組織に接近、取り込まれて「癒着」 警視庁警部補を再逮捕 経験豊富、最前線で捜査も
産経ニュース12/3(水)22:15
国内最大規模のスカウトグループ「ナチュラル」に捜査用カメラの画像を提供したなどとして、警視庁暴力団対策課の警部補が逮捕された事件で、カメラの設置場所のリストも漏洩(ろうえい)していたとして、警視庁は3日、地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで、同庁警部補の神保大輔容疑者(43)を再逮捕した。認否を明らかにしていない。
カメラの設置場所リスト提供
再逮捕容疑は7月下旬、捜査のためにメンバーの関係先など20カ所以上に設置したカメラの場所などをまとめたリストをグループ側に提供したとしている。
警視庁によると、神保容疑者は4月、課内の配置換えでナチュラルの捜査から外れていたが、貸与されたパソコンから捜査情報にアクセスする権限があり、閲覧してリストを作成。ナチュラルが組織内の連絡などに使うため、独自に開発した特殊なスマートフォンアプリで伝えていた。
神保容疑者は4〜5月に捜査用カメラの画像をグループ側に提供したとして逮捕されていた。警視庁は容疑者宅から現金900万円を押収し、事件との関連を調べている。
家宅捜索で消えた2人の幹部
現職の警視庁警部補による捜査情報漏洩事件が起きた。警察が壊滅に総力を挙げる「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の捜査に影響した可能性も指摘され、国会質問になるなど波紋が広がった。犯罪に最前線で対峙(たいじ)していた警部補はなぜ、寝返ったのか。
「探せ!」
今年1月、全国数十カ所で行われたスカウトグループ「ナチュラル」の家宅捜索。警視庁などは職業安定法違反容疑で男2人を逮捕したが、一部の幹部が姿を消していた。情報が抜けているのではないか−。報告を受けた警視庁の捜査幹部は激怒していたという。
それから約10カ月後、内部の人間による情報漏洩事件が明らかとなった。逮捕された神保容疑者は組織犯罪捜査の経験が豊富で、ナチュラルの事件でも最前線で捜査に当たっていた。「裏切り」ともいえる行為に、同僚の捜査員らにも衝撃と落胆が広がったという。
問題は国会にも波及した。11月13日の参院予算委員会で、事件への認識を問われた赤間二郎国家公安委員長は「国民の信頼を損なうものであり、言語道断であり、極めて遺憾だ」と断じた。
担当外れも情報にアクセス
警部補を取り込んだナチュラルは平成21年ごろから活動し、全国で1500人程度が在籍。違法なスカウト活動に加え、暴力団と乱闘騒ぎを起こしたり、別の暴力団に「みかじめ料」を払ったりするなど、反社会的勢力との密接な関わりも浮かび上がっている。
こうした異質なグループの捜査の中核を担っていたのが、組織犯罪捜査にたけた警視庁の暴力団対策課だった。組織犯罪捜査では、必要な情報を得るために組織内部の人間に近づく場面もあるとされるが、相手に取り込まれないバランス感覚が求められる。警察関係者は「判断を個人に委ねず、組織で対応するなど癒着を防ぐしくみはある」とするが、神保容疑者は一線を越えた。
情報漏洩事件の捜査では、神保容疑者が、ナチュラルが独自に開発したスマートフォンのアプリを使うなど、組織との結びつきの強さも露呈した。今年4月にナチュラルの捜査の担当を外れていた神保容疑者が、その後も捜査情報にアクセスできる状態だったことも新たに判明。情報が漏れ続ける状態になっていた可能性がある。ある警察幹部は「わきが甘すぎる」と憤る。
警視庁は、情報漏洩による捜査への影響についても調べている。(宮野佳幸、海野慎介)