BRAHMAN 30th Anniversary「尽未来祭 2025 Day1」 Vol.2【THA BLUE HARB&黒夢&ヌンチャク&etc…】BRAHMAN再生大学の為せる技
尽未来祭2025 Day1に関する記事2回目はBRAHMAN以外に目撃したLIVEやら何やらと、そこで考えたことについてつらつらと書いてみたい。
LOW IQ 01
※注 LIVEではありません
6番手のEGO-WRAPPIN'が終わりそうなところで幕張メッセに到着。
ブルーハーブのLIVE開始まで若干時間があったので、各物販ブースでも見てみるかとウロウロしていたら、イッチャンことLOW IQ 01パイセンがフツーにブース前を歩いている…。
客層が大人だからか、特にわーっと人だかりができるわけでもなく、みんな
「あれイッチャンじゃね…?」
という表情で遠巻きに眺めて様子を伺っている感じ。
このフツーにイッチャンがうろついている姿ってめちゃくちゃ既視感あるのよ。
TOSHI-LOWくんがオーガナイズしているキャンプフェスNEW ACOUSTIC CAMPでもよく一般客エリアをガンガンうろついているし、かって2000年代初頭に渋谷の明治通りにあったストリートファッションショップ・WHOEVERに行くと、高確率でイッチャンに遭遇できた。
自分も当時2回ほどWHOEVERや店舗近くでイッチャンに遭遇したことがある。
お店やフェスでフツーに出会えるアイドル・イッチャンは、いまも変わらず健在だった。
朝イチのLOW IQ 01 のLIVEには盛大に間に合ってないんだけど、これ一発で回収できたからオールOK!
尚、余談だけどAIR JAM'98ではジャッキー大高が会場内をうろついていたので、イッチャンがフェスで一般客エリアに現れがちなのはSUPER STUPIDイズムなのかもしれない。
ヒロシくんに遭遇したことはないけど。
THA BLUE HARB
初めて生で見るブルーハーブ。
1MC1DJの最小限ユニットなので誤魔化しが効かないが、そのすべての責任を背負って大観衆の前に立つBOSSくんの佇まいにもう惚れる。
一つひとつのリリックに信念込めて発するその声にも益々惚れちゃう。
ちょっと声質がジョー・ストラマーっぽく鼓膜を掻き立てられるような聴こえ方するので、めちゃくちゃアジテートされる。
ブルーハーツのトリュビュートに収録するためにレコーディングしたのに、あまりに原曲からかけ離れたアレンジが認められずトリビュート版には結局収められなかった『未来は俺等の手の中』。
クソカッコいい。
BRAHMANは得を積んできた。
だから信頼しているし一生の仲間だと思っている。
なんてMCも。
地元北海道・札幌への誇りを幾度も表明し、同郷のハードコアバンド(10年前の尽未来祭・初日に出演もした)「SLANG」のロゴが胸に入った黒ジャケットを羽織り出したかと思えば
「何もしないお前に何がわかる 何もしないお前の何が変わる」
とSLANGの曲の歌詞をラップし出す。
カバーかと思ったけど、そうじゃないらしい。
ブルーハーブの初期音源はSLANG KOが運営するレーベルからリリースしているし、なにより地元札幌のインディペンデントな存在をしっかり尽未来祭の場に刻むその心意気にと漢気にやっぱり惚れる。
「あんたがやり残したものとは何だい?
ハーフタイムは終わった
最後まで笑っていたいから頑張る
まだやり残したことがあるんだ」
「確かなこと いまここにある
俺とあんたが向かい合っている
これきりの時がここにある
これ以上ない」
なぜか一対一で直接問いかけられているように聴こえる魂こもった真摯なラップは、尽未来祭が終わってから数日経った今も、鮮明な余韻として自分の中に残っている。
ブルーハーブ。マジで感服致しました。
黒夢
高校時代の友人に熱狂的な黒夢ファンいたし90年代からめっちゃメジャーな存在だったけど、自分にはあまり縁がなくちゃんと通ってこなかったバンド。
まさかこの年になって黒夢のライブを見られるとは…と、感慨深く思いながら楽しみにしていた。
バンドが演奏を始めると、どっかで聴いたことがあるオリエンタルなギターの音…。
BRAHMANの『Slow Dance』だ!
そこに白ハットを被った清春が現れて歌い出す、その声量、演奏の音のデカさたるや!
すげぇ。メチャクチャ気合い入っている…。
そしてBRAHMANの曲がハマりまくっている…。
続けて『Silent Day』というBRAHMANのカバー2連打。
思ってもみなかった攻められ方と音量のデカさにのっけからお口あんぐりさせられた。
BRAHMAN30周年おめでとうございます。
10年前は赤の他人だったけど、今はトシちゃんと友だちになったので。
なので、みんなも友だちになってください………とは、別に言いません。
うん。
適当にやってください。
え、ちょっと待って清春ってMC超おもしろいじゃん!?
もっとスンとしてて、クールな感じかと思ってた。
いやクールではあるんだけど、すんごいお茶目じゃん!
幕張ってMCが聞こえづらいらしいので、今日はゆっくりと、滑舌良く喋りますよ。
その言葉通りめっちゃ滑舌いいしゆっくり喋ってくれるしめっちゃ聴こえやすい。
"歌詞聴き取れないシンガー"としてTVで話題になっちゃってたけど、それ逆手にとってめっちゃ滑舌いいの、超おもしろい…!
トシちゃんからは3日目に黒夢と近いバンドがたくさん出るよって言われてた。けど俺らはつるまないでやってきたから、それだったらあえて初日に行かしてって言ったんだよ。
そうなんよ。
黒夢ってV系って括られがちだけど、90年代から他のV系バンドと絡んでいる印象があんまりなくて、ずっと一匹狼なイメージなんだよね。
そんな黒夢の孤高のスタンスと、笑っちゃうぐらいの轟音と、お茶目さんMCに完全に心持っていかれました。
ラスト3曲はみんな知ってる曲やりますって、俺にもわかる『MARIA』『少年』『LIKE A ANGEL』やってくれて、ダイバーもガンガン出現しちゃうとっても楽しいLIVEでした。
ヌンチャク
尽未来祭の開催発表から当日までずっと伏せられていたシークレット枠は伝説の" K×C×H×C(柏シティハードコア)"ことヌンチャク!!!
暗いままのステージに風の音が鳴り響き、ヘヴィなリフが鳴り響いた瞬間、幕張メッセに強烈な都部がふぶく!(『都部ふぶく』)
一瞬にしてテンション爆上がり。
続く『人情ヴァイオレンス』の連打という鉄板の流れ!
みんな忘れてるかもしれないけど、これトイレ休憩だからね。
でも俺たちをここに立たせてくれてありがとう。
と、音のハードさと歌詞の支離滅裂さとは対極の、ヌンチャク流の謙虚さや真面目さとちょっぴりのユーモアを感じる朴訥なMC。
90年代に3枚リリースしたアルバムからバランスよくチョイスされた名曲(迷曲ともいう…※褒めてます)が次々と鳴らされる。
極悪ハードコアな音の中に遊び心満点の展開やメロディが埋め込まれていて、そこに向井の伸びやかな低音ヴォイス、クニの金切り声というツインボーカルが乗っかる、相変わらず唯一無二のサウンド。
そして音がデカい。
さっきの黒夢も負けてなかったけどこっちはボーカルが2人いるから、数の力でフルボッコしてくる感じ。
ちなみにヌンチャクのLIVEを見るのはなんとAIR JAM'97以来28年ぶりの2度目。
当時16歳の高校生だったのが、いまや44歳のおっさんになっているこの時の流れの速さを想う…。
AIR JAM’97の時は向井が足を骨折していて、松葉杖をつきながらのクネクネした動きのステージングがあまりに衝撃的で、ヌンチャク酔いして気持ち悪くなった思い出がある(褒めてます)。
28年も経っているから当時と違ってアクティブに動くのではなく、フロントの4人は基本スタンドマイクの前で極力動かずに演奏と歌を聴かせることに専念するステージングだった。
それが今の彼らにとってのベストの尽くし方であるということ。
尽未来祭2025 Day1は主に"90's"というざっくりとした括りがあったわけだけど、ある意味最も高純度に当時の空気が真空パックされた、伝説そのままのK×C×H×Cサウンドだった。
中華蕎麦 とみ幸
※注 LIVEではありません
BRAHMANに向けての腹ごしらえにチョイスしたのが鶏白湯ラーメンのとみ幸。粘度の高い超濃厚なスープがかって武蔵境にあった"きら星"(店内BGMがエンドレスでマキシマムザホルモンだった店ね。こっちは豚骨だったけど)を思わせる味わいで激ウマでした。他のフェスで見かけたら是非ご賞味ください。
こんな感じで、尽未来祭・初日、本当に短い時間でしたがその分濃いひと時を過ごさせていただきました。
なんせその短い時間に見たLIVEが「ブルーハーブ→黒夢→ヌンチャク」。
一体なんなのこの並び!?
冷静になって考えると、ちょっとばかし狂っているとしか思えない。
ということでここからは、ジャンルも時空もねじれているパラレルワールドみたいなフェス空間を実現させてしまうBRAHMANのブッキング力の凄さについて、改めてもう少しだけ考えてみたい。
RHYMESTER を呼び込むBOSS
尽未来祭2025初日のラインナップで何が熱かったかって、 それはRHYMESTERとTHA BLUE HARBが同時にクレジットされていたということなんです。
ジャパニーズヒップホップ好きはみんな知っていることなんだけど、この2組はちょっとしたボタンのかけ違いから長きにわたりビーフを繰り広げていた歴史があるのだ。
互いに札幌と東京という場所で本来は「同じ月を見ていた」はずなのに、お互いにプライドもあるし直接会っていないことも作用して、ずっと関係が拗れていた。
※この2組の関係は複雑に入り組んでいてここでパッと説明できないので、興味ある方は以下の記事あたりをご一読ください↓
しかしながら今現在は和解をしていて、2016年の野外フェスで同じステージに立ったり、宇多丸さんのラジオにBOSSが電話出演したり、Mummy-DのソロにBOSSが参加したりといい感じで交流が続いている。
そんな文脈を踏まえて RHYMESTERとBLUE HARBのLIVEを必ずセットで見たいと思っていたんだが、 残念ながらRHYMESTERには間に合わず 泣
幕張に向かっている最中にSNSを見ていると、RHYMESTERのオーラス曲がBRAHMANとのコラボによる『耳ヲ貸スベキ』じゃないか!?
『耳ヲ貸スベキ』といえば
「北の地下深く技磨くライマー」
というリリックの一節がBOSSのことを指しており、当時エールのつもりで発したこの部分が後のビーフのきっかけになってしまったという曰く付きの曲。
これを最後に持ってきてブルーハーブにパスを出す RHYMESTERとBRAHMAN。
じゃあこれにどうアンサーするのか?っていう下世話な目線も込みでブルーハーブのLIVEを見ていたのだけど、見事にライムスターのエールにのっからない。
完全スルー。
BOSSはそんなわかりやすい撒き餌にそうやすやすと喰いついたりなんてしない。
でも、ただスカして終わらせたりもしない。
ここでは単に焦らしていただけで、本当のアンサーはもっと後に取っておいていたのだ!
大トリであるBRAHMANのステージでコラボ曲を披露したBOSSが去り際に
「ライムスター!!」
とMummy-Dさん、宇多丸さんを呼び込んだのである!!!
おそらく今までそんなこと一度もしたことないはず。
ヒップホップ界隈の民が大騒ぎすること間違いなしなこの展開を目撃できたパンク・ハードコア界隈の民である我々は、これがいかに特別な場面だったのかをよく反芻し胸に刻みこむべきなのだ。
こんな事態を起こせるのはひとえに徳を積んできたBRAHMANの為せる技なんである。
90年代の伝説 AIR JAM & さんぴんCAMP
"BRAHMANの為せる技"で言うと、前の記事でも触れたSHKKA ZOMBIEと RHYMESTERを巻き込んだ『KOKORO WARP』ね。
BRAHMANはいわゆるハイスタを筆頭に90年代にムーブメントを起こしたパンク・ハードコアシーンのバンドである。このシーンを形成するバンドはAIR JAMという伝説のインディーズイベントと結びついていることから"AIR JAM世代"などと言われている。
そのAIR JAMに対応する90年代ジャパニーズヒップホップシーンにおける伝説のイベントがさんぴんCAMPである。
96年に日比谷音楽堂で開催された"さんぴんCAMP"は、RHYMESTERにSHAKKA ZOMBIE、キングギドラやYOU THE ROCK、BUDDHA BRAND、ECDなど当時のジャパニーズヒップホップシーンをゼロから作り上げたグループ・ラッパーが一堂に介した伝説のイベントなのだ。
そして彼らがいわゆる"さんぴん世代"である。
『KOKORO WARP』の光景を見ていて、ジワジワ込み上げてきたのは
「今日の尽未来祭…AIR JAMとさんぴん CAMPが融合してね…?」
と…いう思いだったのである。
パンク・ハードコアとジャパニーズヒップホップという2つのシーンがBRAHMANを媒介に融合している…。
もっと言うと尽未来祭2025の3日間トータルだと、これまた90年代に一大シーンを形成していたV系界隈までもがドッキングしている…。
かってTOSHI-LOWくんは何かのLIVEで
「アカレンジャー(主役)になりたかったけどなれなかった。俺たちはクロレンジャー(脇役)なんだ」
ってことを言っていた。
つまりハイスタのようにパンク・ハードコアシーンを代表する絶対的な象徴・主役になりたかったけど、なれなかったんだ、ってことを言っていて。
でもさ、パンク・ハードコア、ヒップホップ、V系というこの3つのシーンをひとつにしてしまうなんて、そんなことはハイスタにもできないことで。
いかにTOSHI-LOWくん始めBRAHMANの4人が徳を積んで悟りを開いた、ジャンルレス/ボーダレスな唯一無二の存在なのかというのを、ちょっとした畏れとともに感じてしまった『KOKORO WARP』だったんである。
BRAHMAN再生大学の為せる技で…
最後にちょっと下世話な話しを。
TOSHI-LOWくんとBRAHMANはこれまでに幾度となく亀裂が入っていた人間関係を再生させたり、活動が止まっていたバンドを再開させてきたりしている。
例えばハイスタの健くんと難波くん。
SUPER STUPIDのイッチャンとジャッキーとヒロシくん。
ソウルフラワーユニオン中川敬とHEAT WAVE山口洋。
それに今回の尽未来祭でのヌンチャクやRiddim Saunter、(関係は回復していたけど) RHYMESTERとTHA BLUE HARBのリレーなど。
特に最初の3組はかなり無理めな状態だったところから、TOSHI-LOWくんが仲介役となったことで奇跡の関係修復を果たしている。
その実績とインパクトたるや、完全に音楽業界の"リユニオン請負人"としか言いようがない見事な裏の働きっぷりである。
幡ヶ谷再生大学ならぬ、BRAHMAN再生大学。
そのことを今回の尽未来祭で改めて確信した。
というこで、ここら辺でそろそろこの長い記事の筆を置くことにするんだけど、最後にもうひとつだけ。
是非とも次回40周年の尽未来祭ではBRAHMAN再生大学の威光のもとに、Dragon Ashとキングギドラの共演をよろしくお願いしたい………!!!
そして是非とも『Gratefull Days』をよろしくお願いしたい………!!!(はい、下世話)


コメント