青溟剣を使えるチートオリ主を生やして雲嶽山メンバーを救済したろwww   作:龍角散ガム

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第一話

 

 

「うああああああっ!!」

 

 

「きゃああああっ!!」

 

 

「痛い......全身の骨が痛む......」

 

 

「定期的に解悩水を飲めば治るってロア先生が言っていたのに......どうして......!?」

 

 

「助けて......誰か......」

 

 

夜の澄輝坪に、引き裂かれたような悲鳴がこだまし、湿り気を帯びた風を震わせる。

瓦屋根のあいだからは火柱が立ち上り、地表はミアズマに呑まれて紫の瘴気を噴き上げていた。まるで街そのものが、底なしの闇に呑まれながら喘いでいるかのようだった。

 

この惨状のすべては、讃頌会とロア先生の仕組んだものだ。彼らの目的はただひとつ———街の人々を「始まりの主」への供物として捧げること。そのためにロア先生はポーセルメックスと市民の対立を煽り、救いの名で「解脳水」を振る舞った。

 

しかしそれは癒しの薬ではなく、侵蝕の進行を覆い隠す“偽りの水”にすぎなかった。知らぬまま飲み続けた人々は、静かに、しかし確実にミアズマに蝕まれていた。そして今まさに、限界の臨界点を越えて暴走を始めていた。

 

儀玄さんたちは負傷者を必死に治療し、侵蝕症状を抑えようとしている。だが、助けを求める市民の数はあまりに多く、全員を救いきれないのは、誰の目にも明らかだった。

 

 

「こ、こんなにたくさん......全員なんてとても助けられませんよぅ!!」

 

 

「だが、福姐!!早くしないとみんなからエーテルが溢れ出て街全体が覆われてしまうぞ!!」

 

 

「とはいえ、こちらの手も足りない......どうする......!!」

 

 

焦りが空気を濁らせるその中で、儀玄さんだけがふっと何かを決めたように顔を上げた。

 

 

「皆、近くに寄れ!!このエーテルを調伏する術がある」

 

 

低い声は、混乱の中で不思議と重みを持って響いた。儀玄さんは全員に手を差し出すように言い、その手のひらに呪符の印を残した。

 

 

「これを持って方々へと散り、そこらにエーテル共振の印を置いてこい。しかるべきところに全て置かれ次第、私が散らばったエーテル同士を共鳴によって散逸させる。人々の侵蝕を和らげることができるはずだ。準備が終わったら知らせろ、いいな?」

 

 

「「「「はい/ああ!!」」」」

 

 

「では行け!陣を敷いてこい!!」

 

 

その号令を合図に、皆が一斉に駆け出そうとしたまさにその時。

 

 

「———ダメよ、儀玄」

 

 

鋭い声が、僕たちの足を縫いつけるように響いた。

 

そこに立っていたのは、儀玄さんと瓜二つの女性。しかし、その瞳には儀玄さんのものより深く、静かな怒気が宿っている。

 

 

()()!!」

 

 

儀降。

儀玄さんの実の姉であり、雲嶽山をともに束ねるもう一柱。彼女は素早い動きで僕たちの印を奪い取り、儀玄さんと正面から向き合った。

 

 

「儀降のお師さん!な、なんで止めるんですか!?」

 

 

潘さんが叫ぶが、儀降さんは答えず、ただ儀玄さんの頬を鋭く打った。そのあとで深く息を吐き、自分の感情を押し沈めるように言った。

 

 

「その術法は、エーテルを術者の身に取り込むもの。...つまり儀玄がやろうとしたのは、自分ひとりを犠牲にして、皆を救おうとする行為なのよ」

 

 

「「「「そんな......!!」」」」

 

 

驚愕に凍りついた僕らの視線の先で、儀玄さんはバツの悪い顔をしながら目をそらした。そして、ゆっくりと儀降さんへ向き直り、重い覚悟をにじませながらその口を開こうとしていた。

 

 

「しかし姉様......これ以外に皆を救う方法が......!!」

 

 

儀玄さんの声はかすれ、喉の奥で震えていた。

その痛切な叫びに、誰ひとり反論できない。

沈黙が、僕たちの胸を重く押しつける。

ただ、遠くで市民たちの悲鳴だけが、焼け落ちる街を映し出すかのようにこだましていた。

 

僕もリンも、ただ見守ることしかできなかった。差し伸べる力も、救える手立ても持ち合わせていない自分たちが悔しくて、拳を固く握ることしかできなかった。

 

その時。

張りつめた静寂を切り裂くように、明るく、しかし必死さを帯びた声が響いた。

 

 

「お兄ちゃん、みんな!!」

 

 

「瞬光!!」

 

 

現れたのは葉瞬光。

兄弟子・釈淵の実の妹であり、僕たちが適当観へ来た頃に入れ替わるように街の外へ旅立った姉弟子だ。

 

 

()()()()()()から事情は聞いたよ!でももう大丈夫——」

 

()()を連れ戻してきたからっ!!」

 

 

「「()()......??」」

 

 

僕とリンは顔を見合わせ、同時に首をかしげた。だが、適当観の皆の表情には、長い霧が晴れたように光が差し込んだ。

 

 

「おーおー......こりゃあ、とんでもねぇことになってんじゃねぇか」

 

 

僕の背後から、場違いなくらい能天気な声が転がってきた。振り向くと、そこには飄々とした笑みを浮かべた一人の男が立っていた。

 

 

「師範!!」

 

 

福福さんが弾かれたように飛びつき、続けて潘さんや釈淵さんも駆け出す。

 

 

「よぉ、みんな。元気にしてたか?飯はちゃんと食ってる?潘、お前ちょっと太ったんじゃねぇか?釈淵は......うん、変わらず堅ぇな。福福、お前さんは相っ変わらず可愛いなぁ!おーよしよし!」

 

 

「わ、わふっ......もぅっ!私は猫ちゃんじゃありませんよぅ〜!......って、師範!!いまそんなことしてる場合じゃ——!」

 

 

「そうですよ師範!!街のみんなが危ないんです!!」

 

 

「時間が......もうありません!!」

 

 

「———わかってるさ」

 

 

穏やかだが、確かな覚悟を宿した声。師範は儀玄さんと儀降さんのあいだを静かに通り抜け、背の大剣へと手を添えた。

 

 

㬢聖(ギショウ)......」

 

 

㬢聖(ギショウ)さん......!!」

 

 

「大丈夫だ。二人とも、安心しな」

 

 

ぽん、と肩を叩くと同時に、師範は剣へと力を注ぎ込む。刃が淡く震えたかと思った次の瞬間、剣身から神々しい光が奔り、光が形を取って複数の剣へと分離していった。

 

浮遊する光の剣を引き連れ、師範の身体がふわりと宙へ昇る。

街全体を一望できる高度に立つその姿は、ただの人ではなく“神様”のようだった。

 

 

 

 

 

「我は、雲嶽青溟剣の剣主」

 

 

 

 

 

風が止まり、空気が張りつめる。

 

 

 

 

 

「そして、雲嶽山十二宗主、㬢聖」

 

 

 

 

 

その名を告げた瞬間、光の剣たちが一斉に震え、周囲の空が光に染まった。

 

 

 

 

 

「この剣が天地を覆い、邪を祓う!!」

 

 

 

 

 

㬢聖さんの剣が振り下ろされると、周囲の剣が流星のように澄輝坪へと降り注いだ。それぞれが大地に突き刺さり、町全域を囲む巨大な陣を描き出す。

 

刹那、陣から放たれた光が波紋となって広がった。光はミアズマに侵食された人々を優しく包み込む。紫色の邪気は苦悶のうねりを上げて剥がれ落ち、光に飲まれ、浄化されていった。

 

夜の空が、息をのむほどの蒼光に照らされる。

まるで、街そのものが再び呼吸を取り戻すかのように。

 

 

「侵蝕が......治った!!」

 

 

「俺たち......助かったんだ......!!」

 

 

「ありがとうございます......本当に......ありがとうございます......!!」

 

 

澄輝坪のあちこちから、泣き笑いの歓声が沸き起こる。さっきまで絶望に沈んでいた人々が、まるで生まれ直したように息を吹き返していた。

 

㬢聖さんの力によって、街を覆っていたミアズマは根こそぎ浄化されたのだ。兄弟子、姉弟子たちも声を上げて喜び、儀玄さんと儀降さんは互いを安心させるように、静かに微笑みを交わしていた。

 

蒼光の余韻に彩られた空を背景に、僕の視線は自然と宙に浮かぶ㬢聖さんへ吸い寄せられた。圧倒的な力。だが、ただ強いだけじゃない。触れた者の痛みごと包み込むような、神々しさと温もり。

 

そして、ふと目が合う。

 

あの瞳は、優しくて、揺るぎなくて。胸の奥にひと筋の熱を灯すような強さを持っていた。

 

 

「これが、雲嶽山の宗主の力......!!」

 

 

やがて㬢聖さんは、ふわりと地上へ降り立った。仲間たちが歓声とともにそのもとへ走り寄る。

 

 

「私たちも行こう、お兄ちゃん!!」

 

 

「......ああ!!」

 

 

足が自然と前へ出る。

胸の中で、何かが確かに動き出していた。

 

———これが、僕たちパエトーンと、すべてを救う雲嶽山十二代宗主・㬢聖。

その運命的な出会いの瞬間だった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

まだ街全体が寝息を立てている早朝。澄輝坪の外れ。誰ひとりいない海岸に、㬢聖はひとり立ち、水平線の色の変化を黙って眺めていた。

 

夜明け前の海は青とも黒ともつかず、そこに立つ㬢聖の背中は、どこか孤独で、どこか厳かだった。

 

そんな静けさに、まるでセールストークのような軽い声が割り込む。

 

 

「昨晩はお見事でしたね、㬢聖さん」

 

 

「おん?ダイアリン嬢じゃないか。俺はてっきり、照ちゃんが来るんだと思ってたよ」

 

 

「......私としてもね、あんたになんてできれば近づきたくなかったんですよ。上からの指示じゃなければ、絶対に来てません」

 

 

「ひっどい言い草だねぇ。()()()()()()()()()()()()んだから、そこまで邪険にしなくてもいいじゃないか」

 

 

「確かに()()()()()()()()()()()()()()()みたいですけどね。嫌な気配が消えてるわけじゃありません。......あんたの周りに漂う幾つもの死者の魂のね」

 

 

「———ほーん?で、何の用?俺には俺の使命がある。だから黒枝には入らないって前にも言ったろ?」

 

 

「分かってますよ。ですがねぇ、どうしても“上の人たち”は、あんたの力を借りたいらしくて。......そこで、提案が出たんですよ」

 

 

ダイアリンは薄く笑みを浮かべ、海風に揺れる髪を耳の後ろへ流した。

 

 

「青溟剣の使い手であり——」

 

 

潮騒が、ふたりの間を通り抜ける。

 

 

 

()()のあんたと、協定を結びたいんですって」

 

 

 

 





なお、曇らせないとは言ってない
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