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“中国の禁輸措置は日本にとって悪い話ではない”の論理 韓国とオーストラリアの経験から #エキスパートトピ

六辻彰二国際政治学者
【資料】衆議院予算委員会で答弁する高市早苗首相(2025.11.10)写真:つのだよしお/アフロ

高市早苗首相の台湾有事をめぐる発言をきっかけに、中国は訪日観光客の渡航自粛、日本産海産物の輸入禁止再開などを立て続けに導入している。一連の措置で日本の受けた打撃は小さくない。

これに関してシンガポール南洋理工大学のダイラン・ロウ准教授は香港メディアに、これまで中国は韓国などとの間でも政治対立が表面化した際に経済圧力を加え、各国は打撃を受けたと述べたうえで「中国のこうした動きは各国に経済の多角化を再考させるもので、それ自体は悪いものではない」と指摘した。

ロウ氏の指摘を韓国とオーストラリアの経験からみていこう。

ココがポイント

(前略)中国人団体客をメインとしていた地方のホテルでは相次ぐキャンセルに先行きを懸念している。
出典:産経新聞 2025/11/23(日)

パフォーマンスの回復が緩慢になりやすい点にも注意が必要です。
出典:NOMURA ウェルスタイル 2025/11/18(火)

中国政府のこの日の発表により、韓国への団体旅行は6年5カ月ぶりに自由化された。
出典:聯合ニュース 2023/8/10(木)

2022年、ベトナムはオーストラリア綿花の最大の輸入国となり、市場シェアは38.8%でした。
出典:vietnam.vn 2023/8/10(木)

エキスパートの補足・見解

禁輸は中国の外交手段になっているが、複雑なサプライチェーンに基づく製品の規制は中国にもリスクが大きいため、どの場合でも自国への影響が小さく、なおかつ相手にダメージの出やすい分野で狙い撃ちしている。

韓国の場合、2017年に米軍の弾道弾迎撃システムTHAAD(高高度防衛配備ミサイル)の配備をきっかけに、中国は韓国への団体観光や韓流ドラマなどの国内放送を禁じた。

その後、韓国の観光業界は疎遠だった東南アジアなどからの観光客誘致をテコ入れし、同国のコンテンツ産業はNetfrixなどにシフトしてむしろグローバルな成功を収めた。

一方、2020年にオーストラリアが新型コロナ感染拡大に関する独立した調査を主張したことで、中国は同国産の綿花、ワインなどの輸入禁止に踏み切った。その後、オーストラリアの綿花産業は取引相手を多角化し、現在の最大の輸出先はベトナムだ。

リスク分散の重要性はトランプ関税で改めて浮き彫りになった教訓だが、同じことは中国にもいえる。

この禁輸を対中デリスキングの好機に変えるなら、民間任せではなく政府の責任ある支援が必要だ。台湾有事にコミットするというなら、その時に想定される禁輸はこんなものではないのだから。

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国際政治学者

ベスト エキスパート受賞

2024

博士(国際関係)。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学などで教鞭をとる。アフリカをメインフィールドに、国際情勢を幅広く調査・研究中。最新刊に『終わりなき戦争紛争の100年史』(さくら舎)。その他、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『世界の独裁者』(幻冬社)、『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『日本の「水」が危ない』(ベストセラーズ)など。

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