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「描きはじめ」の頃の私を形作った人たち

今回は、絵も漫画の「描きはじめ」の、10代までの私を形作った人たちについて振り返ろうと思う。長いです。(5000字程度) 

※読みやすさ重視のため、各項目は敬称を省略しています。

1.今野隼史(イラストレーター)

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『七人の武器屋』 画像引用元:amazon

私の絵、そして創作の原点と言える方だと思う。

出会いは2000年代頭(なので、私が小学校に上がって間もない頃)、ネットではフリーゲームが盛り上がっていた。そんな中で私がドハマりしたゲームの一つが『今の風を感じて』。今野先生はそのイラストを担当されていたのだが、いわゆるツクール系のゲームでは信じられない程「挿絵」が導入されていて、度肝を抜かれた。現代のゲームでは当たり前のような要素だが、当時はとても斬新だったのだ。

公式サイトの「辺境紳士社交場」のギャラリー(※)を見ていただくと一目瞭然、色彩もモチーフも重力感もまさに「縦横無尽」に描かれていて、本当に本当に絵が楽しい。絵の楽しさをこんなに感じる作家も中々いないと思う。
※ギャラリーはいくつかあるが、私が10代で特に影響を受けたのは「Old Gallery」に掲載されている作品である。
(サイト内リンク自由とのことで、お言葉に甘えさせていただきました🙇‍♀️)

絵のノウハウのノの字もないような幼い私は、夢中で今野先生のイラストを模写したり、作風を真似したりして絵を描いた。「この色の隣にこの色を置くと面白いのか」「濃淡を付けると奥行が出るんだな」「この色使ったことない!」というようなことを、一枚の絵から次々と発見していった記憶がある。

今野先生は同人活動もされていて、その創作への姿勢もビシバシ影響を受けている。中でも「353個のリクエストに一枚10~90分くらいのらくがきで応える」という同人誌シリーズ「FAPR」があるのだが、ありとあらゆる構図と躍動感のあるポーズ、表情が納められていて凄まじい。[公式サイト]に再録されているのでぜひ、ぜひ見て欲しい。この境地にいつか達してみたい……。

ちなみに、私の描くキャラクターのおまんじゅうのような輪郭は、完全に今野先生のSDキャラ(かわいい)の描き方から影響を受けている。

2.田中政志(漫画家)

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『ゴン』 画像引用元:講談社

私の漫画体験の原点、漫画絵の描き方を初めて意識したきっかけとなった作家である。

代表作『ゴン』との出会いは私が小学校に上がる前、コッソリ忍び込んだ兄の部屋で勝手に読んだのがきっかけだった。

とにかく絵が凄まじく上手い。代表作の『ゴン』は、恐竜のゴンが大自然の中でマイペースに生活する日常系(?)で、動物の表情と動きの表現、精緻な背景、そして大胆なコマ割りでとても面白く読ませてくれる。迫力たっぷりで、ページをめくりながら驚いてしまう。ちなみに台詞がないサイレント漫画なので、幼い私がハマったのも頷ける。

もちろん『ゴン』ももれなくお絵描き(模写)の対象になった。…が、線が多すぎてものすごく大変だった思い出がある。

3.真下慶治(画家)

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『雪の河畔』 画像引用元:最上川美術館・真下慶治記念館
枝に積もった雪の白と、空の白の色使いが素晴らしい。
雪の青白さと、水位が上がった最上川の濁りが際立っている。

真下慶治(ましも けいじ 1914-93)は、山形県の戸沢村に生まれ、上京、文化学院などでの修行ののち、帰省後に「最上川」を永遠のテーマとし制作し続けた画家である。

私が高校生時代、様々な著名な画家の鮮やかな色使いを真似して、デッサンや制作に励んでいた頃だった。どこかの施設に飾られていた真下作品を見つけたことが出会いだったと思うのだが、大変な衝撃だった。そもそもその頃日本人の画家の知識がまるで無かったのだが、自分にとって見慣れた(日本の)景色を、素直に・こんなにも感動たっぷりに描く画家を初めて知ったからだった。

それから私は真下の作品を熱心に見るようになったものの、受けた影響が表(作品)に現れ始めたのはなぜか大学卒業後に上京したあとだった。山形を離れた私は、逆に山形で見た風景を題材にイラストを描くようになっていったのだが、その時に精神的にも技法的にもお手本にしたのが真下だったのだ。

4.Pixel(ゲームクリエイター)

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『洞窟物語』 画像引用元:窓の杜

Pixelさんに受けた影響の歴史を語り出すと長くなる。遡ると、フリーゲーム『いかちゃん』を遊んだ所から始まる。ゲームボーイのゲームばかり遊んでいた私は、子ども心ながらにその浮遊感ある操作性に感動したし、海底の生き物たちの閉ざされた世界に興奮した。公式サイトを覗くと、なにやら洞窟を舞台にしたゲームを開発中とのこと。(緑色のクォートの画像が載っていた記憶がある。)『洞窟物語』リリース後すぐ遊んでみると、ぶっ飛ぶぐらい面白かった。毎日親に椅子から剝がされるまで遊んだ。

このゲームの最大の魅力は武器強化の自由度の高さだと思ってて…とゲーム性を語り出すとキリがないが、ここはやはりそのドット絵と世界観にシビれた話をしたい。前者については「タマゴ回廊」のタマゴが顕著なのだが、光源が明確でリアル寄りなタマゴと、デフォルメが効いている他のブロックの描き分けが効果的でとても好きな描写だ。後者については、とにかく「キャラクターも世界観もかわいくて愛おしいが、底知れない」ことに尽きる。私は洞窟物語のラストダンジョン「血塗られた聖域」が大好きなのだが(数えきれないほど周回した)、敵クリーチャーとして天使(?)が出てきたのを初めて見た時は、キャラの可愛さと世界観の底知れなさを同時に感じてゾッとした。

ゲームの他にも、イラストや漫画作品の虜にもなった。特に代表的なキャラクターである「アメさん」がかわいすぎて心酔した。私のケモノ趣味の源流は間違いなくアメさんにある。音楽も大好きで、ゲームのサントラとして聴く事もあれば、気持ちを音楽に載せながらお絵描きしたこともある。Pixelさんが配布してダウンロードしたあらゆるコンテンツが、20年以上経った今でも宝物である。

5.弐瓶勉(漫画家)

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『NOiSE』 画像引用元:amazon

弐瓶勉先生との出会いもまた、忍び込んだ兄の部屋でだった。

明確な思い出なのだが、小6の夏、冷房も電気もついてない兄の部屋に忍び込んだ時、目に入ったのが『NOiSE』だった。なんとなく手に取って読み始めてからその内容、特に世界観が衝撃的すぎて、釘付けで立ち尽くしたまま読み終わった。読み終わった後は部屋の外が真っ暗になっていた。

私は弐瓶先生の作品の中でも特に、『NOiSE』~『バイオメガ』初期の作風が極めて好きなのだが、それはやはり小さい頃に熱心に模写したからだと思う。受けた影響は計り知れないが、今でも画面を黒っぽくしたくなる時に弐瓶先生を思い出す。

6.huke(イラストレーター)

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『BLK』 画像引用元:amazon

作家仲間に「zinbeiさんの目の描き方ってどこから来てるの?」と聞かれたことがあるのだが、根っこにあるのは間違いなくhukeさんの作風だと思う。

思春期に『ブラック★ロックシューター』に触れた絵描きの方に特に共感してもらえると思うのだが、hukeさんの筆致やテクスチャの使い方はあまりにも格好良すぎて、脳が焼かれるような感覚がした。高校生当時の制作は一時期もはやhukeさんの真似事しかできなくなっていた。

実はhukeさんがコミケで販売していた同人誌も何冊か購入していて、「こんな素晴らしいカラーイラスト本が作れたらなあ…」と今でも読み返す。(なんとB4サイズの大きいイラスト本があり、迫力たっぷりでカッコイイ。最高のイラスト本の1つだと思っている。)

7.派手な看護婦(漫画家)

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『団地魔女』 画像引用元:amazon

私が創作同人誌即売会「コミティア」に初参加したのは高校生の頃なのだが、知り合いのサークル以外なんの情報もなくほっつき歩いてる時、見かけた人だかりに引き寄せられ買った本が、同人サークル「SF研究会」の『樹海』だった。

今読み返しても本当に面白い。私はコミティアの作品(というか自主制作作品全般)の好きな要素の一つに「設計されすぎていない『ゆらぎ』や『あそび』があるところ」「プロダクトというより『表現そのもの』が前面に出ているところ」があるのだが、それの結晶のような作品群だ。

当時の私は中でも派手な看護婦先生の作品に影響を受けた。少年誌的でかわいい絵柄と、確かな画力、描き分けられた湿度と質感、予想を裏切って行く展開と、当時の私にとってあまりにも新鮮で眩しかった。もちろん当時描いていた漫画やイラストにものすごく影響が出た。今でもはでかん先生の漫画を読むと、「漫画ってもっと自由に・好きな物を描いて良いかも…」と前向きな気持ちになり、本を置いてなにか描きたくなってくる。

8.ピエール・エ・ジル(画家)

高校生時代、誰か(おそらく兄)からポストカードをもらったのがこの作家を知ったきっかけだった。

ピエール・エ・ジルは2人組のアーティストで、独自のセットやコスチュームをもって、綿密に撮られた写真を元に作品を制作している。

高校生当時、私は自分の制作において「見たままを描くこと」と「空想の世界を描くこと」の中間のグラデーションがまるでなかった(というより、思い至っていなかった)のだが、この作家との出会いがきっかけで初めて「脚色」という概念が生まれたと思う。スナップ写真風というより、スタジオ撮影のような「準備して構成した写真」のようなイラストを描きたいとき、私は今でもこの作家の作品をたくさん観る。

9.うすた京介(漫画家)

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『チクサクコール』 画像引用元:amazon

うすた先生の漫画は『すごいよ!マサルさん』から入り、『チクサクコール』『武士沢レシーブ』『ピューと吹く!ジャガー』と親しんできた。もちろん爆笑しながら愛読していたのだが、その傍らで、先生の作品本編や表紙絵に漂う情緒と画力に毎回感動していた。私が描きたい「神秘」と「愛嬌」という具材が、最高級のギャグと生活感という調味料でものすごく美味しく味付けされているような感覚だ。(?)

うすた先生の作品に触れたことがきっかけで「現実世界っぽいけど不条理」の魅力を知り、イラストなどでそういうモチーフを扱うことへの恐れが無くなったと思う。あと、うすた先生の作品ももれなく、他の先生に引けを取らないくらい模写した。漫画家としてもイラストレーターとしても、今も憧れている。

10.佐々木倫子(漫画家)

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『動物のお医者さん』 画像引用元:amazon
新装版の書影初めて見たけど、表紙の絵があまりにも良すぎる。

佐々木先生は今まで挙げた作家の中でもちょっと特殊で、絵的な影響というよりは、どちらかというとキャラクターたち・動物たちの内面にものすごく影響を受けた気がする。

特に描き文字でよく喋る動物たちには、今の自分の世界観が形作られるほど影響を受けた。『動物のお医者さん』を読んだのは小学校も低学年の頃だが、この漫画のおかげで「動物にも感情(喜怒哀楽)がある」と思え、当時好き勝手にべたべた触っていた飼い猫(今思うと可哀そうなことをした)のことを大事にするようになった。他の動物と会っても、聞こえないだけで動物たちが何か話している気がして、想像の世界が膨らんだ記憶がある。

もちろん人間のキャラクター達も魅力的だった。ハムテルや二階堂、菱沼さんのような友達が欲しくなったし、学校に漆原教授みたいな先生がいたら面白いかもと思った。知的でユーモアがあって、妙に生活感のあるキャラクター達に惹かれたんだと思う。なにより彼らはとても朗らかで、ああいう風に生きれたらどんなに素敵だろうと今でも思う。のちに『おたんこナース』も読んだのだが、母が看護師だったのもあり、病院のリアルな景色が知れて楽しかった。なんというか全体的に作風が「お茶目」で、読んだ後に世界が少し明るく見える。

さいごに

20代に関しては影響を受けた人は倍くらいいるのだが、10代のスポンジみたいな時期に、この素晴らしい作家たちから受けた影響は計り知れない。私の今に続く世界観を完全に形作っているし、今でも作品たちを読み返しては新鮮な発見がある。私も誰かにとってそんな作家になれたら良いなと思う。

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コメント

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okay!桐たんす

画家二方と派手な看護婦さんを除き、殆ど通ってきてる。 こりゃ惹かれるわけだわ。

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shog01

とても面白かったです!二十代編も読みたい!

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zinbei いいね
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zinbei

ありがとうございます!すごくうれしいです。 20代編は……絞り切れたら書きます!笑

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