「……それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます」
定例会議。アビドスの借金返済にあたって、効率的な手段を話し合う場。……返済しきれていないことから、過去にまともな意見が出たことはないのだろう。
「本日は先生と代理人にもお越しいただいたので、いつもよりまじめな議論ができると思うのですが……」
「は~い☆」
「ん、もちろん」
「何よ、いつもは不真面目みたいじゃない……」
「うへ~、よろしくね~、先生。代理人も~」
「まぁ、出来るだけのことはするよ」
"お役に立てるか分からないけどね"
「早速議題に入ります。本日は、私たちにとって非常に重要な問題……。
意見ねぇ……。小鳥遊に聞いた感じ、法外な金額っぽいし、借り手を脅すか潰すかして返済額を減らすぐらいしかなさそうだが……。
「はい! はい!」
「はい、1年の黒見さん。お願いします」
「……あのさ、名字で呼ぶのやめない? ぎこちないんだけど……」
「せ、セリカちゃん……。でも、せっかく会議だし」
「いいじゃ~ん、おカタ~い感じで。それに今日は、珍しく先生と代理人もいるんだし」
「珍しくというより、初めて」
「ですよね! なんだか委員会っぽくていいと思いま~す☆」
「はぁ……。まぁ、先輩たちがそういうなら……」
「そこで折れるのか、黒見……」
"委員会っぽい感じ、好きだよ"
「……とにかく! 対策委員会の会計担当としては、現在我が校の財政状況は破産の寸前としか言いようがないわっ!」
「まぁ借金抱えてるんだから、そうだよな」
「このままじゃ廃校だよ! みんな、分かってるよね?」
「うん、まぁね~」
「毎月の返済額は、利息だけで788万円! 私たちも頑張って稼いで入るけど、正直利息の返済も追いつかない」
「むしろ、よく今まで払えてたな」
通貨の価値的には都市と対して変わらないみたいだが、788万って……。……どれだけの依頼を受ければ稼げるんだか。
「指名手配犯を捕まえたり、苦情を解決したり、色々あったんだよ~」
「今までは何とかなったけど、でもこれだけじゃ限度があるわ」
"指名手配犯も大勢いるわけじゃないしね"
「このままじゃ、埒が明かないってこと! 何かこう、でっかく一発狙わないと!」
「でっかく……って、例えば?」
「これをみなさい! 街で配ってたチラシよ!」
「これは……!?」
「どれどれ~」
ゲルマニウム麦飯石ブレスレットであなたも一攫千金
「……あー、黒見?」
都市で似たようなのを見たことがあるぞ……。確か、
「これであなたも翼の一員! 就業時間、最短1時間(業務終了次第終業)あなたも我が社で未来を創りませんか?」
だったか? そんな感じの謳い文句のポスターが貼られてたな……。一時期話題になって、路地裏からも何十人か参加したけど、結局誰も帰ってこなかったって聞いたような……。
「どうよこれ! これでガッポガッポ稼ごうよ!」
「……」
「……☆」
「この間、街で声を掛けられて、説明会に連れて行ってもらったの。運気を上げるゲルマニウムブレスレットてのを売ってるんだって!」
「おいおい……」
それが本物だったら、特異点レベルだぞ……。…………いや、そう言えば同じような物があったな。確か、運勢を操作するシール……だったか?
「……」
「これね、身に着けるだけで運気が上がるんだって! で、これを周りの3人に売れば……」
「……はぁ。……詐欺か。流石にあの特異点と同じような物がある訳ないよな」
「……? みんな、どうしたの?」
「却下~」
「えーっ!? 何で? どうして!?」
「セリカちゃん……。それ、マルチ商法だから……」
「儲かるわけない」
「へっ!?」
「そもそもゲルマニウムと運気アップって関係あるのかな……。こんな怪しいところで、まともなビジネスを提案してくれるはずなんてないよ……」
「そっ、そうなの? 私、2個も買っちゃったんだけど!?」
"多分それ、騙されてるよ"
「セリカちゃん、騙されちゃいましたね。可愛いです☆」
「……!!」
「まったく、セリカちゃんは世間知らずだね~。気を付けないと、悪い大人に騙されて、人生取り返しのつかないことになっちゃうかもよ~?」
「……おいおい、なんで俺を見るんだ。小鳥遊」
「だって代理人は悪い大人なんでしょ~?」
「まったく……。……黒見、悪い大人から一つ教えてやる」
「な、なによ!」
「得する方法や儲ける方法を、他人に教える馬鹿はいない。……誰しもが利益は独占したがる物だし、他人に教えたところでメリットがないだろ」
"……そのブレスレットが本物って証明する方法もないからね"
「言われればそうだけど……。……せっかくお昼抜いて貯めたお金で買ったのに……」
「大丈夫ですよセリカちゃん☆ お昼、一緒に食べましょう? 私がご馳走しますから」
「ぐすっ……。ノノミせんぱぁい……」
……はぁ。しょうがないか……。かと言って一人で行くのも面倒だな……。先生……は危なすぎるし…………。
「……小鳥遊。ちょっといいか?」
「うん? なぁに~、代理人?」
「……今夜付き合ってくれ。……ご丁寧に住所まで書いてあることだし、金稼ぎに行こう」
「……! ……いいねぇ。おじさんも喜んで着いてくよ~。後輩の仇は取らないとねぇ~」
ついでに金目の物があったら頂いておくか。
「えっと……それでは、黒見さんからの意見はこの辺で……。他にご意見のある方……」
「はい! はい!」
「えっと……はい、3年生の小鳥遊委員長。ちょっと嫌な予感がしますが……」
「うむうむ、えっへん! ……我が校の一番の問題は、全校生徒がここにいる数人だけってことなんだよね~」
「確かに、この規模の建物にしては少ないな」
「そうそう~。生徒の数=学校の力。トリニティやゲヘナみたいに、生徒数を桁違いに増やせれば、毎月のお金だけでもかなりの金額になるはず~」
「え……そ、そうなんですか?」
「そういうこと~。だからまずは、生徒の数を増やさないとね~」
「確かにいい案かもしれませんが……、でもどうやって……」
「簡単だよ~、他校のスクールバスを拉致ればオッケ~」
「はい!?」
「登校中のバスをジャックして、アビドスへの転入学書類にハンコを押さないと降りれなくするの! うへぇ~、これで生徒数が増えること間違いな~し」
「小鳥遊……。……確かにいい案だが、それをキヴォトスの全権を握ってる先生の前で言うのは悪手だろ」
"うん、絶対ダメかな"
「うへぇ~。やっぱダメか~」
「やっぱダメか~、じゃありませんよ、ホシノ先輩……。もっと真面目に会議に臨んでいただかないと……」
「いい考えがある」
「……はい、2年の砂狼シロコさん」
「銀行を襲うの」
「はいっ!?」
「確実かつ簡単な方法。ターゲットも選定済み。市街地にある第一中央銀行」
「へぇ……。シロコ、敵対者と金庫の場所は?」
「代理人!?」
「ん、全て把握済み。現金輸送車の走行ルートも調べてある」
「完璧だな」
「さっきから一生懸命見てたのは、それですか!?」
「5分で一億は稼げる。はい、覆面も準備しておいた」
「いつの間にこんなものまで……」
「シロコ、俺は自前のがあるから必要ないぞ」
「ん、了解」
「あと、襲うならその服は脱いでおいた方がいい。足がついたら、後から復讐に来るかもしれないからな」
「! 確かに、制服だとアビドスだってバレちゃう」
「うわー、これ、シロコちゃんの手作り~?」
「わぁ、見てください☆ レスラーみたいです!」
「……」
「いや~いいねぇ~。人生一発でキメないと。ねぇ、セリカちゃん~」
「そんなわけあるか!! 却下!却下!!!」
「そっ、そうですっ! 犯罪はいけませんっ!」
「……」
「そんなふくれっ面をしてもダメなものはダメです、シロコ先輩っ!」
"まぁ、ダメだよね。代理人も煽らないの"
「都市じゃよくあることだったんだがな。……まぁ、金の集まる場所にはそれだけ強力な奴が配備されるから、襲撃した奴だいたい皆殺しになってたけど」
「……はぁ。……みなさん、もうちょっとまともな提案をしていただかないと」
「あのー! はい! 次は私が!」
「はい……2年の十六夜ノノミさん。犯罪と詐欺は抜きでご意見をお願いします……」
「はい! 犯罪でもマルチ商法でもない、とってもクリーンな方法があります☆」
「それは……?」
「アイドルです! スクールアイドル!」
「なるほど、
「ア、アイドル……!?」
「そうです☆ 私たち全員がアイドルとしてデビューすれば」
「却下~」
「あら……、これもダメなんですか?」
「なんで? ホシノ先輩なら、特定のマニアに大ウケしそうなのに」
「うへぇ~、こんな貧相な体が好きとか言っちゃう輩なんて、人間としてダメっしょ~。ないわ~、ないない」
「折角決めポーズも考えておいたのに……」
「まぁ、偶像化を進めた結果、宗教になったなんて話も聞いたことあるし、危険ではあるな」
「あのう……議論がなかなか進まないんですけど、そろそろ結論を……」
「というか~、代理人は何か意見ないの?」
「俺か? ……そうだな。手っ取り早く済ませるなら、借入元を強襲して、金利を無くすよう脅すとかか?」
「……け」
「お、奥空?」
「結局、犯罪じゃないですかぁ!!!!!」
願望力で運勢を操作できるシール……。
その噂は図書館に来る前からあった……ということで!
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