「リダイレクトの記載はない」個人情報公開で訴えられた『売れるネット広告社』の主張と司法の判断

過去の言動と矛盾している

この『売れる社』側の主張に対し、A氏側は「責任逃れのための形式論・詭弁だ」として、反論している。

まず、「別会社がやった」という主張に対しては、A氏側は「その主張は、過去のあなた方の言動と矛盾している」と反論する。

〈本件仮処分決定の保全異議事件(編集部注:仮処分に対する異議申立て)(中略)において、原告(編集部注:『売れる社』)自らが’25年1月31日付で社名変更の上申書を提出している。(中略)この事実は、原告が旧社名(訴外会社)の権利義務を承継し、本件仮処分決定における債務者本人であることを自認しているに他ならない。

もし、Webサイト自体の管理者でないのであれば、この時点でその旨を裁判所に申し立てるべきであった。それを怠り、今になって「別会社」を主張することは、信義則に反する不誠実な態度であり、第三者(編集部注:子会社のこと)の不履行を理由に本件強制執行が免責される理由とはならない〉(A氏側の準備書面より)

『売れる社』は’25年1月に持ち株会社体制へ移行し、社名を変更すると同時に事業を行う子会社を新設した。当初、同社は裁判所に「社名が変わっただけで、削除命令を受けた会社と同一の法人です」と届け出ていた。

ところが、後に「リダイレクトは別人格の子会社がやった」と主張。A氏は主張の使い分けは責任逃れのための不誠実な態度であり、法廷で許されるものではないと主張した。

さらに、「リダイレクトについては命令書に書かれていない」という主張に対しては、「命令の趣旨」を問う実質論で対抗した。

〈債務名義(編集部注:記事削除を命じた仮処分決定)の履行とは、一般利用者が上記各URLにアクセスした際に表示される当該指定部分が閲覧不能となっている状態(削除済みの状態)を実現・維持することとなる。

(中略)一般利用者が債務名義に記載のURLにアクセスすると、自動的に債務名義と(中略)全く同一内容であるドメイン(編集部注:準備書面には具体的なアドレスが記載)に転送され、当該表示が継続して閲覧可能となっていた。(中略)これを債務名義の履行とは評価できない〉(A氏側の準備書面より)

形式的にページを消したとしても、実質的には同じ内容が見られる状態を作り出している以上、削除命令の趣旨に反する「不履行」である――と主張しているのだ。

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