「リダイレクトの記載はない」個人情報公開で訴えられた『売れるネット広告社』の主張と司法の判断

『売れる社』からの回答は……

フライデーデジタルは、『売れる社』に対して質問状を送り、下記2点について問い合わせた。

1、仮処分決定の趣旨が、A氏のプライバシー権が侵害されている状態を解消することにあった点を鑑みますと、リダイレクト行為は、結果としてその侵害状態を継続させるものでした。この行為の是非について、社会通念上の観点から貴社のお考えをお聞かせください。

2、仮処分決定を受けた後に、同内容の記事が掲載された別ウェブサイトへリダイレクトする行為は、たとえ子会社が行った行為であったとしても、グループ全体として司法の判断を尊重する姿勢とは相容れないのではないか、とも思料されます。上場企業として求められるコンプライアンス遵守の観点から、この点に関する貴社のご見解をお聞かせください。

同社からは次のような返答が来た。

「お問い合わせの件は、現在係争中であり、当事者間の見解に相違があることから、司法による判断を仰いでいる状況でございます。従いまして、弊社の見解を含め、本件に関する具体的な回答は一切差し控えさせていただきます。弊社といたしましては、法廷の場において、当社の正当性を誠心誠意主張してまいる所存です。ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます」

一方、A氏側にリダイレクトが続いた状況に関して見解を求めると、以下の回答があった。

「今回、裁判所によって人格権侵害が認定されたにもかかわらず、その後も、私の実名を冠したドメインの匿名サイトに自動転送されるかたちで、同一内容の記事が閲覧できる状態が維持されていました。

これは実質的な権利侵害を継続させる行為であり、極めて遺憾です。同様の被害が繰り返されないよう、今後も司法の場による適切な救済と公正な判断によって、正義が実現されることを求めてまいります」

果たして、裁判所は「ページは消しました。でも内容は”転送”します」という論理を認めるのか。その判断は、今後のネット上の言論のあり方に影響を与えることになるだろう。

酒井晋介

記者

1964年生まれ。玉川大学工学部卒。「通販新聞」記者を経て、1989年より講談社『フライデー』記者。地下鉄サリン事件では、オウム真理教の実態に迫る数々の記事で中心的に関わる。競馬G1レースの予想記事では本誌予想を担当。得意分野は経済事件で、ライフワークはM資金研究。

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