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推しを「守る」ことと、「広める」ことのあいだ。著作権と推し活について、少しだけ整理してみました。

はじめに:すれ違う「正義」について


SNSを見ていると、時々胸が痛くなることがあります。
「推しの動画を広めたい人」と
「著作権侵害だと注意する人」。

どちらも「推しのためを思っている」ことには変わりがないのに、
正義と正義がぶつかってしまっている現状です。

私は法律の専門家ではありませんが、マーケター視点から見たとき、
「法律が本当に守ろうとしているもの」
「私たちが守ろうとしているもの」
に、
少しズレが生じているのではないか?と感じることがあります。

「ダメなものはダメ」で思考停止するのではなく、今起きている事実と、本来のルールについて、一度フラットに整理してみたいと思います。


1. 私たちが誇るべき「鉄壁の守り」の歴史


まず、はっきりと伝えたいことがあります。
これまで著作権や肖像権について厳しく声を上げ、ルールを守ってきたファンの方々の行動は、100%正しかったということです。

SNSが普及する前、あるいは普及し始めた頃、アイドルの主戦場は「テレビ」や「雑誌」でした。そこにあるコンテンツをネットに上げる行為は、シンプルに「海賊版」であり、それを許さないファンの民度の高さ(自浄作用)は、タレントのブランド価値を守り、事務所との信頼関係を築く上で必要不可欠なものでした。

「違法動画を許さない」
「公式にお金を落とすべき」

この高いコンプライアンス意識こそが、長年キンプリを支えてきた基盤であると思います。今、注意喚起をしている方々は、その「誇りある歴史」を継承している正義感の強い方々であり、決して間違ったことを言っているわけではありません。

ただ、ここ数年で「戦う場所」のルールが少しだけ変わりました。

テレビ全盛期から、ストリーミングとSNS拡散の時代へ。 かつては「完全に隠すこと」が正解だった守り方が、グローバルな競争の中では「一部を見せて広めること」へと、シフトしつつあるのです。


2. 世界を変えた「UGC」という波


そこでキーワードになるのが、「UGC(User Generated Content)」です。 直訳すると「ユーザー生成コンテンツ」。要は、企業や公式ではなく、一般のファンが作って発信した動画や画像、コメントのことです。

2025年の今、世界的なヒット曲やトレンドの多くは、テレビCMからではなく、この「UGC」から生まれています。

例えば、Creepy Nutsの『Bling-Bang-Bang-Born』。 あの曲が世界的なヒットになったきっかけは、アニメのオープニング映像に合わせて踊る「ダンス動画」がTikTokで爆発的に広まったことでした。
また、こっちのけんとの『はいよろこんで』も、サビのダンスや歌詞を使った「二次創作動画」が大量に作られたことで、本家のMV再生数が急上昇しました。

どちらも、公式が「宣伝してください」と言ったわけではありません。 ファンが「この曲で遊びたい!」「みんなに見せたい!」と思って作った動画(UGC)が、結果として公式に億単位の再生数と利益をもたらしたのです。

実は、キンプリもこの恩恵を直近強く受けましたよね。髙橋海人くんの短い動画(切り抜き)が約7,700万回超拡散された結果、以下のような現象が起きました。

  • その後のSpotify月間リスナー:6.8万人増加

  • 髙橋海人くんInstagramフォロワー:1.7万人増加

  • TikTok フォロワー:1万人増加

  • YouTube本編再生数:200万回突破

もし、この動画を「著作権違反だ」と即座に排除していたら、この「新規リスナー」との出会いはなかったかもしれません。


3. 法律は何を守っているのか?


「でも、結果が出れば法律違反でもいいの?」
真面目なファンの方ほど、そう思うかもしれません。

ここで、少し視点を変えてみましょう。
よく議論になる「肖像権」「パブリシティ権」

言葉は難しいですが、この法律が守ろうとしているのは、実は「アイドルの顔」そのものではありません。
「その顔を使って生み出される『利益(お金)』」です。

法律の世界には「実質的違法性」という考え方があります。形式上はルール違反に見えても、「実害(損害)が出ていない」、あるいは「むしろ権利者の利益になっている」場合、厳しく罰する対象とはみなされないことがあります。

これを「お店」に例えるとわかりやすいかもしれません。

🚫 完全なNG(営業妨害)

お店で売っているお弁当(ブログ、FC、テレビ、雑誌、ラジオ)を、勝手に持ち出して無料で配る行為。
→ これは店主(公式)の売上を直接奪うので、明白な権利侵害です。

⭕️ グレーだが黙認、あるいは推奨されるゾーン

お店の看板メニューの写真を撮って(SNSの切り抜き)、「ここのお店、美味しいから行ってみて!」とSNSで宣伝し、お客さんをお店に連れてくる行為。
→ 店主(公式)からすれば、宣伝費をかけずに集客してくれる「ありがたい存在(広報)」となり得ます。

公式が切り抜き動画を消さないのは、
単にチェックが漏れているからではなく、
それが「お店にお客さんを呼ぶ行為」だと判断している(黙認している)からではないでしょうか。


4. Geminiキャンペーンで起きた「すれ違い」


しかし今、Googleの「Gemini」のCMにおいて、
少し残念なすれ違いが起きているように感じます。
私たちは「守らなきゃ」と思うあまり、公式が用意してくれた「試食コーナー(拡散の場)」まで「触っちゃダメ!」と封鎖してしまっているのかもしれません。

公式バナー広告をご覧ください。

大きく書かれた「Geminiでやってみて!」の文字の横に、
ドット絵になった2人のキャラクターが描かれています。

これがおそらく、公式からの「正解発表(やってほしいこと)」です。
制作サイドの意図はこうだったはずです。

  1. みんなもGeminiに写真を読み込ませて

  2. 2人みたいにAIで「キャラ化」して遊んで

  3. その可愛い画像をシェアして、タイムラインを埋め尽くしてね!

本来なら、今頃SNSはファンが作った「ユニークなAIキャラ」というUGCで溢れ、それを見た一般層が「何これ楽しそう!」とアプリを入れる……そんな「バズの連鎖」を期待されていたのではないでしょうか。

「写真をそのままばら撒く」のはNGでも、「AIで作ったキャラで盛り上げる」ことは、公式が望んでいたトレンドだった可能性が高いのです。 その「もくろみ」が、私たちの過剰な自粛で潰れてしまっているとしたら…
それはとても勿体無いことではないでしょうか。

追記1

記事の公開後、「Geminiのバナーにある『やってみて!』は、タレントの写真ではなく、自分(ファン自身)の写真でやってみて、という意味ではないか?」というご指摘もいただきました。

FCコンテンツ、公式サイトが対象のSTARTO社の規約(AI学習禁止)を厳格に守ろうとする姿勢からすれば、その解釈は非常に誠実で、正しいものだと思います。

ただ、私がこの記事で一番危惧しているのは、「写真の対象は誰か?」という議論以上に、「AIは怖い」「余計なことはしない方がいい」という空気が広がり、キャンペーン自体が静まり返ってしまうことです。

あのバナーやCMの可愛い楽しげな雰囲気から、制作サイドが意図していたのは、「AIを使ってキャラ化して遊ぶのって楽しいよ!」というポジティブなムーブメントだったはずです。 それなのに、私たちが過剰に萎縮して「シーン...」としてしまっては、せっかくの起用が「盛り上がらなかった」という評価になりかねません。

もし「推しの写真」を使うのが嫌なら、自分の写真でも、ペットの写真でも、ぬいぐるみでもいいのです。 大切なのは、「紹介してくれたGeminiで、ファンが楽しそうに遊んでいる」という景色(UGC)を公式に見せることです。

「ダメ出し」をして動きを止めるのではなく、「こうすれば安全に遊べるよ!」とアイデアを出し合って盛り上げる。 それもまた、大切な「応援」の形ではないでしょうか。


5. 「愛ある引用」と「ただの転載」の境界線


とはいえ、何でもアップしていいわけではありません。では、どこまでが「応援」で、どこからが「迷惑」なのか。 その境界線は、法律用語の「引用」の概念を借りると、驚くほどシンプルに整理できます。

判断基準は、「主役は誰か?」そして「出口はあるか?」です。大切なのは、その投稿が「公式への貢献(お店への集客)」になっているかどうかです。

その境界線はシンプルです。

😇 愛がある引用(=優秀な営業マン)

  • 特徴: 「フルはこちら」「続きは公式で」と、必ず公式へのリンクや検索ワードが添えてある。

  • 役割: 見た人が公式へ飛ぶための「橋渡し」になっている。

  • スタンス: 主役は「キンプリ」。自分の投稿はあくまで紹介文。

😈 ただの転載(=自己満足)

  • 特徴: 動画だけをアップして、出典やリンクがない。

  • 役割: 見た人をその場で満足させてしまい、公式へ行く足を止めてしまう。

  • スタンス: 主役は「動画を上げた自分」。インプレッション(いいね)が自分の手柄になる。

おわりに


時代は変わり、推し活の形も変わりました。

「有料のコンテンツ(ブログ、FC、テレビ、雑誌、ラジオ)は、鉄壁の守りで隠す」
「無料の広告素材(SNS)は、リンクを添えて全力で広める」

このメリハリこそが、推しをさらに高い場所へ連れて行くための、最新の推し活なのかもしれません。

Xはどうしても直接動画をアップする方が現在のアルゴリズムではバズります。

短い切り抜き動画をアップして公式YouTubeリンクを付けることも著作権!と忌み嫌われていますが、

・YouTube URLをリンクのみ インプ20
・短い切り抜き動画+公式YouTubeリンク インプ10万

宣伝としては、どちらが彼らの得になるでしょうか?

この仕組みを許容出来るかどうかが境目だと思うのです。

※どうしても気になる人は無理にやる必要はありません。ただ、禁止をする人は、禁止が得になるのかどうか?という面も立ち止まって考えてみてはどうだろうと思いました。

大好きな彼らの魅力を、世界中に届けていけるように、何がなんでもダメ!と止まってしまうことをせず、何が大切なのか、守るべきものは何かということを今一度、自分の中で考えてみることも大切だと思います。

追記2

上記「おわりに」で書いた文章が、一部の方には「無断転載を無責任に奨励している」ように伝わってしまったかもしれないので、補足させていただきます。

私が「仕組みを許容できるか」と書いたのは、ルールを破ることを推奨する意図ではありません。 「プロモーション(宣伝)」という視点で見た時に、どちらが公式への貢献度(送客力)が高いかという、現実についてお話ししたかったのです。

リンクだけの投稿よりも、動画付きの投稿の方が圧倒的に拡散され、結果として公式へ飛ぶ人が増える。 この「ファンによる拡散(UGC)こそが広告になる」という事実は、私の個人的な意見だけではなく、日本のエンタメ業界全体の新しいスタンダードになりつつあります。

実際に、これまでは肖像権に厳しかった日本の大手事務所も、続々と公式ルールを変更しています。

  • LDH(EXILE、三代目 J SOUL BROTHERSなど)
    かつては最も厳格でしたが、2024年5月にガイドラインを改定。「メンバーが無料SNSに上げた画像・動画」をファンがSNSで使用・拡散することを公式に許可しました。
    LDH SNS活用ガイドライン

  • ホリプロ
    歴史ある大手事務所ですが、応援目的であれば公式SNSの画像・動画の利用を認めるガイドラインを出しています。
    ホリプロガイドライン

  • BMSG
    「応援目的」であれば、アーティスト写真やロゴをSNSに投稿してOKとしています。社長のSKY-HIさんがUGCの重要性を強く推奨しています。
    BE:FIRSTを応援してくださる皆様へ(2024/06/24 更新)

多数のグループがなぜルールを変えたのか。

それは、「ファンに素材を渡して広めてもらった方が、結果としてアーティストが売れ、公式の利益になる」と判断したからではないでしょうか。

もちろん、今のキンプリには、業務提携先の「STARTO ENTERTAINMENT社」のサイトポリシーが存在します。
STARTO ENTERTAINMENT ファンの皆さまへ注意とお願い

ここには「有料配信映像、FC動画、画像」等に関する厳しい規約はありますが、実は「公式SNS」に関する明確な記載はありません。 記載がない以上、「SNSは対象外(King & Prince株式会社の管轄)では?」という推測もできますが、ファン心理として「念のためルールを拡大解釈して、すべて禁止としておく」という自衛の気持ちも十分分かりますし、私自身も、今まで無断転載はしていません。

ただ、「世界や日本の業界全体が、推しを売るために『UGCの重要性』を感じ動いている」という事実を知っておくことは、これからの私たちの応援の仕方を考える上で、決して無駄ではないと思うのです。

いつか公式から、「応援のための拡散ならOKだよ」という新しいルールが発表される未来を願って。



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0123_pepper

記事を拝見しました。仰りたいことは理解できましたが、ファンとしては不誠実な内容だと思います。 他の方もコメントや引用RPにて指摘していますが、記事の内容を読む限り、禁止されている行為を助長しかねない内容であることは事実です。このことについてもっと真摯に受け止めていただけないでしょう…

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あすか

すごく考えさせられる記事でした

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推しを「守る」ことと、「広める」ことのあいだ。著作権と推し活について、少しだけ整理してみました。|おさかな
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