――自由登校日
アビドスの生徒たちに取っては、自由に行動できる日であり、バイトや銀行強盗?など各々がやりたいことをやれる日であるのだが……。そんなことを知らない先生と代理人は、一向に登校してくる気配のないセリカに不安を覚えていた。
"セリカちゃんは、まだかな?"
「いつもはこの時間には登校してるのか?」
「そうですね、いつもであれば登校しているはずですが、本日は自由登校日ですので……」
「自由登校日?」
「えぇ、登校してもしなくてもいい日ですね。勿論、成績が良くない人は登校しなければいけませんし、暇な人がこうして集まったりしますが」
「セリカちゃんはね~、たぶんバイトじゃないかなぁ~」
"バイト?"
「はい~☆ 折角ですから、皆さんでセリカちゃんのバイト先に行ってみますか?」
「ん、いいと思う。少し早いけどお昼ご飯というのも、悪くない」
「昼ご飯? っていうと、料理屋か何かで働いてるのか?」
「そうだね~。着いてからのお楽しみかな~」
料理屋ねぇ……。あっちとは違うし、人肉を使ってたりはしないと思うが。……正直、不安だ。
「……代理人さぁ~。今、人のお肉が提供されるんじゃないかとか、考えてるでしょ~?」
「はい!? ……え、そんなこと考えてたんですか!?」
「い、いやいや……。そんなこと、考えてないぞ?」
「じゃあ、何考えてたの~?」
小鳥遊……なんで考えてることがわかるんだ。
「……どんな料理が振舞われるのか考えていただけだ」
「……そういう事にしておいてあげる~」
まぁ、この感じ的に大丈夫だろう。……料理屋といえば、最近行けてなかったし、ハムパンみたいなサンドイッチが食べたいな。
★★★★★
「紫関ラーメン? ……ラーメン屋?」
「そうですけど……、もしかしてラーメン嫌いですか?」
「いや、そんなことはないんだが……。……最後に食べたラーメンが、友人に騙された店でな」
「騙された? 美味しくないお店だったんですか~☆」
「代理人……。やめて、言わなくていいから」
「ホシノ先輩?」
"私も聞きたくないかなぁ……"
「ん、先生?」
だって……。ジャーキーを食べて人の肉じゃないって言うローランだよ? ……嫌な予感しかしない。
「味は美味かったが、人骨と人の内臓で出汁を取ってるラーメン屋でな……。聞かされた後に全部吐き出す羽目になったんだ……。……って、おい。小鳥遊、なんで殴ってくるんだよ」
「~~~! 代理人! 言わなくていいって言ったじゃん~!!」
"……食欲が無くなっちゃったなぁ"
「ん、代理人。ここのラーメンはそんなことない」
「大丈夫ですよ~☆ ここのラーメンはちゃんとした素材しか使われていませんから~☆」
「……なんで二人とも、平然としていられるんですか」
ゲッソリとした先生とホシノとアヤネを後目に、3人は紫関ラーメンの暖簾を潜った。
★★★★★
「いらっしゃいませ! 紫関ラーメンで……」
「あの~☆ 6人なんですけど~!」
「よう、黒見。ここで働いてたのか」
「お疲れ」
「あ、あはは……、セリカちゃん、お疲れ……」
「お疲れ~、セリカちゃん……」
"やっほー、セリカちゃん……"
「み、みんな……、どうしてここに……!? ……ていうか、なんで後ろ3人は死にかけてるんですか!?」
「ん、気にしないで」
「いや、無理ですけど!?」
「おっ、アビドスの生徒さんか。セリカちゃん、おしゃべりはそれぐらいにして、注文受けてくれな」
「うん?」
何だあれ。喋る二足歩行の……犬? ねじれの一種か? ……警戒だけしておくか。
「あ、大将。……そ、それでは、広い席にご案内します。……どうぞこちらへ」
「はい、先生はこちらへ☆ 私の隣空いてますよ」
「代理人はこっちおいで~」
「分かった分かった。袖を引っ張るな、小鳥遊」
"それじゃあ、お邪魔します"
「それで、ご注文は?」
「違うでしょ~。"ご注文はお決まりですか"でしょ~? セリカちゃ~ん、お客様には笑顔で親切に接客しなくちゃ~」
「うわぁ……。鬼か、お前」
「……うぅ。……ご、ご注文は、お決まりですか……」
「私はチャーシュー麺をお願いします☆」
「私は塩」
「えっと……、私は味噌で」
「私はね~、特性味噌ラーメン! 炙りチャーシュートッピングで」
「先生と代理人はどうされますか~☆ お金なら、私のカードの限度額まで余裕があるので、何でも大丈夫ですよ~☆」
「いやいや、またご馳走になる訳にはいかないよ~。きっと大人の先生と代理人が奢ってくれるはずだよね~」
"……え、初耳なんですけど"
「まぁ、招待状に同梱されていたクレジット? にはまだ余裕があるから、別にいいけどな」
"え、代理人。連邦生徒会長にお金貰ってたの!?"
「あ、あぁ。黒いスマホと一緒に入っていたが……。……え、先生も貰ってるよな?」
"私、貰ってない……。基本は大人のカードで払って、現金はリンちゃんに借りてた……"
「嘘だろ……?」
「……☆」
「先生、こっそりこれで支払ってください☆」
"いや、大丈夫だよ。……カード払いになるけど、流石に生徒に奢ってもらう訳にはいかないよ"
"私はこの、紫関ラーメンで。今日は私が奢るよ"
「……まぁ、いいって言うなら奢ってもらうか。……それじゃあ、俺も紫関ラーメン一つ。トッピングの……あー……」
「……小鳥遊」
「……はぁ。代理人、チャーシューは人のお肉じゃないから大丈夫だよ」
「そ、そうか……。……よく考えてることが分かったな」
「……はぁ。心配性だなぁ~」
「何でもない。俺も先生と同じ紫関ラーメンで」
まぁ……。この世界にいる限りは心配しなくても良さそうだな。
★★★★★
「いやぁ~。ゴチでした~、先生」
「ご馳走様でした☆」
「うん、お陰様でお腹一杯」
「早く出てって! 二度と来ないで! 仕事の邪魔だから!」
「あ、あはは……。セリカちゃん、また明日ね」
「ホント嫌い! 最低! みんな死んじゃえー!」
「あはは、元気そうで何よりだよ~」
「いや、小鳥遊。半分以上お前のせいだと思うぞ?」
"帰ろっか。美味しかったよ、セリカちゃん"
「あぁ。あんなに美味いラーメンは人生で初めて食べた。マジで美味かったよ」
人の独特の臭いと味もせず、あっさりとした醤油の味と豚の出汁の香り。……向こうだったら結構な金取れるぞ。
★★★★★
深夜、ローランが酒を買いに街を歩いていると、連邦生徒会長から貰った黒いスマホのモモトークに、一件のメッセージが入っていた。
"代理人、セリカちゃんが攫われたかも"
夜中にローラン君が一人でほっつき歩いているのは、トラップの確認などを済ませたシャーレ内は、安全だと思っているからです。
護衛対象から目を離すなァー!