米国は11月20日、やや唐突に和平案をウクライナに示し、11月27日までに受け入れるように求めた。この和平案は、どうやらロシア案をベースとしたようで、28項目からなる。ウクライナが東部ドンバス地方を放棄し、軍の規模を大幅に縮小することなどが含まれており、ウクライナにとっては降伏に等しいものだったといえる。

 この和平案に対し当然ウクライナは抵抗した。米国の与党・共和党からもロシア寄りだという批判が出ていた。

 ウクライナは、ドイツ、フランス、イギリスの助けを求めて、米国の提示した和平案を修正した。内容は定かでないが、28項目は19項目に削減されたようだ。領土の問題も無条件でロシアに引き渡すのではなく、ウクライナに外交的手段でロシアに占領された地域を取り戻すことを目指すとし、ウクライナ軍の兵力を制限する内容を含まない。

 修正案で重要なのは、ロシアが再び侵攻した場合、米国がウクライナの防衛に介入する義務を負うという、北大西洋条約機構(NATO)5条のような規定を含んでいることだ。これこそ、ウクライナが最も求めていたものである。ウクライナの回答期限である27日は撤回されている。

 果たして、この修正案をロシアが受け入れるか。修正案はややウクライナ寄りに思える。ウクライナ軍の兵力を制限せず、ロシアが占領している領土の割譲やNATOに関する論点は保留されているからである。この修正案は既に24日、ロシア側に伝えられた模様だ。

 一方、ウクライナ各地では24日夜~25日未明、ロシアからの大規模な攻撃があった。これがロシアからの暗黙の回答ではないか。

 当初案がロシア寄り、修正案がウクライナ寄り、結局ロシアとウクライナの溝を埋めるような和平案になっていない。現実に戦闘が行われていることに加え、ロシアが力による変更で既に占有地がある。しかも、ロシアにはまだ自前で継戦能力もある。これに対し、ウクライナはロシアによる占有地を奪還できず、米国の支援なしでは継戦能力もない。

 この状況を現実主義でみれば和平案はロシア寄りになるが、ロシアの力による変更を認めるべきできないとする理想主義からみればウクライナ寄りになる。

 ウクライナとロシアは現実に戦闘状態にあるわけなので、和平案は両者の間で勢力が均衡し、厭戦(えんせん)ムードができていないとなかなか難しい。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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