「リダイレクトの記載はない」個人情報公開で訴えられた『売れるネット広告社』の主張と司法の判断

東証グロース上場の『売れるネット広告社グループ株式会社』(画像は同社HPより)
東証グロース上場の『売れるネット広告社グループ株式会社』(画像は同社HPより)

リダイレクトするなとは書かれていない?

東証グロース上場企業『売れるネット広告社』(現『売れるネット広告社グループ株式会社』、以下『売れる社』)は、自社を批判したメディア『Suan』運営者の一人であるA氏の個人情報を「さらした」のか、「さらしていない」のか──。

『売れる社』は裁判所の「削除命令」に従い、同社ホームページのA氏に関する記述を削除したと主張。しかし、「リダイレクト(転送)」という手法により、閲覧できる状態が続いていた。A氏側はこれを「削除義務の不履行」と判断。間接強制決定に基づき、1日10万円のペナルティー金など合計1700万円超の支払いを求めて、裁判所に債権差し押さえ命令を申し立てた。

詳細については、前編の【「言論活動を委縮させる目的」…東証グロース上場企業『売れる社』とウェブメディアのドロ沼法廷闘争】をお読みいただきたい。

【前編】「言論活動を委縮させる目的」…東証グロース上場企業『売れる社』とウェブメディアの法廷闘争

後編では、“リダイレクト”についての双方の主張を紹介する。

法廷で『売れる社』側が展開している主張のポイントは、主に2つ。

こちらが1つ目の主張だ。

〈代表取締役(編集部注:加藤公一レオ氏)よりリダイレクト指示を受けたのは、事業会社である訴外「売れるネット広告社株式会社」の執行役員(編集部注:実名記載につき略)であり、実際、リダイレクトがなされたのも、「売れるネット広告社株式会社」のホームページ上においてであるとおり、リダイレクトの主体が原告ではなく訴外「売れるネット広告社株式会社」である〉(『売れる社』側の準備書面より)

仮処分命令を受けたのは親会社(『売れるネット広告社グループ株式会社』)だが、リダイレクトは別法人である子会社(「売れるネット広告社株式会社」)がやったことだから、自分たちに責任はない――というのである。

そして、以下が2つ目の主張である。

〈仮に原告がリダイレクトを行ったとしても、これは本決定(編集部注:仮処分決定)に違反するものではない。(中略)本件(編集部注:仮処分決定のこと)に関する債務名義の「1 債務者は、別紙投稿記事目録番号1記載の投稿記事のうち別紙1の赤色の線で囲まれた部分及び別紙投稿記事目録番号2記載の投稿記事のうち別紙1の橙色の線で囲まれた部分を仮に削除せよ」との記載は一義的かつ画一的な内容であり、削除後の再掲載やリダイレクトについては何らの記載もない〉(『売れる社』側の準備書面より)

裁判所の命令はあくまで「特定の記述を削除せよ」というものであり、「リダイレクトするな」とは一言も書かれていない。だから命令違反ではない――というのである。

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