時間を計算し終えると前屈みの姿勢となり、刀を鞘に収めたと同時に駆け出す。一番近場に存在するエーテリアスとの距離は約50mと遭遇するまで数秒も掛からない。
しばらくして薄暗い空間で緑色に発光するエーテリアスの集団を発見し、すぐさま攻撃の構えをとる。
鄙「曙流6式、疾風斬舞!!」
文字通り突風の如く速度で接近すると、氷上を踊るように舞いながら刀を薙ぎ、エーテリアスは身体を上下に両断される。速さに特化したこの技を食らったエーテリアスは攻撃されたことにも気づかず一体また一体と命脈を断っていき、その場に居た全ての個体を斬り伏せると残るはタナトス2体のみとなった。
鄙「(…?反応が消えた?どこに行っ…上か!?)」
直後、真上の虚空よりタナトス2体がなんの前触れなく現れると鄙の頭部目掛けて二撃の斬撃を放つ。
鄙「チィッ…!」
咄嗟に地面を勢いよく蹴って後ろへ飛び、なんとか間一髪で避ける。
鄙「…相変わらず卑怯な攻撃で苛立たせてくるな」
タナトス
近距離では連続テレポートと合わせて素早い斬撃を繰り出し、中遠距離では刃状のエーテル弾を絶え間なく射撃してくるという全距離に対応した攻撃手法を有しており、2体いると片方はテレポート斬撃、もう片方は援護射撃で攻撃してくるそのコンビネーションを相手が攻撃する隙を与えず永遠に繰り返してくるので非常に鬱陶しく厄介な敵だ。
自身の定める『イラつかせることに長けるウザい敵ランキング』で堂々の首位に輝くだけはある。
鄙「即斬即決、隙を与えずこの骸狩りをもって斬り捨てよう」
刃先を眼前のタナトスに向け構えを取ると、全ての感覚を研ぎ澄ます。
相手もこちらの動きを伺っているのかしばらく静止し、お互いが睨み合う沈黙した状況が数秒続いた後、先にタナトスが動き出した。
2体はほぼ同時に姿を消し、先程の失敗を帳消しにしようと再度奇襲を行おうとしたが、その試みは失敗に終わる。
鄙「もう一度同じ戦法で来るとは舐められたものだな。相手を甘く見すぎたのがお前達の敗因だ」
『Garaa!!??』
表情のないエーテリアスでもリアクションはするんだな。
その驚異的な聴力で出現場所をあらかじめ特定して先回りしていた鄙。人間を大きく越脱した動きに、タナトスは驚いた様子を僅かに見せる。
鄙「シュッ!!」
次の刹那ー何重もの斬撃が襲いかかり、文字通り細切れとなって瞬時に消滅する。
『Graaaaaaaa!!!!』
仲間が倒されたことで復讐に燃える残りの一体は身構えると、鄙が走る速度に少し劣る速さで猪の如く突進し、その鋭利な武器を地面に向かって振り下ろす。
しかし、それは鄙を捉えることはできず多量の土煙を巻き上げたのみであり、同時にタナトスの命運が決定した。
鄙「背中が疎かだぞ。喧嘩を吹っ掛ける相手が悪かったな」
ドシュッ!!
音もなく背後に回った鄙によってタナトスは胸部を刀で貫かれ、それが発する赤い炎によって全身を煉獄のごとく燃やされる。鋼鉄をも溶かすその高温に耐えきれず数秒で黒い焼却体と化し、地面に崩れ落ちると共に塵となって消えていく。
鄙「…状況終了」
小さく息を吐くと刀身に付着したホコリや塵ゴミを薙いで振り落とし、鞘にゆっくりと収める。
鄙「相変わらずタナトスとの戦闘は苦手だな…」
小さく息を吐き、長年続いている苦手の克服に苦慮する。
テレポート系の敵との戦闘では高い確率で先手を取られ対応が後手に回ってしまい、それは星見家の剣士としてあるまじき醜態だ。このことをもしも雅に知られたら間違いなく1週間漬けで対戦形式の修行だろうなぁ…
考えている拍子に待機している作業員達の存在を思い出し、咽頭型無線を使用して急いで連絡を取る。
鄙「こちら藤木です。エーテリアスの排除を完了しましたので入って来てもらっても大丈夫ですよ」
『え!?3分も経っていないのにもう終わったのですか!?』
鄙「まぁ元々数が少なかったですから、この程度は朝飯前ですよ」
『そ、そうですか。とりあえず分かりました。すぐに向かいますので合流位置の座標共有をお願いできますか?』
鄙「了解しました」
ポケットから取り出した端末を操作するとキャロットデータを送信し、合流の約束を交わすと連絡を終える。
タッタッタッタッ
鄙「ん…?」
静寂の中突然、走る足音と僅かな気配を背後に感じ振り返るが、ひたすら薄暗い空間があるのみで誰も居ない。
鄙「……気の所為か。湿度と雰囲気のせいで気味が悪い…早いところ合流するとしよう」
心なしか先程より温度が低く感じられ、不気味に思った鄙は早々にその場を後にする。
だが、この時の鄙は知らなかった。後に起こる面倒な厄介事に巻き込まれてしまうことを―
to be Continued…
二組タナトスがウザいのは、ゼンゼロ全ユーザー共通だと思います。皆さんは苦手な敵キャラは居ますでしょうか?
自分はもちろん、圧倒的にミアズマ・フィーンド一択です。
カニカマ美味しいさん、プリン8号さん、HANAMINAさんから☆9
メガネ閣下から☆8を頂きました!!皆さん高評価ありがとう御座います!!
著者のモチベーションにも繋がりますのでお気に入り登録、感想、そして評価をお待ちしております。もし誤字や脱字、文書の抜け等がありましたら報告をお願い致します。
それではグッバイ
鄙と雅を再開させるなら、どの章?
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2章 白祇重工編
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2章 間章 治安局編
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3章 ヴィクトリア家政編
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4章 カリュドーンの子編
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5章 対ホロウ6課編