わいせつ加害者「匿名」、誰のため? 女児の保護者が投げ掛ける問い
小学生の女児4人がわいせつ被害に遭い、男性が逮捕された。事件は公表されず、裁判でも男性の名前が伏せられた。被害者を守るための措置だった。だが、この対応に女児の保護者が異議を唱えた。
誰のためのプライバシー保護か――。保護者の訴えは、年5000人超の「秘匿」手続きに一石を投じることになった。【塚本紘平】
<主な内容>
・「自己中心的な犯罪」
・報道発表されず
・被害者の希望でも……
・上申書がポイントか
「しーっ」
長女は口の前で指を立て、次女に会話を続けないように促した。
「何かおかしい」と感じた母親は長女を問い詰めた。すると、泣きながら、知人の男性からわいせつな行為をされたことを告白した。
保護者から連絡を受けた愛知県警は2024年4月、無職の男性(56)を不同意わいせつ容疑で逮捕する。
その後の捜査で、姉妹へのわいせつ行為に加え、他の女児2人も被害に遭っていたことが判明。押収した男性のスマートフォンには女児の性的な画像データ358点があった。
名古屋地検は、強制わいせつや児童買春・児童ポルノ禁止法違反などの罪で起訴。25年5月、名古屋地裁は懲役4年の実刑判決を言い渡した。
判決によると、男性は16~24年、当時暮らしていた愛知県内の自宅で繰り返し、当時6~10歳の女児4人の下半身を触るなどし、その様子をスマートフォンで撮影した。
裁判長は「児童を一方的に性的欲望の対象とした陰湿で卑劣かつ自己中心的な犯罪で、常習性も顕著」などと指摘した。
ただ、この事件が一部の関係者を除いて知られることはなかった。
なぜか。
被害者を保護する「秘匿」の手続きが取られたからだ。
「周囲に話さない方がいい」
「(女児を)守るためにも周囲に話さない方がいい。報道にも事件のことを知らせていない」
男性の逮捕を受け、9歳だった娘が被害に遭った母親は県警の捜査員から、こう告げられたという。母親は容疑者の名前を公表するよう何度も要望。「報道されないことが悔しい」とも訴えたとし、こう話す。
「娘の名前が明らかになることは避けたい。でも、報道がないまま、男の名前が世間に知られないと、娘を守れないかもしれないし、新たな被害者がでるかもしれないと強く思っていました」
この時の対応について、捜査した警察署の幹部は「被害に遭われた家族それぞれの…
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