「放射能」を「食べて」育つ生き物が、チェルノブイリの立入禁止区域で発見される
本来生物に有害な放射能を「食べる」生物は、「意外な分野」で役立つかもしれない
ウクライナで起こったチェルノブイリ原子力発電所事故。この事故により、発電所周辺には放射性物質が巻き散らかされ、人間はおろか生物が住めない不毛の地となった。 【写真】【動画】放射能を「食べる」生物の正体 しかし、そのような過酷な地でも環境に適応し、繁殖している生物が存在する。 放射性粒子に向かって成長し、電離放射線を栄養源として生存しているその生物は、複数の菌類によって形成された黒カビだ。 電離放射線とは、電子を原子から弾き飛ばすほどのエネルギーを持つ電磁波や粒子線を指す。細胞内で化学変化を引き起こしたり、DNAを損傷したりする可能性がある。人間も自然由来の電離放射線に日常的に晒されているが、度を超えた被曝は健康被害を引き起こす。 米アルバート・アインシュタイン医科大学モンテフィオーレ医療センターのジョシュア・ノサンチャク教授は「菌類はこれまで、過酷な環境下での『訓練キャンプ』をいくつも経験しており、必然的に(その環境に適応するため)防御機能や有利な能力を進化させてきた。放射線を『食べる』、すなわち放射合成は、メラニン色素を生成する特定の菌類が獲得した適応の一例だ。この菌類によるエネルギー変換のプロセスは、クロロフィルに基づく光合成に類似している」と本誌に語った。 米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のマウリツィオ・デル・ポエタ教授(微生物学・免疫学)は、「菌類は非常に長い間存在しており、放射線にさらされるような極限環境でも生存・増殖できるよう進化してきた。我々は今、彼らがメラニンという黒い色素を産生することで放射線から細胞を保護し、生き延びていることを知っている。科学者たちは、放射線によって刺激されて生成されたメラニンが、分解される過程で小さな分子となり、その過程で化学エネルギーが生成されるのではないかと仮定しており、この現象を『放射合成』と呼んでいる」と本誌に語った。 「すでに我々は、特定の菌類が高度に移動性の高いウランを安定かつ不溶性のウラニルリン酸塩鉱物へと変換できることを知っている。たとえば、アスペルギルス・ニガーやパエシロマイセス・ジャバニクスといった菌類は、環境中のウラニルリン酸塩鉱物を沈殿させることで、ウランが地下水に到達したり、植物に吸収されて人間や動物の食物連鎖に入り込んだりするのを防ぐことができる。こうした分野は今後より集中的に研究するべきだ」