スーツ不況で明暗。快活クラブ好調なAOKI、変われなかった王者・青山
“快活CLUB”がAOKIを変えた
AOKIホールディングスのエンターテイメント事業は、同社の完全子会社である快活フロンティアが展開している。カラオケボックス「コート・ダジュール」や複合カフェの「快活CLUB」、フィットネスジム「快活CLUB FiT24」などを運営している。 AOKIホールディングスが快活フロンティアを完全子会社化したのは、2008年4月のことだ。当時のAOKI(2008年3月期)は、ファッション事業が業績をけん引し、売上高・営業利益・経常利益・当期純利益のすべてで過去最高を更新していた。 一方で、決算説明資料にはすでに“変化の兆し”が記されている。 事業環境として「消費マインドの低下」「職場での服装のカジュアル化」といった懸念を挙げ、スーツ需要の伸び鈍化を見据えていた様子がうかがえる。 その中で注目されるのが、エンターテインメント事業に対する認識だ。資料では、 「経済先行き不透明感により消費マインドが低下し、カラオケ・複合カフェ等身近な余暇市場の増大」と分析しており、この領域にビジネスチャンスを見込んでいたことが読み取れる。こうした記述を踏まえると、AOKIは業績が好調なうちに、スーツ依存からの脱却を進め、ファッションに続く“第2・第3の柱”としてエンターテインメント事業を育成する狙いがあったとみられる。 快活フロンティアの出店戦略は、AOKIホールディングスと同様に郊外立地が中心だ。初期の店舗は、紳士服量販店からの業態転換としてスタートしたケースも多かった。 しかしAOKIは、エンターテインメント事業をグループの中核事業のひとつに据え、積極的な新規出店とM&A、そして事業コンセプトの明確化とブランドイメージの確立を進めた。その結果、快活フロンティアは急成長を遂げ、今では売上高725億円、営業利益59億円超と、グループ内でも存在感の大きい事業に育っている。
変われなかった“王者”
一方、青山商事はこの間どのような戦略を取っていたのだろうか。結論から言えば、同社はスーツ事業を中心とした既存モデルへの依存を続けていた。
三浦毅司[日本知財総合研究所代表取締役]