経営ビザで中国系「ペーパー会社」大阪で乱立、移民ビジネスの仕組み…500社超で「取締役」の日本側協力者も
陳さんは「小さな会社で働きたいと希望する人は少ないと思う」と考えつつも、「事業がある程度成長したら、採用活動を行いたい」と前を向こうとしている。
■「後出しじゃんけん」…帰国や駆け込み申請も
「経営・管理ビザ取得のハードルは確かに低かったが、今回の要件変更はあまりにも唐突すぎる。後出しじゃんけんにならないよう、すでに入国している人には旧要件を適用すべきだ」。元入管職員の行政書士・木下洋一さんは、そう指摘する。
取得要件の見直しで資本金が「500万円以上」から「3000万円以上」に引き上げられ、1人以上の常勤職員の雇用が必須とされたほか、経歴や学歴、日本語能力の要件が追加された。すでに入国している場合も、今回の見直しから3年が過ぎた後にビザを更新する際には厳格化した要件が適用される。
厳格化を受け、帰国する人もいる。大阪市福島区の行政書士事務所「イーストリーガルオフィス」には、厳格化の要件が公表された10月10日からの数日間で、7人から「会社を閉めて年内に中国に帰る」と連絡があった。常勤職員を新規雇用して事業を続けるメリットが感じられず、様子を見るために一度帰国するケースが目立つという。
大学卒業後に起業を志す留学生にも影響を与えている。京都府内の大学に留学する大阪市在住の王暁さん(23)(男性、仮名)は8月下旬、留学ビザから経営・管理ビザへの変更申請を求め、厳格化前に大阪市中央区の行政書士法人「大阪国際法務事務所」に駆け込んだ。厳格化後の要件を満たすのは難しく、学歴も「今さらどうにもならない」と考えたからだ。9月末にビザ変更を入管に申請した。
■中国系法人5棟に677社、中国人続々来日
経営・管理ビザの取得要件だった資本金500万円以上は、他国に比べて安く、家族帯同が可能なことから移住の手段として利用が進んだ。経済状況の悪化などで中国から日本に移住する人が増え、同ビザで在留する中国人は昨年、過去最多の2万1740人に上った。
問題となるのは、移住目的のペーパー会社設立が目立つことだ。読売新聞と阪南大の松村嘉久教授の共同調査では、大阪市内の五つの築古物件に、2022年から今年9月中旬までにペーパー会社と疑われる中国系法人計677社が登記していることがわかった。うち、666社(98・4%)の資本金の額は「500万円」で、厳格化前に必要とされていた資本金と同額。法人は代表が中国にいながら設立され、3年間で583人が日本に住所を移していた。