取り調べで人格否定の発言は違法 県に慰謝料などの支払いを命じる
窃盗の疑いで岡山県警の任意の取り調べを受け、その後不起訴処分となった岡山市内の男性が違法な取り調べを受けたなどとして、約2400万円の損害賠償を求めた裁判の控訴審判決が28日、広島高裁岡山支部であった。
菱田泰信裁判長は、取り調べでの警察官の発言の一部について「許容されるものではおよそない」として、男性の訴えを棄却した一審判決を変更し、県に約30万円の支払いを命じた。
関係者によると男性は2019年、岡山市内のスーパーのセルフレジにあった現金を誤って持ち帰ったとして窃盗容疑で県警の任意の捜査を受けたが否認。その後不起訴処分となった。男性は警察の捜査などが違法だったとして損害賠償を求める訴えを岡山地裁に起こしたが、今年3月に棄却され、控訴していた。
「人間としておかしい」
判決によると、県警の取り調べで、警察官が男性に「人間としておかしい」「文章にしたらむちゃくちゃなことになっとる……痴呆(ちほう)症かっていうぐらい」などと発言。菱田裁判長は「控訴人(男性)の人格を否定する発言をする必要は全くなく、許容されるものではおよそない。このような発言をして取調べを行ったことは、社会通念上相当と認められる態様を逸脱したと認められる」とした。
また、指印ではなく印鑑での押印で対応したいという男性に対し、警察官が「駄目なんですよ。被疑者の取調べの場合は。指印じゃないといかん」などと誤信させた点についても「誤った説明により、指印を拒絶できないと誤信させて供述調書などに指印させており、このことは違法の評価を受ける」とした。
男性の代理人弁護士を務めた安原照美弁護士は「違法捜査が認められてよかった。たとえ容疑を否認していても、人として尊重し、人権を守って対応してほしい」と話した。