すべてはM&Aに向けた「下準備」だった
ただ、魁力屋によるエムピーキッチンの買収にはひとつ「懸念材料」があったのではないか、と前出のコンサルタントは指摘する。
「魁力屋と天下一品は、どちらも京都発祥を謳い、しかも本店が京都の一乗寺にある、いわばライバル関係。そのため、エムピーキッチンは魁力屋の傘下に入るうえで、天下一品のフランチャイズ店舗は手放す必要があったのでしょう」
つまり6月末に起きた天下一品の大量閉店は、天一食品商事の言うように経営不振などではなく、あくまで11月に行われるM&Aに向けた“下準備”だったというわけだ。ただ、エムピーキッチンに誤算があるとすれば、天下一品の代わりに用意した新ブランド・伍福軒の評価がイマイチだったということだ。
「公式発表によれば、魁力屋への売却額も50億円と、エムピーキッチンホールディングスの総資産が約40億円と考えると、かなり弱気な額。主力業態である三田製麺所と伍福軒に強調材料がなかったのは痛手でした。結果としてファンドにとっては『損切り』となってしまったのではないでしょうか」(同前)
近年、M&Aによる業界再編が過熱する外食業界。天下一品の大量閉店は、大きなうねりの中の“小さな余波”に過ぎなかったわけだ。むしろ今後注目すべきは、ともに出店を加速させる天下一品と魁力屋、同郷のライバルによる戦いの行方だろう。