来年度に赤字になるかも…熊本大、物価高で厳しい運営 授業料は据え置き方針 施設整備、改修で寄付呼びかけ
物価の高騰や人件費の上昇を背景に各地の国立大が相次ぎ授業料の値上げに踏み切る中、熊本大も厳しい大学運営を迫られている。現時点で授業料の値上げはしない方針で、在学生の保護者らに対して、施設整備や改修のため緊急的な寄付の呼びかけを始めた。まずは「年内に1億円」を目標としている。
「物価高騰による財政の圧迫で教育環境の改善ができなくなっている。付属病院を除く事業活動収支は、来年度に赤字になるかもしれない」。11月11日夜、熊本大であった学生らとの意見交換会で、黒沼一郎理事が危機感をあらわにした。寄付金の使途として挙げたのは、Wi-Fi環境の充実やトイレの改修、クラウドサービスの無償提供など。いずれも、財務状況が逼迫[ひっぱく]して先送りにしてきた項目という。
大学によると、各学部の運営に必要な研究経費、人件費、一般管理費といった業務費用(病院事業、共同研究の直接経費などを除く)は2024年度、220億8千万円。20年度と比べると水道光熱費が2億円、清掃や警備などの委託費が1・8億円増えた。一方で備品や修繕費は1・1億~1・5億円減となった。
04年度の国立大学法人化以降、国は大学経営の柱となる運営費交付金を段階的に縮小してきた。熊本大は企業との共同研究や施設の命名権(ネーミングライツ)募集に取り組み、それぞれ1億円程度収入を増やしたが、費用の増加に追い付いていない。しわ寄せは研究経費にも及び、25年度予算の1・9億円は20年度から4千万円減となった。
こうした状況で先延ばしになっているのが、施設の整備や修繕だ。食堂や売店が入り、文化系サークルの活動場所でもある同大黒髪北地区の学生会館は1965年の建設で老朽化が著しい。吹奏楽部などが使う2階大ホールは雨漏りしているが、大学が約11億円と見積もる改修のめどは立っていない。熊本地震後、一斉に復旧、導入した設備の更新時期も控える。
2024年度の業務収益は225億円で4・2億円の利益を確保した。利益は基本的に貯蓄に当たる目的積立金に回されるが、今後は残高が24年度末の約36億円から26年度末に約8億円に減る可能性があり、楽観はできないという。
国立大の授業料は文部科学省令で標準額(53万5800円)が定められ、大学の判断で2割まで増額できる。熊本大は05年度から標準額を維持しているが、東京大が25年度から約10万7千円引き上げ、64万2960円とした。山口大や埼玉大、名古屋工大も値上げを表明している。
熊本大は「現在の授業料でどこまでやることができるかを考える」とした上で、「仮に値上げをする場合も学生らとの議論は欠かさない」と強調する。
文学部3年の女子学生(21)は「大学院に進学した友人が、奨学金を受けられなかったため、やめてしまった。授業料は、学生本人の負担状況や家庭の事情も踏まえて検討してほしい」と要望した。(上野史央里、横川千夏)
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