日本人の好きなウナギがすんでのところで窮地に陥るところだった。筆者の知り合いの漁業関係者もほっとひと息いれた。
ウズベキスタンで開催された絶滅の恐れがある野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約の締約国会議は、11月27日の委員会で、ニホンウナギを含むウナギ属全種を輸出入の規制対象に加える改正案を否決した。12月5日の全体会合で正式決定する見通しだ。
委員会採決では投票総数143のうち、反対100、賛成35。予想外の大差の採決結果に、鈴木憲和農水相は「これは前の石破政権のときからTICAD(アフリカ開発会議)の場なんかを通じて、総理自ら相当各国に働き掛けをしていただいた」と喜んだ。
規制対象の拡大は欧州連合(EU)が提案した。既に規制されていたヨーロッパウナギは他のウナギとの見分けが難しく、ニホンウナギと偽って違法取引されているとし、さらにニホンウナギの資源量も減っていると主張していた。
一方、日本は、EUの主張には科学的根拠がないとし、ニホンウナギはヨーロッパウナギとは見分けることができ、しかも徹底した資源管理で十分な資源量が確保されていると反論。日本の科学的主張が委員会では通った形だ。
もし、ニホンウナギも規制対象になっていたら、輸入ウナギの減少や価格の上昇も懸念された。2024年の日本のウナギ供給量は約6万トンで、このうち、4分の3程度が輸入となっている。ウナギは輸入依存度が高い商品である。
今のところ、中国などアジア諸国は対日輸出を考慮し、日本の主張に賛同しているが、いくら科学的根拠があっても昨今の国際政治の中では、ウナギの国際取引に過度に依存するのは危うい。依存度を下げる決定打は、成育のサイクル全てを人間の管理下で行う完全養殖の確立である。
幸いにも、これは水産庁所管の国立研究開発法人である水産研究・教育機構が既に成功しており、3年以内に1匹の生産コストを1000円以下に引き下げることを目標に、商業化を目指している。
1人当たりの消費量は、日本が世界第1位(436グラム)で、次いで香港(428グラム)、韓国(367グラム)、マカオ(279グラム)と、東アジア4カ国・地域が5位のオランダ(183・2グラム)を引き離している。世界の大半のウナギが東アジアの国・地域で消費されている。
ここで、日本が完全養殖によるウナギ供給の商業化ができれば、大きな力になるだろう。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)