日本に来て二十数年、クルド人男性が突然の強制送還に 政府の「不法滞在者ゼロプラン」で強まる外国人“排除”
■「治安維持を名目とした人権侵害」 入管庁の担当者は、「入管難民認定法24条に則っている」と説明する。24条は、強制的に退去させるべき外国人の条件を定めた条文だ。不法入国、オーバーステイ、資格外活動の専従、刑罰法令違反などが含まれる。 「これらに該当した人につきましては、退去強制となるという形になっております」(同庁警備課) だが、クルド人の支援団体「在日クルド人と共に」理事の松澤秀延(ひでのぶ)さんは、「治安維持を名目とした人権侵害」と批判する。 「クルド人のように、母国のトルコで迫害され国に帰れない人は多い。強制送還されれば逮捕され、命に危険を及ぼすおそれもある。入管は事情をしっかりと聴き、安易に送還させるべきではない」 クルド人は「国を持たない世界最大の民族」と呼ばれる。トルコやシリアなど中東に約3千万人が暮らすが、少数民族ゆえに、差別や迫害を逃れ、故郷を離れる人も少なくない。埼玉県の川口市や蕨市には、トルコ国籍のクルド人が2千人ほど暮らすとされる。「仮放免」で暮らしながら、難民申請をする人は少なくない。 ■日本で生まれ育った子どもたち 冒頭のAさんも仮放免の状態で難民申請を3回以上行っていて、いつトルコに送還されてもおかしくない状態だ。トルコにいた時に政治活動をしているとみなされ、帰国すれば逮捕される可能性が高いという。 「不安。だけど、いまは外国人に厳しいから、仕方がないかもしれない」(Aさん) Aさんにも妻と3人の子どもがいる。高校生の長女は、父親(Aさん)がトルコに送還されれば、家族が離れ離れになりたくないので、家族全員、トルコに行くつもりだという。しかし、子どもたちは皆、日本生まれで日本育ち。知らない国でどうやって生きていけばいいかわからない。 長女は日本で大学に進学し、将来は医療関係の仕事に就くことを目指している。だが、トルコに行くことになれば、その夢も叶わなくなる。長女は訴える。 「父を、強制送還してほしくないです」 (AERA編集部・野村昌二)
野村昌二