interview 石若駿:JAZZ NOT ONLY JAZZのために作った"匂い"が強い個の集合体(5,000字)
2024年、2025年と2年続けて行われた「Jazz Not Only Jazz」。
2025年の「JAZZ NOT ONLY JAZZ Ⅱ」は11月16日(日)午後9:30からWOWOWで放送・配信され、終了後~WOWOWオンデマンドで1カ月間のアーカイブ配信が行われる。
公式はこのイベントを以下のように解説している。
ジャズドラマー石若駿率いる次世代の実力派バンドが豪華アーティストと奏でる一夜限りのスペシャルセッション
その「石若駿率いる次世代の実力派バンド」とはどんなバンドなのか。ここでは詳しく説明されていない。
実はこのメンバーは少し変わっている。石若と懇意のミュージシャンばかりではあるが、例えば、MILLENNIUM PARADEやCRCK/LCKSのようなプロジェクトで共演している人たちはいないし、Answer to Rememberのメンバーはマーティ・ホロベックだけで、他にはSongbook Trioの西田修大がいるだけ。
つまり、普段石若が歌もののプロジェクトをやる際には一緒にやらないタイプのミュージシャンが多いということ。では、なぜ、このメンバーを選んだのか。
ここでは石若駿にそんな話を聞いてみた。というか、これはNiEWで掲載されているものと同じ日にやった取材の一部。NiEWのアウトテイク的に読んでもらえるといいかなと思います。
取材・執筆:柳樂光隆 | 写真提供:WOWOW
◎ 石若駿セプテット
――改めてセプテットのメンバーの話をしたいんです。どういうサウンドにしたくてあのメンバーの組み合わせにしたんですか?
メンバーの核となっているのがSMTK。松丸契(Sax)とマーティ・ホロベック(B)と細井徳太郎(G)とのバンドなんですけど、彼らはいわゆる現在のポップシーンのサポート的なことをそんなにしてない人たちだと思うんです。マーティはやってるかもしれないけど。それに対して、どういうアプローチで音楽を作るかっていうのが、予想できそうで、できない。自分のコントロール外に常にあるみたいな、「なんじゃこりゃ」っていうのを提供してくれる人たちだなと思うので、そこに可能性を見出しました。
それが核になって、そこに渡辺翔太(P)と西田修大(G)を加えました。僕は翔太くんのバンドのトリオでずっとジャズやってきた。彼も最近いろんなフィールドでポップスのサポートもやっていて、そこでも一際、存在感のある演奏をしてくれる。修大とはSONGBOOK(PROJEC""T)を一緒にやっています。彼は自由なことと日頃のサポートのバランスがすごくいいんじゃないかと思ってます。
山田丈造(Tp)も普段あんまり一緒に演奏はしてないですけど、すごいちっちゃい頃からジャズを始めた仲間っていうのと、ポップスのサポートをしつつも(新宿)PIT INNとかで板橋文夫さんのオーケストラや渋オケ(渋谷毅オーケストラ)で吹いてたりします。そういう「匂い」を持った人なんですよ。
今回、参加してくれたメンバーは僕らの界隈を好きで聴いてくれている人にとっても、予想がつかないサウンドなんじゃないかなと思います。
――ポップスの仕事をしてない人とポップスの仕事ガッツリやってる人のコンビネーションだと。
分かりやすく言ったらそうなんですけど、でもその中でも「匂い」の強い人たちなのかな。
――「匂い」ですか?
ユニークなサウンドを一際を持っている人みたいなイメージですね。
――つまり「手堅くやる」ための人選というよりは、それぞれ「個」が強い人を集めたってことですか?
そうですね。
◎ マーティ・ホロベック(Bass)
――改めてそのメンバー個々の話をしたいです。SMTKのメンバーから行きましょうか。まずはマーティ・ホロベック。
マーティはとにかくベースが上手い。あと彼はずっと自分の音楽を追求してる人で、年に1枚は必ずリリースしてる。「自分はこれを残したい」、「自分は今これを作るべきだ」って気持ちを身近で感じられる存在なんですよね。マーティはそういうアーティストとしての心構えを行動で示してくれる人。
演奏に関してもアイデアがどんどん出てくる。「そこでベースのフィル入れる?」みたいなところが一緒にやってて面白い。マーティと一緒に演奏してる人たちはみんなそれを感じてるから、彼が忙しくなっているんでしょうね。
ウッド(ベース)を弾いてもすごいテクニックだし、エレベ(エレキベース)に関してもいろんな歴史を知ってる。求めるサウンドのために楽器ごと替えたり、そういう音色へのこだわりも強い。ジャズベーシストって、1本(のベース)によるいろんな音で勝負する人も多いかもしれないですけど、それに加えてディティールまで提供してくれる。
ーーJNOJに関してはエレクトリックもアコースティックも両方できるところは大きいですよね
それでいて、マーティと演奏すると、ジャズの中での会話が常に起こるのが良いんです。ベーシストとして、そのバランスはなかなかない。やっぱベースはちゃんとしたルートを弾くことが大事な楽器。でも、それを良いバランスで超越してくるから一緒にやってて楽しいですね。
ーーリズムの位置をしっかり示すベースの役割だけじゃなくて。
はい。マーティと演奏してると、クリックとか使ってないからちょっとドラムも揺らぐんです。揺れたときに「ごめん」って思ってパッてマーティを見ると、彼は腕時計を見るふりするんですよ。これは「タイムをしっかりね」っていう意味。逆に「あれ?マーティ(のリズムが揺れてる)」って時には「よし、気をつけよう」みたいな合図を演奏中に送っています。
――それはバンドじゃなくて、2人だけの合図?
そう、2人だけ(笑)そういう仲間です。
◎ 細井徳太郎(Guitar)
――なんかすごいな(笑)では、次は細井徳太郎さん。
彼は同い年。彼は橋本真司さんの弟子だったんです。日本のジャズの歴史を一緒に肌で体感した大事な仲間・同志みたいな気持ちがずっとあります。あと徳ちゃんはPIT INNでずっとバイトしてて、そこからプロになった人。だから僕の憧れの日本のジャズの先輩方の演奏も毎日観てた。「あの時の菊地雅章さんのあれ知ってる?」とか、そういう日本のジャズに特化した会話を大学卒業したぐらいからずっと2人でしてました。だから、徳ちゃんと演奏しててもその(日本のジャズとの)繋がりを感じたりしますね。新しい音楽やっても、そういう日本のジャズにも繋がってる。彼の演奏からそういうニュアンスが聞こえたりするとすごく心が落ち着いたり。徳ちゃんも自分の演奏からそれを感じてくれてるのかなとも思うし。
自分たちが聴いてきたジャズがすごい似てるんですよ。例えば、ポール・モチアンのElectric Bebop Bandがすごい好きで、ポール・モチアンのヴィレッジヴァンガードのライブのシリーズの話で盛り上がったこともあったり。
だけど、こういうポップスのアーティスト、歌のある音楽は今まで一緒にやったことはなかったんですよ。だから「徳ちゃんどんな演奏するんだろう」っていう興味本位が最初というか。蓋開けてみたら、特に何もオーダーしないのに、すごいことを弾いて返してくるのでよかったですね。
――たしかに「昭和の日本のジャズ」から繋がってる人はポップスの世界にはいないですよね。
そうですね。
――そういうイレギュラーな人も入れたと
それでいて、エリオット・スミスが好きだったりとか、マイブラ(My Bloody Valentine)大好きだったりとか、レディヘ(Radiohead)好きだったり。日本のロックでもくるり好きだったりとか、そういう会話も同時にできる稀有なギタリストだなと思います。
◎ 松丸契(sax)
――次は松丸契さん
松丸契はパプアニューギニアで育って、バークリー音楽大学に行ったんですけど、コロナ禍で日本に拠点を移して活動しますってSNSに動画を投稿をしたんです。その編成がアルトサックスとベースとドラムのコードレスのオーネット・コールマンの影響を感じるバンド。難解なメロディーと(フリーインプロ)、そのグラデーションの中を行き来をする音楽だったんですけど、それを見たときに、面識はなかったけど「日本来たら一緒にやりませんか?」って、すぐDMしました。具体的に「10月の何日にピットインで、自分のライブがあるんでそこにゲストで来て吹いてくれませんか」って。それが最初のきっかけで、それが細井徳太郎とマーティとのトリオだったんです。そこに松丸が楽器持って、ゲストで来てくれて一緒にやったのがSMTKの始まりでもあります。
契はとにかく独自のやり方でジャズをできるようになった人なのかなと思ってます。バークリーに行っていろんな先生に習ったかもしれないけど、自分の好きなものに対して、とにかく探求して勉強して、それを自分のスタイルにちゃんと繋げて音楽やってる人だなと思います。一緒に演奏していると、ものすごくストロングなミュージシャンだなって思うんですよね。様子を伺って「どうしよう」って迷ってることがない。契と一緒に演奏してると、自分が精神的に鍛えられたような状態になります。契は遠い未来を見越して音楽を考えてるし、客観的に見てみようってことを音で教えてくれるような人です。
◎ 渡辺翔太(Piano)
――では、SMTK以外を。まずは渡辺翔太さんからいきましょうか。
翔太くんはバケモンだなって。一つのフレーズからアイデアがどんどん湧き出る。それでいてタイムが崩れないし、的確な8分音符16分音符で音が飛んでくる。ああいうピアニストはなかなかいないなと思いますね。
上京してきた高校生のときからずっと一緒に演奏してるので、一緒に頑張ってきた仲間であるし、翔太くんがいれば大丈夫っていう気持ちですね。
グラスパーのリハを見てるときの翔太くんは目がキラキラしてましたね。それこそ翔太くんと出会った頃に、よくグラスパーのカバーを一緒にやってたんですよ。エドワード・サイモン、スコット・コリー、ブライアン・ブレイドのトリオの曲とかも一緒にやってたり。グレッチェン・パーラトのアルバムの中の曲をインストでやったりとかしました。そう考えたら今回のセクステットのメンバーって自分の聴いてきたものが、あらゆるところに配置されたような感じですね。
◎ 山田丈造(Trumpet)
――渡辺翔太さんがコンテンポラリージャズ担当みたいな感じなのはよくわかります。では、次は山田丈造さん。
丈造は小学生からずっと一緒です。馬場智章とか寺久保エレナとか二階堂貴文と同期で一緒にビッグバンドでジャズを始めた仲間です。だからもう20年以上一緒にやってることになるのかな。最近では星野源さんのツアーで一緒でした。
丈造はリー・モーガンが大好きなんですよ。リー・モーガンのアルバムは丈造から小学校、中学校のときに教えてもらって、一緒に聴いてて。そういうジャズの原体験みたいなものを一緒に感じた仲間ですね。それこそ日野皓正さんが、僕ら札幌のビッグバンドにワークショップに来たとき、丈造もいたし、日野さんの隣でも何回も吹いてるし、最近では日野さんのライブで日野さんが体調悪くてできなかったときに丈造が来て、代打で吹くことも増えてる。だから、徳ちゃんと似たキャラクターではあるかなと思ってます。丈造は日本のジャズの歴史を体感してきたし、それを勉強して体現してきた人だなと思いますね。
◎ 西田修大(Guitar)
――では、最後、西田修大さんはどんなミュージシャンですか?
修大は120%の男だなと思います。何をやるにも、とにかく追い込んで、完璧な状態を作ってくれる。彼と出会ったのは、ポップス・フィールドでの対バンだったとは思うんですけど、彼はジャズをやりたいっていう気持ちもあった。ロックのこともすごく詳しくて、興味を持った音楽に対して、勉強して、それがフィードバックされるのがすごいなっていつも思うんですよね。修大のようなバックグラウンドが違うミュージシャンがいると、そこでさらにまた違った景色が見えると思うんですね。
今回、アイナ・ジ・エンドや中村佳穂のバンドをずっと修大がやってた歴史もある。だから、僕らのサウンドを客観的に見てくれてて「もっとこうしたらいい」とか言ってくれて、すごく助けられました。修大がいつも「駿、お前は絶対1人ぼっちにはさせない」って言ってくれるんですよ。ちょっとしたときに。なんかそういう仲間です。「こっちも修大を絶対1人ぼっちにさせない」と思うし。
――友情だ。ところで、編成なんですけど、なんでギタリストを二人にしたんですか?
僕好きなんです、ギターが。ロックなサウンドとジャズなサウンドどっちも欲しかったんですよね。だから徳ちゃんはSG弾いたり、セミアコみたいなの弾いて、修大はジャズマスターで、ストラトでギャーンっていくみたいな。すごく贅沢だなと思います。ギタリストが2人いて、ギターもエフェクターも違うし、キャラも全然違うから、そこでも音楽の幅や形が広くなるんです。 密度がその瞬間瞬間で変わるし、空間が広がったりもする。二人いるといろんな形になれるなと思います。
――リハーサルの時に西田さんのエフェクターにグラスパーのバンドのメンバーが食いついてましたね。彼らから見ても西田さんのセッティングは特殊なんでしょうね。
ベースのバーニス・トラヴィスがずっと見てましたね。なんじゃこりゃって言ってましたよ。
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