スーツ不況で明暗。快活クラブ好調なAOKI、変われなかった王者・青山
量産で変えた、スーツの常識
当時の紳士服は、街中のテーラーか百貨店での販売が中心で、価格も高価、そのため一家族当たりの持つ紳士服の着数も多くなかった。販売業者は少ない販売チャンスに高いマージンで対応するしかなかったのだ。青山商事が目指したのは、安かろう悪かろうではなく大量生産によるコスト削減で、良質な商品をリーズナブルな価格で提供することだった。 このビジネスが大当たりした。もともと大多数のサラリーマンにとって紳士服は仕事着でしかなく、ビジネスマナーで着用はするがそれほどお金はかけたくない。一方で、毎日着るものなので着替え用に複数持ちたいという要望に一致した。青山商事は売上高、利益ともに急伸、1987年には大阪証券取引所第二部への上場を、そして1990年には東京証券取引所第二部への上場を果たしている。 1980年代後半、同様のコンセプトから多くの紳士服量販店が生まれた。AOKIホールディングスもその一つである。AOKIホールディングスの大本である洋品店「洋服の青木」は1958年に長野県で創業した。その後、現在のAOKIホールディングスの母体となる青木ファッション販売が1976年に設立され、当時からファッションにこだわりのある紳士服の提供に力を入れていた。 当時、多くの紳士服量販店は同様に売り上げを伸ばし、AOKIホールディングス(当時はアオキインターナショナル)は1987年には日本証券業協会東京地区協会に店頭売買銘柄として登録、公開され、1989年には東京証券取引所第二部(当時)への上場を果たした。
事業多角化で明暗
しかし、紳士服量販店の勢いは長く続かなかった。 1980年代には急成長を遂げた業界も、2000年代に入るとその成長に限りが見えてくる。IT企業を中心にカジュアルな服装が浸透し、一般企業でもスーツ着用が必須ではなくなっていった。さらに決定打となったのが、2020年からの新型コロナウィルスの感染拡大だ。在宅での勤務が増え、紳士服の需要が大幅に減少した。 この局面で、青山商事とAOKIの戦略の違いが鮮明になっていく。 青山商事の利益は引き続き紳士服を中心とするビジネスウェアが中心だ。11月18日に発表された、2026年3月期第2四半期(中間期)決算の中の通期予想においても、ビジネスウェアの営業利益貢献は全体の65%を占めている。一方で、ビジネスウェアの2026年度予想における利益成長率は対前年同期比8.7%だ。 AOKIの場合、営業利益は紳士服中心のファッションと、エンターテイメントの2本柱だ。11月20日に発表された2026年3月期第2四半期(中間期)決算の中の通期予想において、ファッションの営業利益貢献は54%だが、エンターテイメントも39%と大きなプロフィットセンターに育っている。営業利益の成長率でみても、ファッションが6%にとどまるのに対し、エンターテイメントは12%と高い。