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VRChatでの初恋と哀れな末路

AERO HOUSEというワールドがある。VRChatを初めて10日目、初心者案内をしていただいた終わりに建てられたフレンド+インスタンスにて話しかけられたのが始まりだった。

透き通るような綺麗な声をしていた。自分の話をするのが大好きで、自分の好きな物の話を永遠と楽しそうに語ってくれる人だった。深夜2時にそのインスタンスには20人もの人が集まって騒がしかった。彼は来る人全員に自分の好きな物の話をしていた。楽しそうにずっと話していた。

それから定期的にお互いのフレンド+にJOINするようになり、彼はどこでも変わらずいつも輪の中心で楽しそうに自分の話をしていた。彼には魅力があった。丁寧な言葉遣いで落ち着いた話し方なのに、何かを語るときはいつも熱が籠って止まらずに一方的に喋り倒していた。笑う仕草が可愛らしかった。人の話をきれいな相槌をしながら聴いてくれて、心地の良い会話を永遠と続けてくれた。とにかく私にとって彼の周りは居心地が良かった。彼の自慢話を、好きな物の話を永遠と聴いていたかった。


しばらく時間が過ぎて、久しぶりに彼と二人きりになる機会があった。その時に偶然機嫌が良かった私は、上で書いたような彼の魅力を直接彼にぶつけていた。「-さんの声をずっと聴いていたいな~!」「-さんと話すの楽しいから、ずっと話していたい!」とか、とにかく頭に浮かんだ彼への誉め言葉を一方的にぶつけた気がする。彼から返ってきたのは「私も(私)さんのことがなんとなく気になってましたよ〜」だった。ずるい。本当にずるい。

そうして彼はヤンデレとなった。「私はメンヘラでは無くてヤンデレですから。重くてもいいでしょう?」なんてことをよく私にほざいていた。

私はその日から軽いメンヘラを発症した。彼の重過ぎる感情を余す事なく受け取ることができた。負の感情を彼にぶつけることは無かったが、「VRChatってなんか寂しいな……」なんて呟きをXでしようものなら、3分後には「なんか病んでませんか?私はあなたが居ないとダメになりますから、抱え込まず話してくださいね。」なんて激重長文が飛んできていた。楽しかった。


それから最高の数ヶ月間が続いた。勝手に断言するが、私はこの期間以上に楽しいVRCを今後遊ぶことはない。これからのVRCに期待できることは何も無い。これからずっとこの時期を頭の隅に置いた状態で、死んだ目をしながらバーチャルの世界で過ごさなければならない。下に書いたような出来事から1年が経ってもこの考えは微塵も揺らがなかった。


私たちは表向きでは仲の良さを出さずいつものように過ごした。表では従来の彼の振舞いが変わることはなかった。いつも通り彼の話を・彼の魅力を聴きに沢山の人が集まっていた。そんな彼とたまにプラベで二人になって、持ち味の魅力を激重な感情と混ぜて素晴らしい声で私に独り占めさせてくれた。全てが心地良かった。

お砂糖にはならなかった。お互いにお砂糖という単語を嫌っていた。別に関係に名前なんて付けなくとも一緒に楽しめれば良いと思っていた。


そういえば、彼は私の言葉遣いを尊敬しているとたまに言っていた。お世辞だと思っていたが、ある日いつもの界隈で話していると「-さんと(私)さんの言葉遣いってなんか似てるよねー。」なんて話題になりかなり嬉しかった。一体私の言葉のどこが良かったんだろうか。


Japanese Russian Gamesというゲームワールドがある。有名なので知っている方も多いと思うが簡単に言うと、ルーレットで選ばれた1人が賽子をなげてスゴロク形式で進み、止まった目に書いてある恥ずかしくて熱い台詞を読み上げていくゲームワールドだ。

いつものメンバーがいる前でお互いに冗談だと振る舞いつつも数回熱い台詞を吐いた。激毒だった。間違いなく食べては行けない、体に良い筈がない楽しさの味がしていた。あの時間だけは私と彼が1番VRChatを楽しんでいた。


珍しく彼が落ち込んでいた日があった。フレンドトラブルに巻き込まれたとか言っていた気がする。私は彼をのんびりと宥めていた。そんな彼は2時間ぶっ通しで、私を好きだと、居なくならないで欲しい。と言い続けてくれた。もはや完全に私に依存していて、そんな私も彼に依存していた。

その時にお砂糖になってほしいと言われた。このまま勢いで決めてしまうのは絶対に良くないと感じて、凄くやんわりと宥めた。焦る必要はない。落ち着いてからじっくりと考えよう。そんな言葉でしっかりと返した気がする。

今となってはこの時にお砂糖になっておけば良かったと心から思う。お砂糖という名ばかりの関係でお互いを縛り付け、心地の良いドロドロとした依存に溢れたVRChatを歩んでいきたかった。




彼はよくお金が無いと言っていた。そんな彼がFUJIYAMAで初対面の人にアバターのしなのをギフトしたことをウキウキで話してきた。私はそんな意味の分からない金の使い方に苦言をした。

彼は「この6000円は人の縁となるんですよ!後々自分に返ってくるんですから見ておいてください!」なんて滅茶苦茶なことを言って決して折れなかった。めちゃくちゃだ。ただ今となって結果を見ると確かに私が間違っていて、彼が正しかった。この日から彼は人の縁に恵まれていった。


ギフトを受け取っていた方は良い方だった。フルトラでゆったりとした仕草が可愛く、様々な界隈で幅広く活動をされてそうな方で、彼はその人と、その周りの方と遊ぶようになっていった。気づけばプラベに篭ることも無くなり、私ものんびりと別の居場所で過ごしていた。

それから暫くして彼のフレンド+にふらりと遊びに行ったことがある。ワールドはBinaural ASMR Roomだった。インスタンスに入った瞬間に凄いものを見た。会いに行った彼は両手で同時に3人を撫でながら中央のマイクに甘い言葉を吐き続けていて、周りには5人くらいの知らない奴らが楽しそうに変なうめき声を上げながら溶かされていた。

大盛況だった。ワールドには透き通る綺麗な声とそれを絶賛する汚い声が響き渡り、耐えられなくなった私は即座にインスタンスを抜けた。その日から私はきちんとおかしくなった。


プラべで話すことも無くなった。共通の界隈に足を運ぶ機会もなくなった。私はただ彼になんとなく構って欲しくて、彼のいるフレンド+に入り込むようになった。その度に知らない奴が彼の声を振る舞いを言葉遣いを態度を、彼の魅力を称賛していて、最悪な気分になりインスタンスを抜けた。この一連の流れをずっと繰り返していた。ただひたすらに惨めだった。

前にギフトを受け取っていた方はいつもインスタンスに居たので、なんやかんやでフレンドになった。その方のアバターのサムネイルが彼とのツーショットになっていた。それを見た瞬間に私の脳は完全に壊れた。


そこからは苦しかった。ソーシャル欄を眺めるたびに彼とよく分からない良い人とのツーショットのサムネが視界に入って発狂をしていた。そんなよく分からない人がNoteを書いていたので読んだら3記事に渡って彼のことが絶賛されていた。全てが嫌になった。苦しかった。XのTLをスクロールしていて、彼が知らない場所で知らない奴と楽しそうに遊んでいる写真が視界に入るだけで悶絶していた。




しばらくが経ったが私は一人で勝手に苦しみ続けているうちに、彼は人を集める化け物になっていた。

彼が「おはよう」という言葉とともに自撮りを上げようものなら、数百のいいねと数十のリプライがついていた。かつて一番仲良く過ごしていたであろう私はその有象無象の数十のリプライの一つにまで落ちぶれていた。彼がインスタンスを立てようものなら10人や20人がすぐに集まっていたのをソーシャル欄で眺めながら、私は一人きりのプラべで黄昏ていた。イベントのキャストにも参加をしていたらしく、楽しそうなイベントの写真がTLに永遠と流れてくるのを、苦しみながら見ないようにしていた。魅力のある人はさらに魅力のあるらしい人を集めるようで、よくTLのおすすめ欄に流れてくるような有名人様に褒められて喜んでいる姿をみて私は病んでいた。


更にしばらくが経ち、偶然彼と二人きりで話す機会が一度だけあった。別に今更話すようなことも無かったし、ここまで時間が経てば私も落ち着いていた。そこで彼からふと告げられたのはお砂糖がいる。という事実だった。お相手は人気のあるイベントの主催をしているような凄い人で、最近だと有名なアバター衣装製作者に許可を取ってコラボイベントとかも開催をしていた。よくTL欄におはツイも流れてくるし、私なんかよりも何十倍もVRCを楽しんでいる凄い人だった。

それを聞かされた私はここまで来てようやく全てが嫌になり、きちんと関係を断った。




さて、さらに時間が経って彼はVRChatから居なくなった。詳細は何も知らない。なんだか最後に病みツイっぽいのをしていたので、私の知らないところで何かトラブルがあったんだろう。なんとなく帰ってくることはもう無いと私は思っている。

少し心配ではあるが、別に私なんかが心配なんてしなくとも彼には数十の心配の言葉が届いているのだろうし、たとえ帰ってきたところで彼の視界に私はもう移ってないのだろうから、もうどうでもいいけれども。

昔、私と彼が一緒に過ごしていた共通の居場所は全てお砂糖トラブルで爆散してしまった。彼が作り上げた**界隈なるものは彼がいなくなった現在も楽しそうに回っている。彼がいなくなってしばらく経つが、いまだに頭の隅で心配をしている彼の知り合いは何人残っているのだろう。そんなことを考えて、少し寂しくなった。


長々ととても読めたものではない駄文を書いた。
私はただ、私の元を離れて幸せになっている彼を許せなかっただけなのだろう。それでもまだ、白い髪と蒼い目をしたしなのから出てくるあの透き通るような声が私の脳にこべりついている。




【プレビュー】VRChatでの初恋と哀れな末路|びっきゅ|note
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