茂木健一郎「人生はサイコロを振っているのと同じ」「あまり思い込まないで」悪いことが立て続けに起こり自信喪失…悩む相談者に送ったアドバイスとは?
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに、茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。 6月28日(土)の配信では「自信の取り戻し方」に関する質問に答えました。
<リスナーからの質問>
会社をリストラされた後、やっとの思いで就職した会社が5月に倒産してしまいました。そのため、自分に自信が持てなくなってしまいました……。どうすれば自分に自信が持てるようになりますか?
<茂木の回答>
本当につらいですね。やっとの思いでせっかく就職した会社が倒産したのですから、なんだか嫌になっちゃう気持ちはよくわかります。大変ですよね。 脳科学者の立場から参考になるかもしれないことを申し上げると、人間の脳には感情を司る扁桃体という部分があります。ここは、ある似たような出来事が続けて起こると、それがずっと続くという予測をしてしまうんですよ。 例えば、リストラされる。その後に就職した会社が倒産する……と悪いことが立て続けに起こると「私の人生って、これからずっとこうなんだ」と思ってしまうところがあるんです。これは感情の働きで、脳がそう考えてしまうわけです。 だけど、ちょっと考えてください。会社の都合でリストラされた、会社が倒産しちゃった。これ、あなた自身のせいではないですよね? ご自身以外のところに原因がある出来事ですよね。ということは、ある意味でサイコロを振っているのと同じなわけです。 サイコロを振っていて「6」が2回出たとすると、次もなんとなく「6」が出るような気がするのが人間というものなんですよね。だけどサイコロの確率は6分の1で、そうそう次も「6」が出ることはありません。本当は偶然、たまたま2度そういうことが続いただけなのに、そういう運命が自分の人生にはあるとか、そういう傾向があると思い込んじゃうのが、人間の脳の感情の回路です。 逆もそうです。「いやぁ、俺、絶好調なんだよね」と言っている人って、時々いるじゃないですか。「何をやってもうまくいく」と思っていても、実際にはただある出来事が偶然立て続いただけで、半年後にはダメになっちゃっている……ということもあるでしょう? つまり人間は、とにかく運が悪いと思っちゃうときも、運がいいと思っちゃうときも、必要以上にその傾向が続くと思いがちなんです。 でも、実際には人生って、本当にいろいろなことが起こるんですよね。またお仕事を探されると思うんですけれども、次も同じようなことが起こったら嫌じゃないですか。その場合は、少し離れた場所に行ってみるのがおすすめです。引っ越しするという意味ではなく、業種や人間関係が、今までとは違うところに行ってみるのも1つの手ですよ。 今までとは違うところに行くと、脳が刺激を受けていろいろな新しいことを学ぶのはもちろんですが、確率的に似たようなことが起こる確率が下がるんですよ。例えば今後、同じ業種に就いたとします。その仕事が不況の業種かもしれませんよね。そうすると、どの会社に行ったとしても、同じ業種に行ったのなら似たようなことが起こる確率は上がります。業種を変えてみると、「あれ、全然雰囲気が違うな」と気づかれるかもしれません。 感情、喜怒哀楽は素晴らしいものなんですよ。悲しいな、嬉しいなと思うのは素晴らしいことなんですけれど、それはあくまでも主観的な思い込みだということを忘れないほうがいいと思うんです。例えば就職活動をされている方でも、内定がもらえないことが続いてしまうと、自己否定されたように感じてしまうという話をよく聞きます。僕は科学者として、「次に合格する可能性もあるんじゃないですか?」と言いたいです。 人生はサイコロを振っているのと同じ。今まで出た目と次の目が同じであるのは、むしろ珍しいことです。だから、自分らしさをちゃんと持って、ずっと大事にしていることは続けていただいて、そのうえで自分を見つめ直す時間を作っていただきたいです。 「同じ業界に残りたいのかな」とか「今までの仕事は楽しめていたのかな」とか、他の仕事をやってみたい気持ちはあるのかどうかなど、いろいろとちょっと違う視点から世界を見ていただくと、違った確率で物事が起こる場所を見つけることができるんじゃないかなと思います。 脳科学者としてこんなことを言っていますが、僕も昔そういうことがありましたよ。なんだか悪い出来事がたまたま重なって、「あぁ、もう人生ダメだな」と思ったことがありました。でも振り返ると、そんなことないんですよね。次に起こるのは全然関係ないことだったり、いいことだったりするんですよ。だから本当に確率なんだなと、自分の人生を通しても思うので、「次はいい目が出るかもしれない」と思ってサイコロを振りましょう。 運がいい、悪いと思い込んでしまう感情の働きはわかりますが、あまり思い込まないで、「人生何が起こるかわからない」と思って、明日を楽しみに待ちましょう。応援しています。新しいお仕事に就かれたら、またこの番組にメッセージをいただけたら嬉しいなと思います。 (「茂木健一郎のポジティブ脳教室」2025年6月28日(土)配信より)