1995年 WANDSインタビュー ①
95年2月「Secret Night」リリース
●95年は、WANDSにとってかなりテンション高かった1年ですか。
柴崎さん:そんなに高くなかったし、1年を早く感じたし、早いっていうのは、
それほど充実してなかったのかなと思ったりして。
上杉さん:考える事がいろいろ多かった年ですよね。
●この1年はWANDSが次々といろんな壁を打ち破ってきた1年だなと、僕たちは思って
いたからいつになくテンションが高かったんじゃないかって考えてたんですけど。
自分たちとしては、当たり前の流れだっていう意識だった。
柴崎さん:周りの期待とかプレッシャーとかをあんまり感じずにやってきましたから。
●じゃあ、今僕が言った、壁をぶち破ったみたいな意識は?
上杉さん:具体的に作品一つを取っても「PIECE OF MY SOUL」でコアな感情に
引っ張って来れたんだけど、それだけにこれからの課題を多く生んだアルバムでもあったんですよ
その課題を今回の新しいシングルでクリアできたっていう事を考えると、あのアルバムを
出せたってことは、壁っていうか、自分の志すものをクリアしていってるとは思います。
●95年1年を大きなポイントごとに振り返ってみましょう。まず、2月にシングルの「Secret Night」
がリリースされたんだけど、僕はあの曲を初めて聴いた時の衝撃は、今でも忘れられない。
あの曲が完全に仕上がった瞬間の印象はどうでしたか。
柴崎さん:客観的なリスナーや周りの人は自分たちより、すごく変わったなと感じるんだとうとは
思ってましたけど、正直にやってかないと、リスナーと音楽を作る側のギャップが開いちゃうと思うし
そんな状態でせっかく「ファンです」とか、「音楽良いですね」って言われても意味がないしね。
だから、正直に自分たちがやりたいってことをやった。
●演奏してる方が楽しんでなければ、きっとそれは聴いてる側にも伝わりますからね。
「Secret・・・」のレコーディングっていうのは今までと比べてどうでした?
正直にやったということは、やっぱり楽しんだって感じだった?
上杉さん:前々から探してた曲に巡り会えたって感覚があったんで、それだけに楽しんだというより
も、シビアに良いものを作らなきゃっていう事で精一杯でしたね。
●この曲で自分たちが少し突き抜けたなという気持ちにはならなかったですか。
上杉さん:ここまでも、結構、デビットボウイが持つ良い意味での軽薄性みたいな、
なんでもできるっていう姿勢でやってきた所があるし、単純に「もっと強く抱きしめたなら」
と「恋せよ乙女」も全然違うタイプじゃないですか。そういう意味ではこの曲も同じような
姿勢だけど、でも少し自分たちのアーティストとしてのアイデンティティが見えてきたなというのは
あります。
●「ヒットを作るために音楽をやってるんじゃない」って発言してるWANDSの二人に
こんな事を聞くのはおかしいかもしれないけど、あの曲に対する周りの評価っていうのは
納得できるものでした?
上杉さん:俺達の周りに、チャートに入って初登場の1位で何百枚売れたからすごいって
言うような次元の人はいないし、みんな結構アーティストとして、好き放題やってて
楽曲が良いか、悪いかを判断するアンテナが、敏感な奴ばっかなんで、そういう奴は
すごく喜んでくれたから、嬉しかった。
●じゃあ、ファンの反応の方は?
上杉さん:賛否両論はあって当たり前なんだけど、喜んでくれて「今までの欲求不満がここで
一気に解消された」みたいな声もあったし
柴崎さん:ファンが選ばれていくんだろうなっていうのは、自分からも分かってやってる
ことですから。
上杉さん:色々な雑誌で発言してるってのもあるんだと思うんですけど、
俺らの音楽の中のロックっぽい所を、以前から感じてて、ずっと期待してて待ってくれた人が
いるんだなってのも分かりました。
●逆にがっかりしたような反応は?
柴崎さん:「私には分からない」とか「聴くのが怖くてなかなか聴けませんでした」とか
●(笑)聴くのが怖いって?でもファンが選ばれていくっていうのはWANDSにとっては
結果的にプラスですよね。
柴崎さん:だれも聴いてくれる人がいないとなると悲しいけど、やっぱり万人に受けるものって
どこかに矛盾がでてくると思うんですよ。
そういう矛盾はできるだけ少なくしたい。
95年4月
「PIECE OF MY SOUL」リリース
●そして、4月にアルバム「PIECE OF MY SOUL」のリリース。シングルで出てきた音が
一時の気の迷いじゃなく、今のWANDSの音がこれなんだなっていうのが良く分かるアルバム
だったんですけど、このアルバムを作るに当たって、何かテーマみたいなものはありましたか。
上杉さん:吠えてるだけのロック、攻撃的なのだけがロックじゃない。ロックも繊細な部分を
はらんでるんだっていうのを表現したかったんだけど、ダイナミクスっていう点で課題が生まれました。
自分が好きなのはただ単に女々しくて軟弱なだけのロックじゃなくて、激しさの中に見え隠れする
ちょっとした繊細な部分がたまらないっていうのかな。雑草の中には実は一輪花が咲いていたって
いうのがすきなんですけど、あのアルバムはね、割と花ばっかりみたいなところがあるんです。
●雑草の中に一輪花があるっていう絵はあのアルバムを聴いていると見えるような気がするけど、
まあ、納得できないっていうところですね。
上杉さん:そこで生まれたテーマっていうのは、今回のシングルでクリアにできたと
思うんですけど。
●このアルバムのレコーディングにはかなり時間がかかったんですか。
柴崎さん:結果的に結構かかったよね。
●WANDSのニュースって年中スタジオにいるんじゃないかと思うぐらいレコーディング中って
いうのが多いですからね(笑)
柴崎さん:曲ができるのが遅いんですよ。自分の中でOK出来るまでがちょっと長いかなって
それにアルバムのレコーディング期間が決まっててという感じじゃなくて、流動的で曲ができたら
スタジオ入って、またやる曲がないと間が空いちゃったりとか。切羽詰まった感じはなかったけど。
●スタジオのメンバー三人それぞれっていうのはどういう雰囲気なんですか。攻撃的になる人が
いたりとか、かえって冷静になって全部をまとめていく人がいるとか、結構バンドって役割
みたいなのが、自然とでてくると思うんですけども、WANDSの場合は?
上杉さん:あんまり感情を表に出す感じはなくて、淡々としてるんですけど、心の中では
燃えてるっていうか。
●例えば外の人がWANDSのレコーディングのスタジオの中に入ったら「やけに静かだな」と
いう印象を受ける
柴崎さん:それはあるんじゃないですかね。結構暗い。
他のバンドは知らないけど、多分、普通ミュージシャンってもっと声がでかかったりとか
表面上も活気に満ちた印象を受けるんじゃないかな。
●煮詰まることっていうのはありますか。
上杉さん:レコーディング煮詰まることってそんなにないです。
●ある程度のラインまではテンポ良く進む?
柴崎さん:ある程度の形までは見えるけど、いろんなパターンを試さずにはいられないって
感じ。
●僕は変化というあ意味で、あのアルバムはすごくリスキーな作品だなと思ったんですけど、
結果的に好意的に受け入れられたアルバムだって気がするんです。少し時間がたった今、この
アルバムを冷静に評価するとどうです?
柴崎:出来てしばらく、もっとダイナミクスがついたらとか、気になるところがあったけど
久しぶりに聴くとあれはあれで良いアルバムだなと思えたり
●良いアルバムだと思うでしょ?
上杉さん:曲良いんですけど、歌はまだまだ納得できてないです。
●やけにハードルが高い(笑)あの歌に何が足りなかったっていうんですか。
上杉さん:今までに自分たちが築き上げてきたってものにとらわれすぎていたって感じかな。
続く・・・