介護保険の「ケアプラン」にうそを書くよう求められた──。
ケアマネジャーの50代男性は、勤務先の老人ホームで虚偽の記載を迫られ、適応障害を発症したという。
その責任を追及するため、老人ホームの運営会社に463万円の損害賠償を求める裁判を東京地裁に起こした。
高齢者の生活を支える介護施設で何が起きたのか。(中村真暁)
◆1カ月半で二度転勤 突然のケアマネ交代
男性は2023年3月、「三英堂商事」(東京都渋谷区)が運営する都内の有料老人ホームに赴任した。
ケアマネ(介護支援専門員)が不在となり、約1カ月半前に着任したばかりの福島県内の事業所から、急きょの配置替えだった。
事業者側は、60人ほどいた利用者と家族にケアマネの交代を事前に説明し、その内容をケアプランに記載する必要があった。
しかし、事業者側から説明は行われなかった。男性は次のように振り返る。
「着任前の日付で説明したように虚偽記載するよう指示があった」
◆30人分のケアプラン「コピーでいい」
さらに、入居者数人のケアプランの期限が業務開始6日後に切れるため、更新するよう求められた。
翌月末までに期限切れとなる人も次々に見つかり、30人ほどのケアプランを作らなくてはならなくなった。
男性は話す。「ケアプラン作成には、本人面談のほか家族らとの連絡調整が必要で、通常は月10人程度が限度」
ところが管理者から「コピーでいいから」と不適切な対応を求められた。
男性はこれに「不正行為だ」と反発したが、「指示に従って」と迫られた。
◆法が禁じる「虚偽記載」…適応障害に
ケアプランにうそを書く、つまり「虚偽記載」は介護保険法などで禁じられ、事業者の指定取り消しや介護報酬の返還などの行政処分につながりかねない。ケアマネ資格が取り消される可能性もある。
男性は生活相談員も兼務したほか、管理者の補佐業務などもあって多忙を極めた。
不眠や目まい、下痢などの不調が続いて休職。5月に適応障害と診断され、昨年7月には短期間に転居を伴う配置替えがあったとし、「労災」が認められた。
男性はこう強調する。「不適切な行為を強要され、とてもつらかった。適切なケアができなければ、入居者の命にもかかわる」
同様の悩みを抱えるケアマネはほかにもいるとし、男性はこう言った。
◆運営会社は「係争中のため、コメントは差し控える」
「会社の論理を優先させてしまい、知られてこなかった問題。社会に訴えたい」
老人ホームを運営する三英堂商事の担当者は、東京新聞の取材に、「係争中のため、コメントは差し控える」とした。
裁判は10月に第1回口頭弁論が東京地裁であり、三英堂商事は争う姿勢を見せた。次回は12月22日に開かれる。
三英堂商事は1977年創業。ホームページによると、老人ホームやグループホームなど44施設を首都圏や福島県で運営する。
ケアマネジャー 正式名は介護支援専門員、略はケアマネ。介護が必要な高齢者の心身の状態や生活状況を把握し、訪問介護やデイサービスなどの介護サービスを受けられるように「ケアプラン」を作る。市町村や介護事業者と連絡・調整し、継続的にプランの実施状況の評価・改善をする。報酬は介護保険から支払われ、利用者の負担はない。
◇ ◇
◆ケアプランや介護報酬巡る不正は各地で
ケアマネジャーが関係...
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ジャック・リーチャー 12月3日20時36分
私は両親の介護を妹と5年ぐらいやった事があるけど、本当に大変。ケアマネとのミーティングは妹に任せていたけれど、両親との相性の問題もあるらしく合う合わないも問題があったり、ケアマネ自体や事業者に問題があったり、ケアマネを替えたりしたり、色々本当に大変。ネットの事業者の口コミは当てにならず、近所の経験者のアドバイスが一番良かったようだ。
介護は、現役世代にも大きな影響があるし、ケアマネは公助の入り口だと思うので、出来るだけ多くの人に読んでほしい記事です。
自助も共助も限界、公助が足りない日本、本当に社会全体で考えないと。
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