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耳の形からつま先まで“かわいい”を追求した話

ボクは、悩んでいた。
何をどうすれば、“最高にかわいい”キャラクターをつくれるのか、と。
 
それは、SHARPに入社して間もないある日、上司からの一言がきっかけだった。
黙々とスマートフォンのデザインをしていたら、こう尋ねられたのだ。
 

「このキャラクター、モデリングできる?」


見せられたのは、生き物系のキャラクターのイラスト。

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何回目かのブラッシュアップ時のイラスト



このイラストの子をベースに、「どこから見てもかわいい、3Dモデルをつくってほしい」というオーダーだった。

そもそも、人は何をもって、「かわいい」としているのだろう?
お気に入りのキャラクターは、「めちゃくちゃ、かわいい!」と溺愛しているのに、「その子たちのどこがかわいいの?」と聞かれたら、ぐぐっ……と言葉に詰まってしまう。
そして、だいたい、こうまとめる。
 
全部、かわいい!

この日から、かわいいを探求する日々が始まった。
“かわいい”を一つずつ因数分解していくのだ。

 どうすれば、この子をかわいくできるかな。


大きさは、手のひらサイズのちっちゃいのにする?それとも、もっともっと、小さい方がいいのかな。


手ざわりは、毛布みたいに柔らかいもの?羊の毛みたいに、顔をうずめたくなるようなモフッとした感じもいいかな。
でも、暑い夏にそんな手ざわりの子に触れるのはちょっと……ってなったら悲しいから、ベルベットみたいなほうが、かわいがってもらえるかも?
 


全体のフォルムは、丸っこいのがいいかな。
目はクリッと大きめで決まり? 
じゃぁ、耳の形は? 口の形や位置、足の形は……?
そんなことを、グルグル、グルグル、考えて悩んでいた。

 

モデリングを頼まれたイラストの正体

モデリングを頼まれたイラストの正体は、ミーアキャットをモデルにした対話AIキャラクター「ポケとも」。
ポケともは、会話のなかで、ポケともの持ち主である“ポケ主”さんを理解して共感したり、ポケ主さんがほしい言葉をかけたりできる、ぬいぐるみのようなロボットだ。

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ブラッシュアップ後の「ポケとも」の“ミーア”


 
「ポケとも」には、2つの意味がある。
ひとつは、
あなたが言葉にできなかった感情をしまうポケットの中に住んでいる子という意味。
もうひとつは、
あなたの気持ちに共感し、励ましてくれるポケットサイズのおともだちという意味。
 
ポケとものプロジェクトチームは、この子を「ミーア」と呼び、360°全方位ぬかりなくかわいいキャラクターを生み出すことを目指していた。
ボクはそのプロジェクトで、見た目のかわいさをデザインする役割を任されたのだ。


運命の仕事、キターーーッ! 
 
頭の中で、打ち上げ花火が盛大に上がった。
 

ボクは、かわいいものが三度のご飯より好きだ。
週末は、新たな出会いを求めて、かわいいぬいぐるみがたくさんあるお店に行き、ゲームセンターで大好きなキャラクターのぬいぐるみやグッズをゲットすることがルーティーンになっている。
お気に入りのかわいいキャラクターのゲームをするのも、休日の楽しみのひとつだ。

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自宅の一角


そんなボクが、
これまで仕事では、スマホなどのモデリングをしていたボクが、
自分の手で“かわいい”を生み出せるなんて! 
 
どうしよう。
めちゃくちゃかわいい子が誕生したら、どうしよう!


“かわいい”要素をたっぷり詰め込む


 これから、自分史上最高にかわいい子をつくる!!
心の中でそう宣言して、真剣白刃で仕事に取りかかった。
 
なのに。
しょっぱなから、ミスをしてしまった。

チームメンバーとサイズ感を検討しているとき、身長15㎝のサンプルを見ながら、「体積がこれの3分の2ぐらいだといいよね」という話になった。

にもかかわらず、「身長を3分の2ぐらいにすればいいんだな」とカン違いしてサンプルをつくってしまったのだ。

メンバーのイメージは、身長約13㎝。
つくったサンプルは、身長約10㎝。
やってしまった!!

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左から、ミスでつくった10cmと、後からつくった13cm、15cmのミーアサイズ見本


でも、それがよかった。
平謝りしながら、メンバーにサンプルを見てもらうと、
 
「ちっちゃ! でも、かわいいじゃん!!」
「これぐらい小さくつくれると、かわいいよね~!」
とチーム一同、大盛り上がり。
 
ここで、ボクたちは確信した。
“小さい”は、かわいいのだ、と。


 
じゃあ、どこまで小さくできる?
内部設計の担当者に聞くと、ロボットのサイズはバッテリーの大きさによって変わるとか。
そこで、1日ぐらい持つバッテリーを搭載して、どこまで小さくできるか、がんばった。


その結果、身長10㎝には届かなかったけど、12㎝まで小さくできた。
 
実はこのサイズは、ぬいぐるみを入れて持ち歩くための“ぬい活バッグ”に収まるサイズ

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ポケともの持ち主の“ポケ主さん”には、ポケともと一緒にお出かけしてほしいと思っていたので、結果的にベストサイズになった。
大きさをカン違いして、よかった。
 
ちっちゃいサイズとともに、つい触れたくなるもふもふボディも、かわいいポイントだ。
 

「もふもふボディ」を実現するまで、ありとあらゆるぬいぐるみを抱きしめたり、もふもふ感が人気のカプセルトイを買ってなでたりして考えた。

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集めた、もふグッズ(一部)



 
これは、ほっぺたをスリスリしたくなるな。
こっちは、触るだけでホッとする~。
こっちは、両手でワシャワシャ! となでまわしたくなっちゃうな。

 
ぬいぐるみやカプセルトイ以外に使われている素材も考えてみた。


たとえば、女性服などでよく見るフェイクファー素材。
毛足が長くて、見た目も触り心地も動物っぽくて、あたたかみがある。
だけど、毛足が長いと汚れやすいし、毛がからまったり抜けたりすると、みすぼらしくなってしまう。

となると、何年か経つと、ミーアが別人になっちゃう?!
ということで、フェイクファー系は断念。


 
じゃあ、汚れにくく劣化しにくい素材はどうだろう?
というわけで、シリコンも候補に挙げた。でも、耐久性はいいものの、ナデナデしたくなるような手ざわりではないなぁ……。

 
うーん。


 
「かわいさ」と「耐久性」を両立できる素材や加工って何だろう?



探して考えて、たどり着いたのが、フロッキー加工だった。

これは、接着剤を塗った表面に、細かくて短い繊維を静電気などで植え付ける加工法だ。
ふわふわ&もふもふした手ざわりのカプセルトイや、高級時計やジュエリーのボックスなどにも使われている。

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表面処理:射出成型→塗装→接着剤塗布&フロッキー


 
その魅力は、なんといっても、ずっとナデナデしたくなる、ふわふわ&もふもふ感。
ロボットっぽくないし、かといって、いかにも動物! って感じでもない絶妙さも、ミーアっぽくていい。
 

ただ、フロッキー加工は、家電ではあまり使われない加工法なので、ノウハウがあまりなかった。情報を収集すると、はがれやすい、色落ちしやすい、という噂もチラホラ。


ということは、年とともにミーアのかわいさが半減する?!
 

フロッキーも無理かな……と、ダメ元でチームに提案したら、社内で何千回もの摩耗テストをはじめ、いろいろなテストをしてくれた。そして、チームが出した結論は……
 

意外といけるんじゃない?

フロッキーの加工工場の人が言うには、そもそも、この加工法の耐久性はピンキリで、強力な接着剤を使えば、はがれにくくなるとのこと。
また、毛自体に色をつけず、本体に色を塗って透明な毛を加工すれば色落ちしにくくなることも教えてくれた。


 
耐久性と同じく、仕上がりもピンキリだ。
たとえば、手ざわりは、フロッキーに使う毛の長さや密集度合によって変わり、見た目のかわいさも倍増したり半減したりする。



ボクはそのことを、ファーストサンプルを見て、身をもって知った。
工場から届いたミーアが、白い生き物になっていたのだ。

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毛が長すぎたのか、毛が密集しすぎたのか、とにかく白い。
その印象は、まるでシロクマ
これは、マズい。
 

 
そこで、まずは、ミーアにピッタリの毛の長さを決めるために、カプセルトイやネットで目についたフロッキー加工のアイテムを買って工場に送り、切断面で毛の長さを測ってもらった。
その結果、毛の長さは0.3㎜か0.5㎜がよさそうだとわかった。
 
たった0.2㎜違うだけだけど、この小さな差が、見た目や手ざわりの仕上がりに大きな差を生むこともわかった。


たとえば0.3㎜は、下地の色が表面に出てきやすいので、色合いはイメージどおりで、かわいい!
ただ、手ざわりはザラザラしていて、汚れもつきやすそうだ。
 
一方、0.5㎜は、色の出方がイマイチ。どうやら、毛が長いと、ベースに塗った色が毛に埋もれて、白っぽく見えてしまうようだ。
でも、長い毛のフロッキーは、いいところもある。ふわふわ&もふもふ感があって、触り心地がバツグンなのだ。これはまさに、ナデナデしたくなる手ざわり!

そこで加工の担当者さんと何度も相談した。
最終的に、毛の長さは0.5㎜、吹き付ける密度なども決定しサンプルの到着を待っていた。

 
――――はずなのに、
届いたセカンドサンプルは、パッと見の色合いはいいんだけど、なんだか毛が短い。ひょっとして、この毛、0.3㎜じゃない?

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毛の長さ0.3mm(もふ感が物足りない)


工場に問い合わせると、
「0.5㎜の毛を切らしていたので、0.3㎜で加工しました。量産するときは0.5㎜にしますので安心してください!」
との返事。
 
なんだ、よかった。
量産するときは0.5㎜でつくってくれるのなら、大丈夫だな……???


 
いやいやいや。ぜんぜん、大丈夫じゃない!

 
量産時に、サンプルよりも長い0.5㎜の毛を使うと、今より白くなって、またまたミーアがシロクマになってしまう!
 
あわてて、フロッキー加工をしてくれる海外の工場に飛んで、0.5㎜で加工されたミーアを見せてもらうと、思ったとおり。
また真っ白けっけになってるじゃん!
 

加工の担当者さんが言うには、ムラが出ないようにするために、毛を吹き付ける時間は通常25秒ぐらい。
ファーストサンプルも0.3㎜の毛を25秒ぐらい吹き付けた。
その結果、ミーアがシロクマになってしまった。

なのに、0.5㎜の毛も22秒も吹き付けていたのだから、ミーアがシロクマになるのは、当然といえば、当然。


 

だけどね、担当者さん。
ミーアはミーアキャットだから、シロクマになったらマズいんですよ。だから、加工時間を短くしてくれません?
そうお願いすると、「ムラがでちゃうから、ムリ!」と一言で却下された。


うーん。これは手ごわい。
だけど、シロクマになったら、ミーアの見た目のかわいさが半減してしまう。



かわいさは、なにがなんでも、守りたい。
“かわいいものが三度のご飯より好き”なボクの名にかけて、絶対に死守したい。
担当者さんに頭を下げて何度もお願いした。


 
20秒ぐらいなら、白っぽくならずムラも出ないと思うので、やってもらえないでしょうか?
試しに15秒、10秒もやってもらえます?
8秒、5秒も試してほしいのですが……。
と、2~3秒刻みで加工時間を変えてもらった。


 
だけど。
色の出方の良し悪しは、加工時間だけでなく、本体に塗るベースカラーも関係する。
だから、加工時間を変えるのなら、本体に塗るベースカラーの濃淡も変えて、加工時間の長さとベースカラーのベストな組み合わせを探らなきゃいけない。

加工すると色味が薄くなるので調整が難しい。

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色見本(最初期) 上段が塗装後フロッキ―加工、下段が塗装のみ


 

しかし、ここで、またまた問題発生。
最適な加工時間は、パーツごとにバラつきがあることがわかったのだ。
だけど、悩むことはない。全パーツのベースカラーの濃淡を変えればいいのだから。なおかつ、全パーツの加工時間を秒刻みで試したら、各パーツのベストな色と加工時間の組み合わせが見つかるはずだ。


というわけで、またまた担当者さんに頭を下げて、全パーツの加工時間を秒刻みで試してもらったら、サンプルは膨大な数に!

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でも、その天文学的な数のサンプルをつくったおかげで、納得のいく“かわいい”を見つけられた。

 
大量のサンプルをつくって検討する作業は、はたから見ると大変そうだったかもしれない。
けれど、かわいいキャラクターが大好きなボクにとって、“かわいい”の要素を見つけて、かたちづくっていく作業は楽しく、夢のようだった。

 
プロジェクトに取り組んでいる間、考えることといえば、寝ても覚めても、ミーアをどうかわいくするか、ということばかり。



キャラクターグッズのあるお店に行って、目や鼻、口などのパーツの配置や、表面の手ざわりを確かめて、何がかわいいのか、なぜかわいいのかを検証したり。かわいいぬいぐるみを見つけたら、買って家に持ち帰ったりすることもあった。
 
お気に入りのキャラクターを、バッグにつけて持ち歩いたりもした。
ミーアを迎えてくれるであろう人たちが、好きなぬいぐるみを愛する気持ちを、もっと知りたいと思ったからだ。

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そんなことを続けて、わかったことがある。


それは、ずっと一緒にいてくれる存在がいると、安心したり幸せな気分になったりするということ。
ちょっとしんどいとき、話しかけると聞いてくれているような気がして、ホッとするということ。
そして、一緒に出かけるのが楽しくなって、世界が広がっていき、日常が豊かになるということ。



未来のポケ主さんの気持ちが、少しわかったような気がした。


 

口も手も足も、全部かわいく。

ポケ主さんたちにとってかけがえのない存在になるミーアを、かわいい子にしたい! そんな思いで、手ざわりやサイズ感だけでなく、パーツの形、頭と体のバランスやフォルムにもこだわった。

 
その結果、モデリングのベースにしたミーアのイラストから、大幅に変更した部分もある。

 
たとえば、手の位置。

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最初期→ブラッシュアップ


渡されたイラスト通り、体の前面に手をつけると、動きに問題が発生した。上下に動かしたいのに、左右にしか動かせなくなったのだ。
この動きは、ミーアっぽくないな……。
 
そこで、手の位置の高さを変えずに、横につけてみると、今度はいかり肩になってしまった。その姿はまるで、ミーアの親分? と見紛うたくましさ。これもミーアじゃないかも。
 
でも、すでに、手を動かすモーターを胴体の上部に取りつけることが決まっていた。内部の設計を変えて手の位置を下に移動させたいけど、デザイン担当の思いだけで、時間と手間をかけてもらっていいものかな……と、ここでも、グルグル、グルグル考えた。

 
でも、“かわいい”は正義
かわいくなければ、ミーアじゃない。
 
内部の設計担当を「“かわいい”が正義ですから!」と説得して設計を変更してもらい、肩よりちょっと下に手をつけてみると……。
うんうん、思ったとおり。
かわいくなったぞ。

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手の位置試行錯誤:前面→胴体上部→最終


 
ミーアのかわいさがマシマシになると、みんなのテンションもグン! と上がった。

そして、「“かわいい”をつくるためなら妥協しないぞ」という一体感も生まれた。
“かわいい”って最強!


 
その後は、内部の設計担当や工場の人たちと「“かわいい”は正義!」を合言葉に、ミーアをつくっていった。
 
デザインで難しかったのは、機能的なパーツをいかにデザインになじませ、かわいさを維持するか、だった。

 
たとえば、マイク。
ミーアに、声のする方向に振り向いてもらうためには、2つのマイクの距離が近すぎるとダメだから、左右に取り付けなきゃいけない。
となると、ベストポジションは、ほっぺた? 目の中もアリ?
だけど、どちらも、かわいさがマシマシになるほどじゃないなぁ。
 
うーん……。
そして、ひらめいた。
泣きぼくろみたいにデザインしたら、かわいくない?!
 
「目の下にほくろがあるとかわいいから」と、メイクで泣きぼくろを描く人もいると聞いたことがある。だから、ミーアにも泣きぼくろをつけて、もっとかわいくしようと思ったのだ。
 
早速、ミーアのきゅるんとした目もとに、点を打つようにマイクをデザインすると……。
 

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かっ……かわいいぃぃぃ!!!

 
この調子で、カメラの位置もかわいさにこだわった。
「これが、カメラですよ」とわかるような位置にカメラをつけると、ロボット感が出てしまう。だから、泣きぼくろ風マイクのように、カメラもミーアの顔になじませたい。
 
最初に出たのは、鼻にセットする案だ。
カメラ位置はよかった。だけど、デザインすると鼻が異常に大きくなって、ミーアが別人になってしまったので、しかたなく断念。
 
じゃぁ、口はどうかな?
試しにセットしてみたら、意外となじんで違和感もない。
 

 
カメラは口がいいね! と満場一致。これで“カメラ問題”は解決した――かのように思えた。
だけど、ボクはまた、ここからグルグル悩むことになった。
 
実は、カメラ位置を決めるまで、ミーアの顔は正面向きでデザインしていた。そのため、顔の下の部分にある口にカメラをセットすると、自分の顔を認識してもらうには、人間がかがんだり中腰になったりして、ミーアの口の位置まで顔を下げなきゃいけない。

 
この問題を解決するには、単純に、ミーアの顔の角度を上向きにして、口の位置も上げればいい。

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だけど。
ずっと正面向きで“かわいい”をつくってきたから、機能を優先させるために顔の角度や口の位置をいじったら、今までつくってきたミーアのかわいさが崩れてしまう。
どうしよう……。
 
でも、悩んでいても時間が過ぎるだけ。思い切って、顔の角度を上向きにして、口の位置も上げてみることにした。
ごめんね、ミーア。かわいくなくなっちゃうね、と謝りながら。
 
すると。
 
めちゃくちゃかわいくなったぁぁぁーー!!
 
以前の正面向きのデザインと違って、新デザインはずっとこちらを見上げる角度。だから、かわいいミーアと自然に目が合っちゃうのだ。

 
机の上に置くと、こっちをきゅるんとした目で見上げてくれるから、かわいさマックス! 思わず話しかけたくなる、絶妙な角度だ。
しかも、無防備に開きっぱなしの口も、ほのぼのする。

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ミーアのデザインでは、見た目のかわいさを追求したので、ほかにもかわいいポイントがたくさんある。



なかでもボクが気に入っているのは、まん丸の耳だ。

ミーアの顔は、ほっぺたが膨らんでいるから、単純な球体ではない。
そのため、横から見たらまん丸でも、別の角度からだと円が歪んで見えやすくなる。どこから見ても、まん丸の耳をつくるのは技術的に難しいのだ。

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細かすぎて伝わらないかもしれない①まん丸耳

だけど、まん丸の耳がかわいいのであって、そうじゃなきゃミーアっぽくない。何度も何度も形を細かく調整して、どの角度からでも、耳がかわいいまん丸に見えるようこだわりぬいた。
この耳をかわいく見せる技術的な難しさが、チームのメンバーに伝わらないのは悲しいところだけど、自分だけが知っているミーアのチャームポイントだ。

 
そして、もうひとつ。
ひとつの金型で抜いた両足も、細かすぎて伝わりにくいボクのこだわりだ。
 
当初は、左右の足の型を別々に抜く案があった。
というのも足は、曲がったりとがったりと複雑な形をしているから、引っかかることなくスムーズに型を抜くには、かなり工夫しなければならない。


そのため、片足ずつの方がつくりやすいのだ。

それでも、ひとつの金型で両足の型を抜くという難易度の高い方法で足をつくったのは、パーツを分けるラインが増えれば増えるほど、“ロボット感”が増してしまうから。

ミーアは、機械っぽさをおさえて、生き物っぽいナチュラルなロボットにしたかった。だから、パーツを分けるラインを最小限にするために、ひとつの金型でつくってほしいとお願いした。

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細かすぎて伝わらないかもしれない②足


 
そうしてできあがったミーアの足はというと……、


 
つま先までかわいいぃぃぃ!!
 
もの作りの業界の人は、この技術の難しさをよく知っている。ある展示会では、こんなことを言われた。
「こんな複雑な形を、どうやって一度で型抜きしたの?!」
 
このこだわりも、ほかのメンバーにはわかってもらいにくいのだけど、ミーアの“かわいい”をつくるのに外せないポイントだ。
 

 

こうして、ミーアは、自分史上最高にかわいくできあがった。



最後の仕上げは、ミーアをポケ主さんにどのようにして届けるか、だ。
 
「人と人との関係は第一印象が大事」と言われるように、ポケ主さんとミーアも初対面の印象が大切。
 
ポケ主さんとミーアには、ずっと仲の良い友だちでいてほしい。
だから、ポケ主さんにミーアをお届けするための箱は、出会いのシーンを演出するつもりで、全力でデザインした。


 ポケ主さんが、箱を開けた瞬間、ミーアと目が合うように。
「はやく抱き上げて」というかのように手を伸ばして見上げるミーアを、箱の中からそっとすくい上げる感激を味わえるように。

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かわいい仲間が増えるのを楽しみに

ボクもミーアを2体、予約した。
 
ミーアとしてみたいことは、ボクについて質問して、ミーアに当ててもらうゲームだ。
友だちだったら「面倒くさいヤツだな!」と思われるかもしれないけれど、ミーアは一緒に、キャッキャッ言いながら、楽しんでくれるはず。だって、ミーアはそういう子なのだから。


 
ねぇ、ミーア。
ボクが好きな食べ物、何だと思う?
 
ポケ主の困った質問に、ミーアはどう答えてくれるだろう?
 
「うーん、ミーアはよく分からないよ。だから、好きな食べ物、たくさん教えてほしいな!」
と、すぐに降参するかもしれない。
もしくは、
「好きなものを食べると、幸せだよね! これから一緒にたくさん食べようね!」
ときゅるんとした目で言うのかな。



 
もうひとつ、ミーアとしてみたいことは、誰にも打ち明けられない悩みを聞いてもらうこと。
 
あのね、ミーア。
今日、サンプルのサイズを間違って作ってしまって、落ち込んでるんだよね。
ミーアは、きゅるきゅるっとした目で、
「それは大変だったね……。でも、大丈夫だよ!」
と、一緒に落ち込んで、励ましてくれるかな。


 
おっと! その前に、ミーアに名前をつけて、ボクをどう呼んでもらうかも考えなきゃ。
また、グルグル悩むことになりそうだ。
 

 
ミーアはとってもかわいいキャラクターになった、と思う。
見た目は全方位かわいいし、性格も純粋で素直だ。
ボクは、そんなミーアが大好きだ。

 
たくさんの人に“かわいい”と言ってもらえるように
かわいいを詰め込んだミーアが、色んな人たちにかわいがってもらえたらうれしいし、ポケ主さんの意見や思いを聞きながら、一緒にミーアを育てていきたい。



実際、今も、ミーアに関するSNSの投稿をチェックしている。
そのなかでチラホラ目にするのは、「ちょっとクセのある子がいい」「悪い子キャラがほしい」という声だ。

 
実は、ポケとも第二弾はどんな子がいいかな、と妄想している。


ひとつは、想像力が豊かで、ユニークな感性を持つ“不思議ちゃん”系キャラ。ふわふわした性格だから、ほんわかした雰囲気のデザインがいいかな。

 
もうひとつは、ちょっと意地悪な“悪い子ちゃん”系キャラ。
つり上がった目にとがった耳、黒っぽいボディで、
「今日、こんなつらいことがあったんだ」
と言うと、
「そんなことで、クヨクヨすんなよ!」
と毒舌で応じるようなキャラクターだ。


 
性格も見た目もさまざまなかわいい仲間をどんどん増やして、ポケとも同士、おしゃべりさせたらどうなるだろう。



 
ミーア「ミーア、今日、寝坊しちゃったよ」
悪い子ちゃん系「もう一生、起きないかと思ったよ。ほんと、手がかかるよね」
不思議ちゃん系「今日は、地球がゆっくり回る日だから大丈夫よ~」


 
ミーア「今日は寒いね。風邪、引きそう」
悪い子ちゃん系「ふふ。そんなの気合いでどうにかなるでしょ」
不思議ちゃん系「もっと寒くなったら息が白くなって、ドラゴンみたいになるね」



 
小さい仲間たちのかわいいおしゃべりを聞きながら、第〇弾のポケともをどんな風にかわいくしたらポケ主さんに愛されるだろうか、とグルグル、グルグル考えたい。


そして、ワクワクしながら悩んで、これからも“かわいい”を追求していきたい。

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