35歳で台湾の初代デジタル発展相に就任し、デジタル化をけん引してきたオードリー・タン氏は、政治とデジタルの分野で屈指の知識人として知られる。AIの技術が急速に発展し、人々の仕事や生活を大きく変えようとしている中で、その変化をどう捉えているのか。米シリコンバレーを訪れた同氏に話を聞いた。
――AI(人工知能)の普及で、AIコーディング(プログラミング)ツールが広がり、米国の大手テック企業はエンジニアを削減しています。AIと人間の仕事の未来について、どのようにお考えですか?
オードリー・タン氏(以下、タン) かつて「コンピューター」という言葉は計算を仕事としている人、「プリンター」は活字を扱って印刷する人を指していました。今やこれらの言葉は、すっかり機械を意味するようになりました。劇的に速いスピードで「プログラマー」もまた機械、つまり人間ではないものになっていくでしょう。これは、2年後くらいで現実になるかもしれません。
私自身もプログラミングの訓練を受けましたが、今はコーディングをしていません。「ヴァイブ(感じ取る)コーディング」と呼ばれるスタイルで、私がAIエージェントに指示を出し、そのエージェントが米Anthropic(アンソロピック)の「Claude(クロード)」のような“プログラマー”を利用します。
人間が担う仕事は、これまでマネジャーやCEO(最高経営責任者)が果たしてきた役割へと変わっていくのです。将来的には、誰もがそのようになるでしょう。一人ひとりがCEOとなり、機械のプログラマーを含む数百人のチームと一緒に働くのです。
――そのような社会の変化に、どのように適応すべきでしょうか?
タン AIに仕事を任せつつ、新たな変化に正しく適応するために、質の高い睡眠を取るというのはどうでしょうか。私の場合、8時間眠ればリフレッシュして目覚めることができ、前の日を引きずることはありません。睡眠が4時間だと、疲れを引きずったままで、新しい世界に向けた活力が足りなくなり、不安になります。私は自分のことを「競争力のある睡眠者」と標榜しているほどです。
――AIを仕事の現場で導入し、活用する際に考慮すべき鍵は何でしょうか?
タン 最も重要なのは、現場で傾聴することです。現場に近い人々が技術によって、多くのインプットを持つことが大切です。現場の人のためにAIを設計するのだ、という姿勢を改めて現場の人々に共有し、共にAIを設計すべきです。
言い換えれば、「人間をAIループに入れる」のではなく「AIをヒューマンループに入れる」。現場の人々のニーズを定義しつつ、AIに依存させるのではなく、「支援する知性」としてAIを機能させるのです。人々がソリューションに縛られると、それがさらに問題を生み出し、持続可能性が欠如し、リソースの枯渇にもつながります。
ディープフェイク広告対策を法律に
――米Open(オープン)AIが動画生成AI「Sora(ソラ)2」を公表しました。動画の品質は驚くほどですが、ディープフェイクのような悪用の懸念も高まっています。
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