「母系集団で生活」「狩りは連携プレーで」“海の王者”シャチは引くぐらいに賢かった

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ルーナの「ルーピングキック」。水の上に吊るしたボールを尾びれで蹴る大技。ルーナは小さい頃に“自主練”することもあったという(撮影・鴨川シーワールド『シャチまるごとBOOK』/辰巳出版より)
ルーナの「ルーピングキック」。水の上に吊るしたボールを尾びれで蹴る大技。ルーナは小さい頃に“自主練”することもあったという(撮影・鴨川シーワールド『シャチまるごとBOOK』/辰巳出版より)

パフォーマンスは“ほぼ即興”

シャチといえば、大きな体から繰り出すダイナミックで美しいパフォーマンスが絶大な人気を誇っている。水上に吊るしたボールを尾びれで蹴る「ルーピングキック」、泳ぎながら観客に大しぶきをかける「スイミングバースト」、トレーナーとシャチとの「コンビネーションジャンプ」……、その数は何と80種近くにも及ぶという。

しかしとにかく賢いシャチたち。トレーナーたちの苦労も並ではないようだ。なぜなら同じことばかり求めていると、シャチは“飽きる”からだという。

「パフォーマンスで種目の順番がマンネリ化していると、シャチは予測してくるようになります。たとえば『次のジャンプはこれでしょ』という感じで、サインを出さなくてもやってみせたり。また私たちの飛び込む方向も予測して、シャチのほうが先にそちらに移動したりすることもある。

でもそういった予測は“飽き”につながりますから、私たちはシャチたちより先の思考を行かなければならない。『あ、予測して右に移動しようとしているな』と感じたら、わざと反対方向に飛び込んだりしています。そうやって常にシャチたちに刺激を与えている。だから実は、パフォーマンスはトレーナーが事前に決めているのではなく、シャチたちの状況を見ながらトレーナーのほうが“ほぼ即興”で動いているんです」

一方で、密かに自主練習? を行うという熱心な一面もあるよう。

「まだルーナが小さい頃の話です。閉館後にプールをのぞいたら、ルーナが自ら“ルーピングキック”の練習をしていたんです。閉館後はボールを回収しているのですが、本番と同じ位置をめがけてジャンプしていて。どうやらコース確認をしていたようです。“ランディング”といって、プールの縁に乗り上がる動作も、トレーニングでもないのにみんなで何度も何度もやっているときもありました。

まあ実は自主練習というより、マイブームみたいなものだと思います。だからときどき、本番でもサインを出していないマイブームの種目を行って、それにつられて他のシャチもやり始めて収拾がつかなくなったりします。もちろん困るときもありますが、そういうマイペースさを見ると、やっぱりシャチって癖が強くて面白いなと思う。高い人気があるのも納得です」

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