経営ビザで中国系「ペーパー会社」大阪で乱立、移民ビジネスの仕組み…500社超で「取締役」の日本側協力者も
調査は、松村教授が法人登記簿などから抽出した市内の中国系法人9660社のうち、多くの法人が集まる上位5棟を読売新聞が分析した。主に来日前の代表の住所が中国にある法人を中国系法人とした。
■113社入るビルに人影なく
大阪市内で多くの中国系法人が集まる上位5棟の物件のうち、大正区の住宅街にある4階建てビルでは9月上旬の時点で113社が本社を置く。4~10月に読売新聞の記者が何度も訪ねたが、入り口は閉鎖され、人の出入りは見られなかった。ビル所有者の中国人男性は「特区民泊用に約50室を30室に改装した」が、コロナ禍で利用者がいなくなり、2022年に中国系法人にビル1棟を貸した。「今はどう使われているか知らない」
5棟はいずれも築30年以上で、部屋数は大半が数十室。1部屋を分割して登記する部屋もあった。大阪市東成区の築35年の8階建てマンションには、22年以降133社が登記され、9月時点で69社が本社を置く。64社はすでに別の場所に移転。空いた部屋には新たな法人が登記されており、物件が使い回されている状況が浮かぶ。5棟に登記されている複数の法人の代表に取材を試みたが、事務所は不在で、登記簿上の住所地を訪ねても居住確認できなかった。
入管の審査は書面審査が中心で、現場で確認すれば事業が行われているか疑われるような事業所が多く見逃されてきた可能性が高い。
■日本側の協力者 報酬は「ビザ申請で15万~20万円」
法人登記簿の分析を進めると、100社以上に「取締役」として名を連ねる人物が複数いることがわかってきた。そのうちの一人で、「日本側の協力者」という田中勇介氏(仮名)が読売新聞の取材に応じ、移住の仕組みを明かした。
「日本への移住を希望する中国人が現れると、仲介者から連絡が入り、まもなく500万円が海外から送金されてくる」。この500万円が法人登記に必要な資本金となる。入金が確認できたら、司法書士がその中国人と田中氏を「取締役」として、法人登記する。次は行政書士が経営・管理ビザの申請書類を作成するという流れだ。「中国人が来日したら取締役を退き、事業に関わることはない」