全国各所が最高気温の記録を更新し、真夏日となっているこの頃。リリース予定のVer.2.1では魅力的な新キャラやイベントの数々が予定され、待ち遠しくて堪りません。そして変調では雅や柳の復刻が発表され、雅の完凸目指してポリクロー厶を死ぬ気でかき集めております。
皆さんは新キャラ、もしくは雅か柳か、誰を引くつもりでしょうか?変調での皆さんの健闘を祈ります。
それではどうぞ
時間とは儚いものである。
上層部より与えられた3日間の特別休暇は、これを満喫する前にあっという間に過ぎ去ってしまった。
今思えば、たった3日間で今まで蓄積していた疲労が全て取れる訳がなく、しかも勤務再開初日にいきなり書類作業を行う羽目になり早朝からそちらの対応に追われていた。
サクラ「うえぇぇん…全く終わらないですよ〜っ…」
ヒラノ「この量だと今日中には終わらないですね…」
決してそうなるまで放置していた訳ではなく、事務課のうっかりミスで戦闘救難室3課が処理する予定の書類を出し忘れ、数十日間溜まっていたのが惨状の要因となっている。
鄙「(これはもう事務課辞任案件だろ…あぁ今日は残業確定だな…)」
眠気対策の高濃縮ブラックコーヒーを頻繁に啜りながらペンを進めるが、視界の端に見えるやってもやっても終わりの見えない量の書類に内心嘆く。この作業を始めてから既に4時間が経過し、遂に手や手首の筋肉が悲鳴を上げ始めている。
カルロス「何か言いたげそうな顔だな。藤木隊員」
そこへ戦闘救難室の各課長が集う定例会議から帰ってきたカルロス課長が話しかけてくる。
鄙「事務課のうっかりで自分達が大変な目に遭っているんですから一言ぐらい物申したいですよ…それにしても今回の定例会議は長かったですね。何かあったのですか?」
カルロス「ん、あぁ…先日、本部へヴィジョン・コーポレーションから戦闘救難室の派遣要請があったそうだ」
ヴィジョン・コーポレーション…インフラの建設を担う大企業だな。TOPS入りを目指してあらゆる事業に参加している今話題の企業だが、なぜ調査協会に調査員派遣を求めるんだ?
鄙「そのヴィジョン・コーポレーションがなぜ戦闘救難室の派遣要請を?」
カルロス「詳しくは教えられていないのだが、ヴィジョンが請け負った旧都地下鉄の改修プロジェクトでホロウ内工事も含まれているので、警備と護衛として調査員を求めているらしい」
鄙「…でしたら調査協会以外にも適任の組織があるのでは?資金と人脈はTOPSに連なる企業に匹敵する会社なのですから、わざわざ協会に支援を求めなくてもいいのではと自分は思います」
戦闘救難室の任務はホロウで遭難した市民の救出、そしてエーテリアスの討伐であって企業の子守ではない。企業を信頼しない鄙は、自身の率直な意見をカルロスに言い伝える。
カルロス「その意見には同感だが、例のデッドエンドホロウで工事する以上、並の警備会社や調査員では不安があるのだろう」
名を聞いた途端、作業していた手が思わず止まる。
鄙「デッドエンドホロウで工事とは…正気の沙汰ではありませんね」
そのホロウの名称は調査協会内でもよく知られている。旧都付近のカンバス通りと新エリー都を繋ぐ地下鉄を飲み込んでその地に存在する、クリティホロウから分化した共生ホロウであり、特筆するような目新しい特性は有していない。
しかし、同ホロウには要警戒エーテリアスであるデッドエンドブッチャーの活動が確認されており、エース調査員でなければまず一般の調査員すら入ることを許されない、かなり危険度の高いホロウとなっている。
カルロス「今日はあまり景気が良くないからな。それで言うと、安定した経営を行うことができるTOPSに入るためどこの企業も必死なんだろう。まるで経済戦争だな」
皮肉っぽくセリフを吐き捨てる。
カルロス「それで本部は戦闘救難室の派遣を了承したわけなんだが、あいにくその日はどの部署も出払っていてな…俺とヒラノ隊員、そしてサクラ隊員も広報活動で不在だ」
鄙「広報活動…?自分、その話は聞いていませんが…」
カルロス「あぁ。藤木隊員には悪いが、今回の任務は1人で請け負ってほしい」
……はい?
鄙「あの待って下さい?1人だけ、ですか…?他の部署や治安局の支援なしでですか…?」
カルロス「そうだな。まぁ安心してくれ、出動手当はちゃんと出るらしい。しかも通常の2倍だそうだ」
そういう問題ではないんだよな……人が足りていないとはいえ、要警戒エーテリアスの居るホロウに単独で入れとは調査協会もいよいよ末期か…
だが、その程度で弱音を吐いては星見家の武士の名折れ。デッドエンドブッチャーだろうがなんだろうが、この骸狩りをもって一太刀で終わらせてしまおう。
鄙「カルロス課長。今回の任務、引き受けさせて頂きます。自分以外に要警戒エーテリアスに対抗できる人は居ないでしょうし、ついでにデッドエンドブッチャーを討伐して帰ってきますよ」
カルロス「それは頼もしいな。任務については明々後日を予定している。今回はよろしく頼んだ」
鄙「はい、任せて下さい」
こうして初の単独任務に励むことになった鄙だったが……
◇ ◇ ◇ 退勤後… ◇ ◇ ◇
鄙「あの時はそう言ったものの…やっぱり1人では厳しいかもなぁ…」
オレンジ色に光り輝いていた夕日が水平線に半分沈むまで傾き、町の街灯に明かりがカチカチと灯り始めた頃、六分街の街路を一人歩いていた鄙は呟く。
剣術では雅に次ぐ実力を有すると自負し、実際その言葉に間違いはないのだが、さすがに企業関係者を守りながら要警戒エーテリアスが活動するホロウで行動するのは正直不安がある。
カルロス課長達や他の部署の応援を受けれない以上、最低でも2名程度の協力者が必要であるがそんな都合よく現れるはずがない。
鄙「(最悪、ニコ達に手伝いをお願いするしかないか…)」
デッドエンドホロウがホロウレイダーからしてもかなり危険なエリアであることを、ニコは知らないはずはない。支援を要請すれば、高額な報酬を求められるのはほぼ確定と見るべきであった。
鄙「(金銭的にはまだまだ余裕があるとはいえ、今月はメロンを買い過ぎたので節約しないといけないからな…)」
ヴゥゥゥゥ…ヴゥゥゥゥ…
すると、ポケットに入れていたスマホから調査協会の解析部より着信があり、3回目のコールが鳴り終える前に電話に出る。
鄙「はい、戦闘救難室3課の藤木です」
『お疲れ様です。頼まれていた声紋サンプルの解析が終了しましたので、その報告の旨をお伝えします。解析結果は藤木さんのスマホに先程メール宛で送信しましたので、確認をお願い致します』
相手が言い終えると同時、一通のメールが届いたことを知らせる通知音が鳴った。
鄙「確認しました。自分の私用にも関わらず解析を行って下さり、ありがとう御座います」
『いえいえ、エース調査員である藤木さんの頼みを断る訳にはいきませんから。ではこれで失礼させて頂きます』
鄙「はい、お疲れ様です」
通話を終えると、届いたメールをタップし閲覧に必要な特定のパスワードを入力して解析結果を確認する。
鄙「(波形、周波数、音色、発話速度どれも8割以上の一致値を示し、合致率91.5%……やはりそうか…)」
疑いは確信へと変わった。
十四分街ホロウでニコ達と行動したあの時、同行していたパエトーンの声に聞き覚えがあったのだが、その正体がまさか近所のよく知る人物とは思いもよらなかった。
鄙「(さて…どうしたものか…)」
目の前にはその人物が営業するビデオ屋〈Random Play〉があるものの、もし仮に解析結果が正しければホロウ内の秩序を守る調査員として身柄を拘束しなければならない。
しかし、ここにやって来た頃から世話になっており、恩を仇で返したくはない…
中々決断できずに苦慮していると、そこに近付く街灯の灯りに照らされる一つの人影―
リン「やっほ〜久しぶり藤木さん。何か悩んでいる様子だけど、何かあった?」
その正体は、仕入れたのであろうビデオがたくさん入ったダンボール箱を抱えるリンだった。
鄙「あ、いや…なんでもない」
返答に困った鄙は、とりあえずリンに問題ないことを伝える。
リン「ほんと〜?まぁでも、考えすぎは良くないよ。ビデオでも借りて観て、頭の中をスッキリさせたらどうかな?」
鄙「…あぁ、じゃあそうさせてもらうかな。ついでに見終わったビデオを返しておきたい」
自然な流れで鄙は怪しまれることなく、ビデオ屋に入る口実ができた。
店の扉を開けたリンの後に続いてビデオ屋の中に入ると、カウンターで作業していたアキラと従業員ボンプのトワの姿が目に入る。
トワ『ンナナ!!(お帰りなさい!!)』
アキラ「お帰りリン。頼んでいた物は買ってきてくれたかい?」
リン「買ってはきたけど…お兄ちゃんって相変わらず渋い作品ばっか注文するよね……今度、こっそりホラーを買ってあげよっとー」
アキラ「おっと、聞き捨てならない単語が聞こえたな」
リン「なんのことやら〜?」
仲睦まじい兄妹のやり取りに、思わず笑みが溢れる。
こうしたジョークを交えた雑談を雅と是非してみたいが、雅だとジョークと分からずに真に受けてしまうだろうな。メロンの頭をした怪物が存在する旧文明の都市伝説を本気で信じ込んでいたし。
リン「それよりお兄ちゃん、藤木さんがビデオを返しに来たらしいよ」
アキラ「返却?期日は明日までのはずだったような…」
鄙「そうなんだが、予定より早く観終わってしまったので、早めに返却して次のビデオを見ようと思った所存だ」
適当な言葉で来訪理由を誤魔化す。
親友として見逃すか、調査員として身柄を拘束するかー2つの選択肢の間で未だに葛藤するが、遂に覚悟を決め二人へ問いを投げ掛ける。
鄙「…アキラ、リン。一つ尋ねて良いだろうか?」
リン「どうしたの藤木さん急に畏まっちゃって?」
鄙「……二人は、パエトーンなのか?」
発したその言葉に二人の動きが瞬間停止したかのようにピタリと止まり、数秒の沈黙が流れる。
リン「ぱ、ぱ、パエトーンだなんて!!藤木さんも冗談が上手いねー!ね、ねぇお兄ちゃん?」
アキラ「あぁそうとも。平凡なビデオ屋を営む僕らがそのような有名人物だとはありえないですよ。何かの間違いじゃないですか?」
リンのその分かり易いリアクションはともかく…アキラの方は完全に否定しているか…まぁ自身の正体をそう簡単に明かす者なんてそうそう居ないので、当然の対応と言える。
鄙「そうか…」
ポケットからスマホを取り出すと画面をアキラとリンの二人に向け、そこに映る音紋分析の解析結果を見せる。
鄙「勝手ながら前回、リンの音紋データをこっそり取らせてもらいパエトーンのものと照合させてもらった。最初は何かの冗談かと思ったが…ここまで一致していると信じざるを得ない」
アキラ「………」
リン「………」
話をしている間、二人は一言も喋らず警戒心を露わにした眼差しで自身を見つめている。
鄙「安心してくれ、二人を逮捕するつもりは更々無い。だから本当のことを言って欲しい。互いを信頼している唯一無二の親友として」
ただ真実を知りたいがためだけの敵意の無いその言葉がアキラとリンに届いたのか、二人は渋々ながら自身の正体を明かす。
アキラ「…藤木さんの仰る通り、僕達の正体は巷で伝説のプロキシと言われている"パエトーン"です」
リン「今まで隠しててごめんなさい…その、藤木さんは調査員だから私達がパエトーンであることを言うわけにはいかなくって…」
鄙「調査員である自分に対して二人の対応は当然のことだ。…しかし、身近で接していた二人の正体がパエトーンだったのは度肝を抜かれたな。まさに灯台下暗しだ」
アキラ「僕からしても、まさか音紋データだけで特定されるなんて思いもしなかったですよ」
リン「いやー本当にびっくりした…今も心臓がバクバクだよ…」
話を交わしているうちに普段通りの雰囲気へと戻り始め、アキラとリンの二人も緊張が解ける。
鄙「さてと…用件は済んだので、これで帰らせてもらう」
リン「えっ?用件って、パエトーンかどうか確かめに来ただけってこと?」
鄙「?そうだが…?」
彼女の問いに困惑しつつ返答を返す。
アキラ「僕はてっきり、口止め料を要求されるのかと思っていたのですが…」
口止め料って暴力団かよ…こっちは一応調査員だぞ?そんなことしてたら市民に対する恐喝罪で一発退職処分どころか治安局のお世話になってしまう。
そんなしょうもないことで捕まってしまったら、雅や天国の母さんに顔向けできない。
鄙「そんな鬼畜なことはしないさ。アキラ達の正体を知ることができた時点で、それ以上のことを求めることはしない」
その言葉を聞いたリンは、深くため息をつき安堵した表情を見せる。
リン「良かったぁ〜これ以上支出が増えちゃったら気絶していたかも…」
アキラ「まぁそれでも、しばらくは節約生活を余儀なくされるけどね。全くFairyの電気の過剰使用には呆れてしまうよ」
鄙「Fairy?」
リン「あっ、こっちの話だから気にしないで!それより藤木さん、最近入荷した面白いビデオがあるけど借りていく?」
鄙「ん…あぁ。じゃあしばらく借りさせて貰おうかな」
パエトーンであること以外にまだ秘密がありそうな反応だったが、二人の事情にこれ以上踏み行ってはいけないとそう感じた鄙は追求を止める。
アキラ「もしよければ家で観ていきますか?この後、リンと一緒に観る予定だったんです。お供にメロン味のポップコーンもありますよ」
鄙「(メロン味のポップコーン…!)それは断る理由はないな」
リン「藤木さんは相変わらずメロン関連の食べ物には目がないね…けど今夜の鑑賞会は楽しくなりそうだね!」
伝説のプロキシと星見家の剣士、一見なんの関わりもない双方の出会いによって、新エリー都の物語が大きく動き出す瞬間であった。
彼らの行き着く先は希望か、はたまた絶望か、それは誰にも分からない――
to be continued…
soraaaaaさん、夢無き庭園の管理人さん、shio0831さん、Hahahatorinikuさん、白厨さん、ゾロスターさん、yuzupon_hamburgさんから☆9を頂きました!!皆さん高評価ありがとう御座います!!
仕事の関係上、更新期間が1ヶ月以上となることが多いですが、なるべく早く次回を投稿できるようこれからも努めていきたい所存です。
著者のモチベーションにも繋がりますのでお気に入り登録、感想、そして評価をお待ちしております。
もし誤字や脱字、文書の抜け等がありましたら報告をお願い致します。
それではグッバイ
鄙と雅を再開させるなら、どの章?
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2章 白祇重工編
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2章 間章 治安局編
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3章 ヴィクトリア家政編
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4章 カリュドーンの子編
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5章 対ホロウ6課編