「最古の日本人」にロマンをかき立てられた。発掘の様子が先月公開された廿日市市の冠遺跡。地中深く埋まっていた石器の年代測定で、人類が日本列島に移り住んだ時期が通説より4千年も早まったとされる▲なぜこんな山奥で―と思いかけて合点した。今から42千年も前の旧石器時代。木の実や獣の肉といった山の幸が生活に不可欠だったはずだ。石器はそれを豊かにしてくれたのだろう▲かつて人類の祖先の「日本到着」は60万年以上も昔と考えられていた。ある研究家が自ら石器を埋め、次々と「世紀の発見」をでっち上げたせいで。25年前に暴かれた考古学界最悪のトラウマだ。少しでも癒えるなら冠遺跡の功績は大きい▲目の届かぬ地中での捏造(ねつぞう)はたちが悪い。大阪の国有地を森友学園に売却した際、値引きの根拠としてはじいた2万トンの埋蔵ごみ。実際の量は4分の1だったことが分かった。2億円も不当に安売りされた可能性がある▲当時の首相と妻への「忖度(そんたく)」が疑われ、公文書改ざんの末に自殺者まで出た。混迷を深める政局は見通せないが、誰が政権を握っても頰かむりは許されまい。古代ならぬ、10年ほど前の出来事だ。真相を掘り起こさねば。