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大学の理系強化基金200億円増額の不都合な真実~学部新設校は40.8%が定員割れ・2校は申請取り下げ #エキスパートトピ

石渡嶺司大学ジャーナリスト
提供:イメージマート

27日、朝日新聞が「大学の理系転換支援の基金、200億円増へ 教員確保への支援体制も」記事を配信、同記事がヤフトピ入りしたことで理系について話題となりました。

「基金は2022年度に約3千億円を計上して作られ、これまで261件が支援対象となった。2029年ごろまでに理系分野の入学定員は計約2万2千人増え、入学者の理系の割合も今の35%が約38%に上がる見込みだ」(朝日新聞記事より)

記事に出てくる「基金」とは「大学・高専機能強化支援事業」を指し、2023年~2025年の3回、選定が進んでいます。

ココがポイント

文部科学省が、大学の理系学部新設などを支援する基金を200億円積み増す方針を固めた。
出典:朝日新聞 2025/11/27(木)

令和4年度第2次補正予算で造成された基金による「大学・高専機能強化支援事業」の初回公募について、118件を選定
出典:文部科学省 2023/7/21(金)

(ノーベル賞受賞の2氏が)松本洋平文部科学相と省内で面会し、基礎研究への支援や若手研究者を支える組織づくりの必要性を訴え
出典:共同通信 2025/10/30(木)

財務省の資料では、24年度の運営費交付金は1兆784億円で国立大学が法人化した04年度比で数字の上では1632億円減少
出典:毎日新聞 2025/11/25(火)

エキスパートの補足・見解

「大学・高専機能強化支援事業」は支援策が2つに分かれ、このうち、支援1は公私立を対象に3年間で150校(うち20校は公立)が選定されました。

2025年志願者データを精査したところ、私立大学130校のうち、53校(40.8%)は定員割れとなっていました。経営が苦しくなる70%台前半から50%台に低迷している大学も5校以上あります。

また、選定130校のうち2校は理系学部の設置認可申請を取り下げる事態に追い込まれています(1校は大学新設の設置認可申請を取り下げ)。

理系強化のためとは言え、選定校の中に学生減で苦しむ大学が一定数、含まれていることは問題です。実際、2023年選定・2024年に新たな理工系学部を開設した某大学は2年連続で新学部の充足率が60%未満に低迷しています。

理系学部を一気に新設すれば有名校・大規模校が有利であり、定員割れが続く大学や小規模校が不利になるのは当然です。新学部に学生が集まらず募集停止となれば、支援金が億単位でムダになる可能性があります。

私立大学に学部新設を促すよりも、国立大学の理系学部に補助金を出す、あるいは老朽化した施設・設備に投資する方が効果的ではないか、と筆者は考えます。

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大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『就活まるごとガイド』(講談社)など累計35冊・68万部。 2026年春に『採用のバカヤロー!』を刊行予定。

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