揺れる不動産特定共同事業 国や行政は踏み込んだ対応を
日刊工業新聞・社説
事業者が投資家から出資を募り、不動産を売買・賃貸することで生じた収益を投資家に分配する「不動産特定共同事業」が揺れている。不動産クラウドファンディング(CF)が拡大する半面、配当金の遅延などの運用トラブルも増加している。成長過程にある事業だけに、投資家が安心して投資できる環境整備が不可欠だ。国や行政による監督機能の強化が求められる。 国土交通省によれば、わが国における2023年度の不動産特定共同事業の新規案件は701件。17年度の93件に比べ7・5倍に急増している。このうち、不動産CFは530件で大半を占めている。新たな投資商品としての期待は高まる。 半面、トラブルも顕在化している。成田空港周辺の開発用地などへの出資を募る不動産CF商品「みんなで大家さん」シリーズをめぐり、全国約1200人の出資者が運営会社を相手に、総額114億円の返還を求める集団訴訟が起こっている。 「みんなで大家さん」では実際の建設計画が度々延期され、出資者への分配金支払いも遅延している。開発予定地の約4割を保有している成田国際空港会社は11月末で土地の賃貸契約を打ち切るなど、開発プロジェクトの先行きはより不透明感を増す。不動産CF市場そのものの信頼性低下は避けられない。 国交省は3月、不動産特定共同事業のあり方について検討会を設置し、8月に中間整理している。制度充実に向けた施策として①一般投資家向けの情報開示の充実②対象不動産の売却価格などにおける公正性の確保③行政による監督の充実④業界団体との連携による自主ルールの検討―を明記した。想定利回りの根拠を明らかにすることや出資金の使途など、契約前の書面における記載事項の充実は必須になろう。 「貯蓄から投資へ」の流れは急速に強まっている。有望視される不動産CFの運用トラブルは投資意欲の減退を招き、資本市場全体への悪影響も危惧される。安心して投資できる環境整備に向け、国や行政の一歩踏み込んだ対応が迫られている。