「黒字リストラ」が相次ぐ。明治ホールディングスの希望退職募集のニュースに象徴されるように、50代以上の管理職がターゲットになっている――。
メディアの関心も高く、私も某ネットテレビの番組に呼ばれ、他の出演者の方たちと議論させていただいた。そこで何度も繰り返されたのが「自己責任論」だった。また、40代後半の某大手企業の社員からは、「昇進できないとモチベーションが下がる」との声があった。
前回は、新刊『「老害」と呼ばれたくない私たち』から、「新世代型中高年」とは何者なのかをテーマに取り上げた。2回目の今回は「会社員のよりどころ」をテーマに、新刊の内容を抜粋しながらお届けする。
2012年12月31日、朝日新聞が「赤字にあえぐパナソニックグループに、従業員たちが『追い出し部屋』と呼ぶ部署がある」と報じると、メディアは一斉に「追い出し部屋、許すまじ!」と企業をたたいた。
この頃の世間は、おじさんやおばさんの味方だった。リーマン・ショックによる「派遣切り」もあり、企業への怒りが社会全体に渦巻いていたのだ。
ところが、経営者たちは「追い出し部屋はダメか。ならばこれで!」と、希望退職という名のリストラを拡大させた。これにより「おじさんかわいそう報道」の潮目が変わった。
「希望」という言葉の響きからか、高額な退職金への嫉妬なのか――。
いつしか「おじさん=気の毒な人」という同情の空気は消えた。
代わって台頭したのが、「中高年にとって新たなキャリアのチャンス」「会社に依存しない時代」などという識者たちの論調、そして「自己責任」論だった。
しかし、現実はそんなに単純ではない。
ターゲットにされた人たちは、屈辱感、孤立感、そして不安感にさいなまれていた。リストラへの恐怖は逆に会社への依存を高め、長時間労働、過重労働に拍車がかかった。
なかには、「自分は他の奴らとは違うことを証明してやる!」と意気込む人もいるが、この熱さが、逆にパフォーマンスを低下させ、周囲との間に軋轢(あつれき)を生む原因になりかねない。「過剰努力」と呼ばれる現象だ。
「自己責任」論の浸透は、まだリストラ対象ではない世代にも影を落とした。
40代の氷河期世代にフォーカスしてインタビューしたところ、「昇進できなかった」ことに強い屈辱感を抱いていたのだ。正直なところ、彼らにとって昇進が、そこまで意味を持つ関心事だとは思っていなかったので驚いた。彼らはみな「何者にもなれないまま40代になってしまった」と嘆いた。
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