難しい、難しいなぁ~。皆さんは、どちらの方が好きですかね?
戦いは数だとよく聞くが、雑多な兵では精鋭には叶わない。絶対の1を雑兵で倒せるのであれば、特色なんて生まれていないのだ。
――戦闘開始から3時間程経過した頃、
(キーンコーンカーンコーン)
チャイムの音が鳴り響く。先程まで銃を構えていたアルバイトたちは、一斉に腕時計を確認した。
「……あ、定時だ」
「今日の日当だとここまでだね。あとは自分たちで何とかして。みんな、帰るよ~」
「は、はぁ!? ちょ、ちょっと待ってよ!!」
「……マジか?」
定時って……。……え、時間になったら戦闘中でも切り上げるのか? 自由すぎるだろ……。
「凄いな、定時になったら戦闘中断するって……。これがキヴォトスの常識なのか?」
「そんな訳ないでしょ!」
便利屋社長の声が届いていないのか、アルバイトたちは弾倉を抜き、帰り支度を始めていた。
「終わったってさ」
「帰りに蕎麦屋でも寄ってく?」
「こらーーー!! ちょっ、どういうことよ!? ちょっと! 帰っちゃダメ!!」
「……」
「こりゃヤバイね。まさかこの時間まで決着がつかないなんて……。……アルちゃん? どうする? 逃げる?」
「あ……うぅ……。…………こ、これで終わったと思わないことね! アビドス!」
「あはは、アルちゃん、完全に三流悪役のセリフじゃんそれ」
「うるさい! 逃げ……じゃなくて、退却するわ……よ……」
「否定。撤退は推奨されていない」
変声機を通したような声が響く。どこから現れたのか、人の形をした機械の塊は、いつの間にか便利屋68の側にいた。
「……!? あ、赤の便利屋……」
「肯定。……便利屋68、雇い主からの伝言を伝える。……デモンストレーションにしては良い働きだった。次の本番を期待している」
「で、でもんすとれーしょん?」
「……」
「……あー、そう! そうなのよ! 次が本番よ!」
★★★★★
「嘘だろ……?」
なんで、なんでアイツがこの世界に居やがる……!
「代理人~? どうしたの?」
「…………小鳥遊」
ダメだダメだダメだダメだダメだ
「……今すぐ、全員連れて逃げろ」
「…………えっ。…………な、なに言ってるの?」
アイツは、……便利屋は、……裏路地のゴミ屑は、
――こんな平和な世界に居てはいけない
「……ッ、赤の、便利屋ッ!」
――デュランダル
俺が一番信頼できる武器。……最速で、最短で、瞬きする隙すら与えず殺す。
「疑問。お前は誰だ?」
ローランが振るったデュランダルは、赤の便利屋の
「代理人!? ちょっと、何やってんのよ!」
「ん、どうしたの代理人?」
「ちょっとちょっと、お兄さん何やってるの~!?」
「……?」
"だ、代理人?"
「何で……っ、何で裏路地のゴミ屑がっ、……キヴォトスにいるんだ!」
「……裏路地? ……それって、代理人の話にあった……」
「もしかして……、この人もキヴォトスの外から来たってことですか……?」
鍔迫り合いとなったブレードを押し退け、二撃目を振り下ろしたが、それよりも速く動いた便利屋によって躱されてしまう。咄嗟に距離を取られたローランは、即座にロジックアトリエの二丁拳銃を構えた。
「驚愕。……まさか、同郷の者がこの世界にいるとは」
「……」
「不明。依頼故、翼の企業であるL社を襲撃し、肉体の死亡を感じた瞬間、気づけばこの世界に居た」
「……だったら、もう一度殺してやる」
「追想。……その武器にその姿。行動の瞬間まで観測することの出来ないその手袋」
「……」
「お前、特色の黒い沈黙か?」
勘の良さは健在か。…………。
「赤の便利屋。……お前は、この世界で何人殺した?」
……頼む。こんなにも平和な世界なんだ。……誰も殺さないでいてくれ。
「疑問。黒い沈黙は、殺した数をトロフィーにする趣味でもあるのか?」
……。
「……ッ。……答えろッ!」
「回答。殺しの数をトロフィーにする趣味はないが、50は超えているだろう」
(ダンッ! ダンッ!)
2発の銃弾が、赤の便利屋目掛けて飛んでいく。幾ら赤の便利屋と言えど、都市の工房で作られた銃弾には反応できなかったのか、銃弾に両腕を貫かれた。
「お前だけは、ここで殺す!」
二丁拳銃を手袋に仕舞い、即座に散弾銃を取り出す。一瞬の間に行われた技術に、周りの生徒たちは目を見開いたが……
――赤の便利屋だけは、即座に対応した。
右手から生やしていた深紅色のブレードを収納し、代わりに散弾を発砲、……ローランの放った散弾銃の弾丸と相殺させた。
「不詳。……何故怒りを顕にする? あの世界でお前が殺した数など、100や200じゃ済まないだろう?」
「……黙れ」
散弾銃を収納し、身の丈以上のサイズを誇る
「……お前と一緒にするな」
刺し貫いた円錐状の槍をそのままに、
「ジッ……、…ど……どう、……ざい。……同罪。…お前も、薄汚い裏路地の、ゴミ屑……だろう…」
右腕を切り飛ばされ、胴体を貫かれた赤の便利屋は、……自身の左腕にエネルギーを収束し、一束の光線として解き放つ。
「……ッ! 違う! ……俺は、お前とは違う!」
ローランは自身に向けて放たれた光線を、……避けることができなかった。
……自身の背後には、都市とは何も関係の無い子供や先生が居る。
……もし避けてしまえば、背後に居るみんなは、焼き払われることだろう。
……だからローランは、
――取り出した
圧倒的な力をぶつけられた光線は、光の軌道を変え霧散し、昼間の空に虹を描く。
「……否定。また一つ……、死体の山を、……築き、……上げた、な……」
「……地獄で喚いてろ」
赤の便利屋は、最後のエネルギーを収束し、光線を放とうとするも…………
――それより速く、取り出した
解放寸前まで貯めたエネルギーは行き場を失い、赤の便利屋の内部にて爆散。
――自身の血で作られた海の上で、点滅するモノアイの光を消失させながら、赤の便利屋は仰向けに倒れた。
「……裏路地のゴミ屑が、この世界を歩くな」
服の袖で顔に飛び跳ねた血を拭う。あたりに漂うのは、夥しい程の血の香りと死臭。
……周りの惨状に、目を見開く便利屋68の面々とアビドスの生徒たち、
――それと何故か、幼い子供の様に目を輝かせている、……便利屋68の社長がいた。
赤の便利屋。
L社に襲撃なんかせず、都市で生活していれば、赤い霧に次ぐ特色の赤になれたかも…………、いや無理か。
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