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財務省の総務課長が現場に直接「改ざん」を指示したメールを次々と発見! 新たな開示で公文書は5万4000枚に。そこに真実を解明するカギが【森友文書分析・前編】

財務省で国有財産を管轄する理財局。その総務課は局内各課の筆頭に位置付けられる。財務省からこれまでに開示された膨大な文書を分析したところ、その総務課長が現場の近畿財務局に直接「改ざん」を指示するメールが存在していた。しかも、その指示を受けて改ざんされた文書と、改ざん前の文書まで出てきたのだ。依然としてベールに包まれたこの事件の背景を解くカギが、少しずつ見え始めている。

相澤冬樹

財務省近畿財務局が森友学園に国有地を8億円以上も値引きして売り払った「森友事件」。8年前の発覚後、取り引きを巡る公文書の改ざんが行われ、それを苦に近畿財務局の赤木俊夫さんが命を絶った。妻の雅子さんは、事件の捜査で検察に任意提出された文書の開示を財務省に求め、今年(2025年)4月から段階的に開示が始まった。10月に4回目の開示が行われ、合計で約5万4000枚もの文書が公表されている。

スローニュースはこのほど、4回目の開示文書もデータベースに実装した。気になる言葉のキーワードを、簡単に検索できる。そこから明らかになった事実を、開示文書の該当箇所と合わせてご紹介しよう。

※文中《 》で囲った部分は開示文書からの引用。〈 〉は筆者の補足。肩書はすべて当時。
※文書はこれまで4回の開示ごとに6~48冊の冊子に分かれ、何冊目の何枚目かを示すページ番号が下部に振られている(例「1-30」)。1つの冊子が2~3の分冊に分かれているものもあり、「1-2-30」のように中央の数字が分冊を表している。記事では(①1-30)のように、何回目の開示かを①②③④で表示し、その後にページ番号を記した。

筆頭である総務課長が金額“改ざん”指示するメールが存在

当時、財務省理財局の総務課長だったのは中村稔氏だ。「中村稔 財務省理財局総務課長」を本サイトのデータベースで検索してほしい。2017年3月15日、中村総務課長が近畿財務局の管財部長らに送った以下のメールが出てくる。

《2月14日の応接の2億や3億のくだりは削除願います》(③9-1325)

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開示された中村氏のメール(赤い下線は筆者 以下同)
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中村稔 財務省理財局総務課長(事件発覚当時)画像は去年の衆議院インターネット審議中継より

ここにある「応接」とは、当該メールの直前にある応接記録のことだ(③9-1324)。8億円値引きの根拠とされたゴミの撤去費用について、理事長が「実際は1億円くらい」と述べたという朝日新聞の記事を受け、朝早くに近畿財務局の池田靖 統括国有財産管理官から籠池理事長に電話をかけている。その電話で籠池理事長はこう語ったという。

《「一億ぐらいはかかっているかな~、しかし、詳細は不明でわからない」と話していると思う。そんな金額では到底足りないと思っている。現時点で、2億や3億はかかっている》

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開示された応接記録より 「2億や3億」は残ったままだ

「1億円」の表現については後に学園側が朝日新聞に事実誤認だと申し入れたという記載が応接記録にあるが、「2億や3億」はそのままだ。8億と大きくかけ離れているだけに削っておきたい、そういう意図での“改ざん”指示だと類推できる。ではなぜ、「2億や3億」という文字が残っているのか。

改ざん後の文書も残っていた!

実は、この「2月14日の応接記録」は、もう一つ存在しているのだ。(③9-1328)。こちらは《現時点で、2億や3億はかかっている》という1文がすっぽり抜けている。指示を受けて改ざんをしたものと見られる。改ざん前と後の文書が開示されたものの中にあったのだ。

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同じ応接記録が存在したが、こちらは改ざんの指示どおり「2億や3億」がすっぽり抜けている

改ざん発覚後、財務省は職員の手持ち資料などの中から改ざん前の文書を探し出していた。だから、開示された文書には改ざん前と後の文書が両方含まれていたのだ。こうしたケースは他にもあると思われるので、ぜひ探して比較してみてほしい。

中村総務課長は改ざんで中核的な役割を担ったとして停職1か月の懲戒処分を受けた。これは「停職3か月相当」とされた佐川宣寿理財局長に次いで重い処分だ。ところがその後、中村氏は駐英公使などを経て今年7月から関東信越財務局長の要職にある。一方で、現場で改ざんに反対した赤木俊夫さんは死に追い込まれた。

国会議員に事実と違う内容を伝えるというメールも発見

同様に「中村稔 財務省理財局総務課長」をデータベースで検索してほしい。この頃、中村総務課長が佐川宣寿理財局長ら10人に送信したメールが出てくる(④4-234)。10月の開示で初めて明らかになった。

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開示された中村氏のメール

森友学園に売り払われた国有地は当初、ここだけ金額が非公表だった。そこに建つ小学校の名誉校長が時の首相の妻、安倍昭恵さんだったことで疑問の声が上がる。2017年2月9日、朝日新聞が問題を報じると、近畿財務局は森友学園から公表の同意を取り付けたとして金額を公表。鑑定価格より8億円以上も値引きし1億3400万円で売り払っていたことが発覚した。

こうした状況で中村総務課長は、民進党(当時)の初鹿明博衆議院議員から、金額公表の同意書を巡る近畿財務局と森友学園とのやり取りを具体的に知りたいと求められ、以下のように答えるとメールで記している。

《2月9日、森友学園の代理人弁護士から契約金額の公表に同意すると近畿財務局池田統括官〈池田靖統括国有財産管理官〉に対して電話で連絡があった。これを受けて、同意書のフォーマットを森友学園事務所に池田統括官が持参し、籠池理事長、副理事長、代理人弁護士が同席している中で、同意書に署名押印してもらった》
《以上の記録として残っているのは、同意書のみで、面会記録は作成していない》

ところが「作成していない」はずの面会記録が、しっかり作られていた。「朝日新聞等報道」という言葉で検索すると、池田統括官と、森友学園の籠池泰典理事長とが夕方に面会した時の「応接記録」が出てくるのだ。

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開示された応接記録

また、その日の朝の電話のやりとりについての応接記録も存在している。なぜ、「作成していない」と事実と違うメールを送ったのか。

国有地の売却金額を非公表にした理由について財務省は「学園の要望による」と説明していたが、朝日新聞はその説明を否定する籠池理事長の「非公表を強く求めていない」という発言を伝えていた。開示された一連の記録を見ると、記事を受けて池田統括官が籠池氏に連絡を取り、籠池氏が自ら「公表しないで欲しい」と言ったという言質をとったうえ、報道には「悪意がある」とまで言ったと書かれている。この内容なら、「作成していない」などとせず、公表しても不都合はないのではないか。

考えられるのは、この応接記録に書かれた内容そのものが、表に出てると「事実と違う」と指摘を受ける恐れがあったからではないか。実際、私がこの点を籠池氏に取材したところ、「非公表は僕の方から求めたのではない。池田さんが『非公表という対応もできます』と言ってきたから『じゃあそうして』と応じただけだ」と答えた。朝日新聞の記事を追認するものだ。

私は池田氏に取材したことがある。改ざんの経緯を記した「赤木ファイル」という文書について聞くためだ。池田氏は赤木俊夫さんに改ざんを指示した上司であった。2020年10月19日、出勤のため自宅を出たところで話しかけた。

「帰ってもらえます?」「もうやめてくださいよ」

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左・池田靖氏、右・取材する筆者(撮影:久保田徹)

なおも赤木ファイルについて尋ねながら駅に着くと、こちらに向き直り、
「警察を呼びますよ」「取材の仕方がひどい」と詰め寄ってきた。

「取材の仕方がひどいっておっしゃるけど、池田さんが赤木俊夫さんにしたことはひどくないんですか?自分で書き換えることもできたのに、なんで部下を呼び出してやらせたんですか?その後悔があるから『僕がやればよかった』って赤木雅子さんにおっしゃったんですよね。あれは本当に人としての言葉だと思います」

すると池田氏は黙り込み、駅を出て自宅へ戻った。池田氏は事件を巡る裁判で証人に呼ばれたこともあったが体調不良を理由に出廷しなかった。値引き売却と公文書改ざんの双方に現場で関与したが、いずれも説明していない。

※次回は「改ざん」を指示した最初のメールがどのようなものだったかなどを明らかにします。

相澤冬樹(あいざわ・ふゆき)

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1962年宮崎県生まれ。東大法学部卒、87年NHK入局。2018年、森友事件の取材の最中に記者職を解かれNHKを退職。著書に『安倍官邸vs.NHK』、赤木雅子さんとの共著『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』(以上文藝春秋)、『真実をつかむ 調べて聞いて書く技術』(角川新書)など。

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