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上杉昇さんUnofficialブログ ~Fragmento del alma~ 

Keep My Rock'n Road

1993年 アルバム「時の扉」リリースの頃


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「待望の」という言い方がこれほどふさわしく思えることもなかなかないだろう。
当初の予定では、昨年中に発売される予定だった、彼らのアルバムだが、93年4月
17日にやっと手にすることができた。
アルバムのタイトル曲「時の扉」で始まる10曲は、その完成度とラジオやテレビで
すっかりおなじみになっている彼らのヒット曲が散りばめられている。
どの楽曲も、ずっと前から親しんできたような感覚で体の中にしみこんで来る感覚は
「やっぱりWANDSは売れてるんだな」などという「地球は回ってる」ことを再確認する

のに等しい感想。そして、とても最初のフルアルバムとは思えない、安定感
後者の感想は、彼らの楽曲・詞・アレンジそのもののクオリティが再確認されたことでもある。

柴崎さん:・・・何曲か録り終わったころに自分たちで聴いてみたんですけど、
あんまりよくないねってことになって(笑)
曲そのものっていうよりも、アレンジかがちょっとっていう感じでしたね。
それでまた、やり直すってことになって。それが年末でしたから、もう年内にって
いうのはどうやっても間に合わなかったんですよね

●最初からっていうのは、アレンジも当然やり直して・・・。

柴崎さん:オケ(ヴォーカル以外の、いわゆるカラオケ状態の曲)までですから、
打ち込みもやり直して。ちなみに”時の扉”はアレンジを4パターン録ったんです。

歌メロも違ってたりして。何かそう考えると、これはどっかで機会があったらぜひ聴いて
もらいたいなっていうくらいですね。全部でテイク数だけだったら、アルバム2、3枚分に
なったから。大変、というよりは(製作環境に)恵まれてると考えるべきなんでじょうね
やっぱりこれは(笑)

●アレンジ以外に、製作期間中は心境の変化っていうのもあったんですか。

上杉さん:今回は自分の悲観的なところとかをテーマにした詞が多いんですよ。
だからそういう意味での詞のまとまりをつけたいっていうのがあったんですけど、
そうやって自分のことをさらけ出したり、吐き出すことで自分のけじめをつけるって
いうか、そんなところがあって。それを超えたいがために歌っているのかもしれない
といっても大げさじゃないですから・・・

柴崎さん:それと8月にレコーディングを始めた時と、12月、1月とでは
周囲の状況が大きく変わってしまったんで(笑)当初は自分たちの好きな音、
やりたいことを突き詰めることだけを考えていたんですけど・・・

上杉さん:前のミニアルバムを聴いてくれた人がすごく増えたんで、となると
前作の延長線上にあるものをっていうか、それを踏まえて詞も考え直さなくちゃ
いけないっていうのもあって

柴崎さん:それとかシングルを買っていいなって思ってくれる人も多いんで
その時に感じた良さっていうのに今回のアルバムも応えてあげないとWANDS
っていうバンドが見えなくなるんじゃないかとも思って。
だから、シングルの音のバランスと、自分たちの今やりたい音のバランスをもう1回
調整しなおすという作業を、年末以降やってたっていう感じですかね

●レコーディング作業の期間というのは、いわば時計は止まってしまうのが普通だ。
曲を作ったり詞を作ったり、音を作り上げるのに没頭している間、しばし世間の喧噪からは
遠ざかることになる。いわば「山ごもり」のような状況が続く。彼らのレコーディング
もその例にたがわず進行する。”はず”だった。柴崎君の「大きく状況が変わってしまったので」
という言葉は、レコーディング中に過去発表してあったCDセールスが驚異的に伸びたこと
だ。これにより、彼らの山ごもりは中断を余儀なくされる。”より高いクオリティを求める気持ち”
それが理由だ

上杉さん:とはいえ、自分たちのやりたいことができなくなるということにはいかない
ですからね。聴いてる人が受ける印象がどうであれ、俺は常にその時、表現したいことを
大事にしてるんです。だから、自分の詞をあとになって、聴いて、さらっと流せないっていうか
うそつけないっていうか。俺にとって詞を書く事って、自分の血を吐き出すことなんですよ。
だからフィクションの世界を作れる人間だったらもう少しスムーズに行くと思うんだけど・・・
周囲の状況の変化もあるかもしれないけれども、自分の言葉にこだわった結果っていう部分
が大きいと思う

柴崎さん:細かいところでいえば、自分のギターに関してはテーマをもって臨んでて
それは変わることはなかったんですけど、今回はWANDSのバンドとしてのパフォーマンスが
見えるような音の入れ方っていうか、例えば、ステージで演奏してカッコいいみたいのが
想像できる入れ方っていうのができたらいいなと思っていたんですけど。そのためか、細かいダビング
が減ったっていうのが前回との違いですかね。結果的にはわからないですけど(笑)

●歌の方はどうですか。

上杉さん:さっきの”フィクションで詞を書けない”っていうのもあるんですけど、
感情を入れて歌うのはレコーディングにも慣れてきてできるんだけど、逆にあんまりにも
感情的になりすぎると、後になって聴いて”何で?”って思うことが何回かあったんですよ
それと俺の場合感情移入がすぎると、雑に聴こえてしまうんで、抑えることのほうに
気を使うようになってました。その辺のコントロールの難しさは今回のレコーディングでも
痛感して

●レコーディングの作業とはある意味であきらめる作業だと言ったミュージシャン
がいる。決して否定的な意味ではなくて、まだできる、もっといいものができるんだと
想い続けてしまうときりがない。だから、自分に「これでいいのだ」と納得させるのがレコーディング
なのだ、という意味だ。
ベテランのミュージシャンの中には2週間でレコーディングを終えてしまう人もいる
これは歌うことに慣れてしまったのではなく、レコーディングが何かを達観してしまった
結果だろう


上杉、柴崎の言葉の節々に感じられる繊細さや、細かい気配りからして、
「まだできる、、もっといいものができる」と思う気持ちが強いことは伺える
また、何よりもこの長い製作期間がそれを裏づけている。上杉はそれを「挑戦だ」という

上杉さん:挑むだけ挑んでいますから。あとのいいか悪いかの判断はディレクターに
委ねるようになりましたね

●難産の末、出来上がったものを作品として聴いてみて改めて感じることって
ありますか。

上杉さん:通して聴くと、なんか疲れますよね。自分が重なっているというか、そこに
込められているから。ま、当事者だからそうなおかもしれないですけど。まだ殴られた
直後のその痛みをあまり感じない頃のようっていうか。客観的な判断もなかなかできないし


柴崎さん:ミックスとかも結構気が変わるもので、聴いてみるとまだあれもできたんじゃないかとか、
こうしたほうがよかったんじゃないかとかいろいろ考えてしまいますね。
OKだしたその時と、今とでは何か気持ちとか心境の違いがあるからかもしれないですけど
ただ、今回意識したパフォーマンスが見えてくるような、あ、ここでギターが出てきた、
シンセが出てきたっていうのが伝わるものにはなったなと思いますけど・・・
あとは聴く人がどう思うかっていうことですね。前のミニアルバムのときには考えなかった
というか。あのときは自分たちの音楽をきっちり理解してもらうために、自分たちのやりたい
ことをしっかりやろうっていうのがテーマとしてあったんだと思うんです。
けれど今回はこれを出して裏切ることになってしまわないだろうか?とも考えたし

上杉さん:俺はそう考えたことはないかな(笑)
俺が考えてるのは、本当の意味で俺の人間性っていうのを聴いてる人がどれくらい
いるんだろうってことだから。WANDSってまだ何かわからないけど、少なくとも
”ほかのアーティストよりもより人間的な歌を歌いたいな”っていうのがあって。
人間は長所もあるし、短所もあるものだから、その両方理解してもらいたいし・・・

とにかく彼らのレコーディングは終了した。アルバムに入りきれなかった彼らの
思いは届いただろうかー

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