【裁判全文】そして、「あの日」。絶望と憎しみの果てに「無心で撃った」瞬間【安倍元首相銃撃事件⑧被告人質問⑶】
岡山失敗の翌日に、「まさか奈良に来るとは思わなかった」という偶然の連鎖。
トイレで安全装置を外した瞬間、2発12発の散弾を放つまでの心理。
そして、絶望と憎しみの果てに安倍氏を撃った瞬間。
審理はついに「あの日」へと至った。
※本記事の公判部分の事実記載は寮美千子さん(https://ryomichico.net)より特別ご寄稿頂いたものです。小見出しのみ私が付けさせていただきました。
※冒頭写真出典:日経新聞
■裁判情報
被告人: 山上徹也
傍聴人:一般傍聴用の傍聴席35席は満席。倍率約11倍
※過去2番目とのこと
日付:2025年12月2日(火)午後1時頃~午後5時頃
内容:①山上被告の被告人質問⑶ー検察側(本記事)
②山上被告の被告人質問⑷-裁判官
③証人尋問:宗教社会学者(②③併せて別途アップ済)
事案
2022年(令和4年)7月8日 午前11時31分ごろ、奈良県奈良市、近鉄「大和西大寺駅」北口付近で、元内閣総理大臣であり、衆議院議員としても活動していた安倍晋三氏が、街頭演説中に背後から複数初の銃弾を胸・首付近に受けた。奈良県立医科大学附属病院に搬送され、かなりの出血状態で輸血・手術がなされたものの、17時03分に死亡が確認された。死因は、鎖骨下動脈付近の損傷等による大量出血。
山上徹也(当時41歳・奈良市在住)被告によるもので、手製の銃を使用しているとされている。動機については、山上被告の母親が、宗教団体・世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に深く関わっており、山上被告が安倍氏がその宗教団体に支持的・関係性があると認識していたところから恨みを抱いたとされる。
裁判日程
■初公判 冒頭陳述
↓
■証人尋問
警察(記事①)→医師(記事②)→警察→母→妹(記事③)→対教会専門の弁護士(記事④⑤)
①
②
③
④
⑤
↓
■被告人質問(記事⑥⑦⑧(※本記事)⑨)
⑥
⑦
↓
■証人尋問
宗教学者(記事⑨)・精神鑑定医
↓
■被告人質問
↓
■求刑・最終意見陳述
↓
■判決
■被告人入廷
4人の制服姿の男に連れられて、腰縄に手錠姿の彼が現われた。背中を丸めてうつむいて歩く姿は「打ちひしがれている」ように思えた。人によってはこれを「ふてぶてしい」と感じるのかも知れない。しかし、腰縄に手錠という人間性を剥奪された状態は、それだけで人を打ちひしがせる効果があると思う。
■検察側の被告人質問
統一教会への襲撃
まずは検察が、銃撃前日の、新大宮近辺の統一教会の施設への銃撃についての詳細を尋問。微に入り細に入り聞く。彼は一つ一つに、賢明に誠実に答えようとしていた。
検察:どうやって構えましたか。
山上:ビルを右手に見て、車の窓を開けて。
検察:運転席の窓越しに撃ったのですか。
山上:はい。
検察:発射はわかりましたか。
山上:はい
検察:どんな音がしましたか。
山上:非常に大きな音だと思います。
検察:南に走り去った。
山上:はい。
怒りの対象は、安倍ではなく教会
検察:なぜそこを狙ったのか。
山上:高校生の頃に統一教会のセミナーのようなもので泊まり込んだことがあったので、奈良の統一教会と言えば、真っ先に思い浮かぶのがそこでした。統一教会に怒りを感じていたので。
検察:その時はもう安倍元首相に狙いを定めていたのですか。
山上:はい。
検察:本来の怒りの対象は、安倍元首相ではなくて統一教会ですか。
山上:はい。
検察:この時点でなぜ、統一教会に撃ち込みを?
山上:統一教会の関係者であれば、安倍元首相と統一教会の関係は知っていますが、一般社会ではそう思われていないので、予め示しておかないと、違う取り方をされると思ったからです。
襲撃後、コンビニで缶ビールの理由
検察:そのあと、コンビニで缶ビールを買いましたね。どんな気持ちで?
山上:一つ気がかりなこと、やっておくべきことをやれたという気持ちでした。岡山は夕方から夜だったので、眠る必要もあったので。
検察:岡山へ行く目的は。
山上:岡山市内で応援演説をする安倍元首相を銃撃するためです。
検察:3本の銃身のすべてに弾を詰めていましたか。
山上:はい。小型のショルダーバックに詰めて。
検察:あのバッグに収まるように、銃身を〇〇センチにしましたね。
※山上氏は、岡山の演説会場に行く前に、松江市に住むルポライターで「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の活動を批判するブログの運営者の米本氏に手紙を投函した。手紙では、「母の入信から億を超える金銭の浪費、家庭崩壊、破産…この経過と共に私の10代は過ぎ去りました」と自身の苦しみや同連合への怒りを吐き出している。安倍氏については「本来の敵ではない」「最も影響力のある統一教会シンパの一人に過ぎません」と記しているだけで、銃撃の動機は明かしていない。あくまでも殺意の対象は、韓総裁らだと明確にしたうえで「不可能な事は分かっています」としている。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220718-OYT1T50064/
ライター米本氏への投函
検察:米本氏に投函した郵便物を作成したのはいつごろ?
山上:6日か7日(前?)か、そんなに離れていないころ。
検察:岡山市民会館で襲撃できなかったのはなぜですか。
山上:手荷物検査があると思いました。実際にはなかったのですが。市民会館の裏手の出入口にほぼ横付けするような形で車が来たので、銃撃する機会がありませんでした。
検察:郵便局に行って郵便物を回収しようとしましたができませんでしたね。
山上:差出人の名前を書いていなかったので、回収できませんでした。
銃撃失敗の翌日にまさか安倍氏が
検察:帰りの新幹線で、自民党のHPを見て、佐藤啓氏の応援演説のために安倍元首相が奈良に来ると知りましたね。
山上:6月の末にも安倍元首相が応援演説をしていたと知っていたので、まさか、自分が銃撃に失敗した翌日に来るとは思えなかったので、偶然とは思えませんでした。
そして、「あの日」へ
※事件当日について、検察が詳細を確認(省略)
検察:サンワシティから外を見ていたときの、外の状況は?
山上:自民党の選挙カーは来ておらず、維新や参政党が街宣している状態だったと思います。
検察:そのあとトイレに。
山上:はい。
検察:トイレの中で銃を触りましたか?
山上:安全装置の一つをオフにしました。
検察:いつでも発射できる状態に?
山上:そう言っていいと思います。
銃を用意し、トイレを出る
検察:外に出たとき。状況は変わっていましたか?
山上:細かいことは覚えておりません。
検察:人が増えていませんでしたか。
山上:人は最終的に増えていったけれど、どの時点からかはよく覚えていません。
検察:その後、どこへ。
山上:駅の方へ行ったと思いますが、よく覚えていません。
※事件当日の西大寺駅前での細かい動きを検察が詳細を確認(省略)
山上:サンワシティの正面入口でしばらく見ていたのは、覚えています。
検察:そのあとゼブラゾーンの南東に移動しましたか。
山上:だと思います。
発射
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