「言論活動を委縮させる」…東証グロース上場企業『売れるネット広告社』とウェブメディアの法廷闘争
「電話解約のみにすれば解約率は下がる」
SNS上での発言はどこまで許されるのか?
今ネット社会は「言論の自由」と「プライバシー・人格権保護」で大きく揺れている。10月23日には元『ZOZO』執行役員で投資家の田端信太郎氏が、SNS上での「無能」という発言により侮辱罪の容疑で在宅起訴されたが、その適用基準の曖昧さを指摘する声も上がり、議論は尽きない。
そんな中、今一つの象徴的な民事裁判が行われている。東証グロース市場に上場する気鋭のネット広告関連会社が、自社を批判したメディア運営者の一人と泥沼の法廷闘争を繰り広げているのだ。フライデーデジタルが入手した裁判資料を紐解くと、ネット上での言論手法の新たな問題点が浮き彫りになっていた。
発端は、スタートアップ業界の情報を発信するウェブメディア『Suan』が掲載した以下のタイトルの記事だった。
〈大手D2C通販、140社中90社が電話解約のみか。背後に「電話解約のみにすれば解約率は下がる」と流布するコンサルの存在。〉(’23年6月12日配信)
この記事が指摘したのは、D2C(ネット通販)企業のコンサルティングを手がける『売れるネット広告社』(現『売れるネット広告社グループ株式会社』、以下『売れる社』)の加藤公一レオCEOによる、YouTube動画(’22年公開)内でのこんな趣旨の発言である。
「ネットユーザーは電話が嫌いなので、電話のみにすると解約率は下がる」
「意図的に顧客の利便性を下げる手法を推奨しているのではないか」と記事で問題提起したことで、『売れる社』と『Suan』運営者の一人であるA氏による法廷闘争に発展。その過程で『売れる社』側が取ったある手法が、ネット社会におけるルールのあり方を司法に問いかけている。
法廷でいったい何が起きているのだろうか?
『売れる社』はD2C支援の分野で急成長を遂げ、’23年10月には東証グロース市場へ上場。’25年7月期の決算では、15億6700万円の売上高を計上している。また、代表の加藤CEOは「レスポンスの魔術師」の異名をとる業界の有名人となった。自身でYouTubeチャンネル『売れるネット広告社グループ株式会社【加藤公一レオ D2Cチャンネル】』を運営し、インフルエンサーとしてネット広告の魅力などについて発信している。
