動画生成AI 進化の功罪 誤報や著作権侵害も【#きっかけ解説】
ニュースのその先を考える記者解説、きょうのテーマは「動画生成AI 進化の功罪 誤報や著作権侵害も」。ニューヨーク支局・櫻茜理記者の解説です。
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――動画を作るAIは本当に進化していますよね。
最近では、「チャットGPT」を手がけるアメリカのオープンAIが9月末に、動画生成AI「Sora2」を発表しました。
動画の内容を指示するだけで音声も自動で生成され、誰でも簡単にリアルなAI動画を生成できますが、特徴はユーザー自身を動画に登場させる「カメオ機能」があることです。実際に私も作ってみました。
Sora2で生成された動画
「ただいまニューヨークハーバーの自由の女神、そのトーチの上からお伝えしています。見てください、この高さ…」
――本当に櫻さんがリポートしているように見えますね。
私も率直にここまで作れるのかと驚きました。そのため多くの問題も起こっています。
アメリカではある地元メディアが10月、Sora2で生成された車のレースの事故映像を、実際に起きた事故だと勘違いしてニュースにしてしまったと報じられているんです。
また、オープンAIのサム・アルトマンCEOが万引きしているウソの犯罪動画なども、SNSで出回りました。
――動画のクオリティが上がったことで、これまで以上にウソを見破りづらくなっているんですね。
そうなんです。社会に悪影響を与える可能性、「社会的リスクが大きい」として、消費者の権利を訴える団体からはSora2の一般公開の停止を求める声も上がっています。
さらに重要なのは著作権の問題です。
アニメや漫画キャラクターを勝手に使ったAI動画がSNS上に拡散する事態となりました。
そのため、日本のスタジオジブリなどが所属するコンテンツ企業の団体は「コンテンツを無許諾で学習対象としない」よう求めました。
また、日本民間放送連盟も「日本のコンテンツ制作の文化を破壊しかねない」とする声明を発表し、さらに日本政府も「著作権侵害となるような行為を行わないよう要請した」と公表しています。